大学芋
2026-06-28 00:22:26
4943文字
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その願いは憶えなくても構わない

ぐだぐだFGO 藤堂平助短篇集2の五話目に入る予定
七夕の話
 登場人物 藤堂平助 エレナ・ブラヴァツキー 斎藤一 沖田総司 山南敬助 雑賀孫一 天草四郎 ナーサリー・ライム

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本編↓
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その願いは憶えなくても構わない


 七夕、それは一年に一回、笹の葉に願いを込めた短冊を括りつけ織姫と彦星に願う行事である。
 と言っても、サンタクロースが実際に来るというよりかサーヴァントが成ってプレゼントを配送するイベントではなく、ささやかな行事に近い。
 マスターが日本人という事と、カルデアでは日常風景が変わる事がない、その為、曜日や日時の感覚がいまいち掴めない為、雰囲気だけでもという意味でやる事がある。
 なにせ用意するものが竹とそれを安定させて置ける道具、紙と糸と筆記用具だけでいいのだ、この際、竹はレプリカでもいい。経費や材料が安く、同時にカルデアのマスターやスタッフとサーヴァントにとって精神安定になるなら一か月間ぐらいやるべきだろうと、邪魔にならない所に短冊と筆記用具と竹が安置されている。

 それを見た藤堂平助は、現代は江戸時代とは違うのだなと不思議な感覚で見ていた。
 江戸時代での七夕は秋であり、七夕の前日は寺小屋の子供達が硯や筆などの習字道具を井戸で洗い、七夕当日の午前に井戸の大掃除が一斉に江戸中で始まってゴミなどを取り除いたのだ、それが終わった午後に七夕が始まり、習字の上達を願うというものだった。
 昔は機織が上手な織姫にあやかり裁縫の上達を短冊に歌や文字で書く事が多かったらしい。
 今の現代では水道がある為、井戸の掃除をしなくなったので、一日中七夕をのんびりとやれるというわけだ。時代の進化は著しいものである。

 ふっと、それで本当に紙に書くだけで織姫と彦星に届くものなのかと。
 同時に紙で書けない人は、楽しめているのだろうかと?
 一つだけ表現する方法がある。資金がかかるがどうにでもなるし、個人だけでやるなら別に問題ないだろう。
 早速相談する為に、藤堂は足早にあるサーヴァントに会いに行くのであった。


 ~そして三日後~


「今回の七夕ってすっごい光ってるんですねー」
「いやこれ本当に七夕なの?」

 適当に歩いていた沖田と斎藤はやけに輝かしい竹を見かける。
 遠くから見るとイルミネーションか何か始まったかとおもったが、よく見ると笹の葉に点滅する親指ぐらいの長さの丸いキーホルダーがひっかけてある。そのキーホルダーが一つ一つ別に色とりどり光が点滅していたのであった。

「あら、あなた達も興味あるのかしら!」

 近くでキーホルダーをかける作業をしていたエレナ・ブラヴァツキーが声をかけてきた。

「まぁ、それなりに? 一体なにやってんで?」
「これはね、モールス信号で織姫と彦星に願いを届けようって言う新たな七夕でね、今までの七夕って筆跡で誰か書いたか一部の人は分かっちゃってたでしょ。
 それで七夕に参加しずらいって言う人も一定数いたから、いっその事キーホルダー型のモールス信号でやったら分かりずらいんじゃないかっていう話がでてね。じゃあいっそやっちゃいましょうって、スッゴイマハトマでしょ?」

 そうっすねー とヘラヘラする斎藤。
 近代になればなるほど行事の内容は変わるものだ。特にカルデアは奇天烈なものが数多く、だいぶ前のバレンタインは大浴場がチョコ聖杯のせいでチョコ風呂に変化したり、ハロウィンを招待したエリザベート・バートリーが奇襲され、チェイテ城に逆さピラミッドが乗せられ、それを解決した後の次のハロウィンで逆さピラミッドの上に姫路城が落ちてきてその次は、チェイテピラミッド姫路城を解体しようとしたらマスターを連れてカ星(カボチャ星)に飛んでいった事もあった為、まだマシなほうだろうと、斎藤は考えていた。

「因みに材料費がかかるから一回五百QPで、パソコンから繋げて文字を入力するのよ、どう? やってみる?」
「やりますやります! 斎藤さんもやりますよね!!」
「えー僕はべつにいいかなぁ」
「おや、沖田君、やるのかい?」

 そこに通りかかったのか山南敬助と雑賀孫一が興味を惹かれるようにこちらへとやってくる。雑賀に関してはもうすでにお金を渡してキーホルダーを貰ってキーボードに打ち込んでいた。

「えぇ! 面白そうなので! 山南さんもやります?」
「いいや僕はもう間に合ってるからね」
「そんなこと言って、七夕にちなんであの方と会いたいって書いたっていいんですよ~」
「そうそう、書いたって誰も責めやしませんって、今回は誰も分からないわけですし」
「二人共、僕をからかってたのしいかい!?」

 いやいやそんな事はと言いながら二人は面白がっている。山南は気恥ずかしさで早く話題を変えなくては頭を巡らせると雑賀がテトテトとこちらへと戻ってくる。

「終わった、これ出来るだけ高い所に飾ってほしい」
「あぁわかったよ、エレナさん踏み台はあるでしょうか?」
「あるにきまってるじゃない! Mr.ヤマナミ こっちよ!」

 嬉々として案内するエレナ、踏み台という名の梯子は今の現代に合わせているのか、年老いたサーヴァントでも踏みやすいように踏板が広く滑り止めまでついていて楽々と山南は登っていく。一番高くはないが、キーホルダーが見やすい場所に引っ掛けた様子に雑賀は満足した。

「あんなふうに飾られるんですねぇ」
「普通に何個かぶら下がったら折れるでしょ」
「折れませんよ、この竹は人工ですので」

 二人が後ろを振り向けばナーサリー・ライム、ジャック・ザ・リッパーやジャンダルクオルタ・サンタ・リリィを連れた赤い外套に黒の神父服を着た天草四郎がそこにいた。
 
「いけませんよ、折れるだなんてそんな不幸な事を言ってしまっては、せっかくのロマンティックな催し物が台無しになってしまうではないですか」
「えぇえぇ、いけない、いけないわ! せっかく願いを詠もうとした織姫や彦星がかなしんでしまうわ!」
「へいへい、わるうございました」

 こういう風に詰め寄られれば、流石に分が悪い。何処がいけないのかさっぱり分からなかったがとりあえず謝っておくに限るとすかさず斎藤は参ったというように両手を挙げた。
 子供達は気にしてないのか、それとも今のイベントを楽しんでいるのかそれぞれひし形だったりハートだったりのキーホルダーを選んで、パソコンで願いを入力して光らせている。沖田もいつの間にか加わり一番上にかけたいのか跳躍してキーホルダーをかけていたが、着地した時点で吐血し、近くにいたバーサーカーのナイチンゲールに運ばれて行った。あれを止める術は山南も斎藤もないのである。

「すごい勢いでつれさっていちゃった」
「ベッドを放り投げて運ばれるよりはましなんじゃないかなぁ」
「はーいやだいやだ、カルデアで大きな怪我だけは負いたくないっすね」

 後ろを振り返れば、クリスマスツリーよりも、煌びやかで、チカチカと点滅して光らせている。普通であれば視界がうるさいほどであるが、キーホルダーの光が柔らかいせいか、あたたかな光に包まれていた。

「つい見とれちゃうわよね。わかるわかる。私もうっかり見ほれちゃったもの」

 エレナが作業から戻ってきたのか、お盆に小さな紙コップが入った紅茶を山南達に配る。シトラスの果実がふんだんに使われ、疲れが取れるようだった。

「そういえば知ってるかしら? 地球から光が届いたとして織姫星に届く日は約二十五年で、彦星は十六年になるって」
「え、じゃあ私の決意は早く届いても十六年で、彦星から返信されたとしても三十二年かかるってこと!?」
 
 雑賀は多大なショックを受ける。七夕という行事はあまりやってはいなかったけれど、少なくとも一年以内には成果が表れるだろうと信じていたからだ。

「あらあら、そんなわけないわ! どんな祈りや決意は光よりも先駆けて誰の心に届いて留まるものよ、それが芯が強ければ強く、篤ければ熱いほどに、目に留まるものですもの! マハトマに出会えた私がその証明ってわけ!」
「え、じゃあこのイベント何のためにやってるんです? 意味がないんじゃない?」
「斎藤君本当不器用だね……

 困った表情をする山南に、斎藤はあんたほどじゃねぇよとツッコミたい気持ちを抑え込む。
 エレナは全くロマンがないわね。と少々怒った顔で答えた。

「言ったでしょう、七夕が参加しずらいって、参加したくても出来ない人の為にやってるのもあるのよ。
 サーヴァントの中でも文字という文明が無かった人や、習えなかった人達もここには沢山いるわ、今ではマイク一つあれば入力できるし、筆跡じゃなくて光の点滅だから誰も恥ずかしがらずに出来るってわけ!
 それにこのキーホルダーを考えた人物は、きっと三十二年かかっても構わない程に叶えたい願いがあったと思うのよね!
 それってとってもロマンチックでエレガントでマハトマだと思わない?」
「うん、私もそれはとても素敵だとおもう」

 雑賀は夏の向日葵のように、とても満足そうに頷いたのだった。
 
 
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 まさかこんな大規模になると藤堂は全くそれっぽっ地も思っていなかった、もしできなかったら、自身の部屋のマイルームで小さな竹を用意して飾り付けしようと思ってたぐらいである。

 相談先へ行ったら、あれやこれやと相談する先が多くなり、面白がった工業系サーヴァントが軒並み賛成しはじめ、何があってはならないとキャスタークラスのサーヴァントや、カルデアスタッフの元、これがきっかけで特異点になりはしないか、入念にチェックが入って今日やることになったのである。
 行動が速すぎやしないか、今ではどのサーヴァントが作ったキーホルダーがどれだけ電池を持つかと海賊系のサーヴァントが賭けをし始める始末である。

 提案した事もあってか、藤堂はそのイベントのサポートとして七夕を手伝っている。今日は非番になったからこそマイルームでゆっくりと休んでいた。

 昔は七夕をやったことがなく伊東甲子太郎と服部武雄と共にやった事を思い出す、あの頃願い事を書くことがなく、勤めを果たせます様にと書いたらとてつもなく伊東甲子太郎の顔を凍らせたのを思い出す。その後に課題としてそれ以外の自身の願いを探せるようにと課題が出されたり、服部に武士道とは志とはという授業が始まり、次の七夕に一枚ではなく十枚短冊を渡されて困惑した覚えがある。
 未だに十も願いを書けない事を考えると、藤堂自身にこうしたい、ああなりたい、という欲が少ないのだろうとも思える。
 まぁそもそも、藤堂自身が神や仏に願いを縋る為にあるのではなく、決意を宣言するものだという考え方だろうが

 水色と赤色の短冊を見るたびに、藤堂は憶うことがある。
 最初っから出会わなければ、あんな悲劇は避けられたのではないかと。
 自身が試衛館へ行かなければ、少なくとも多少の平穏があったのではないのかと

 そう考えるたび、有り得ないと断言してしまう
 どんなに過去をやり直そうとも、根本から断絶し整えなければどうにもできなかったのがあの幕末だ、藤堂平助一人だけでもどうにもならなかったものだったのだ。

 それにこのカルデアでは、シュミュレーションルームやレイシフトを使わなければ星空さえ見えない。
 所詮、星に願う事すら叶わない場所で、走り続ける事しか今はできない。

 それでも構わない。
 願う事は決意の表れ。
 むしろ星に願えないなら好都合。
 誰も覚えてなくてもいい、憶えといてほしいとも思わない。

 どうか 全ての生命が流転しますように全、生命が僕を含めて一度死んでしまえばいい

 そう願いを込めたのだった。

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