六花
2026-06-25 23:07:20
3256文字
Public アークナイツ:エンドフィールド
 

きもちひとりじめ

現パロ、ウル管♂。多分、続きます。性的な描写はありませんが、匂わせる描写があります。

起きたら、隣にいて欲しいのにな、と口を尖らせる管理人を上手くいなしつつ、ウルフガードは朝食の準備をする。
昨晩は、お互いにそういったムードの上での行為を行った、だから隣にいて欲しいのだろう、とはウルフガードだって思う。
ゆったりとした朝の時間を過ごしている。
「あれ?そういえば、キャトロ、今日は仕事は?」
「便利屋なんて、休みみたいなものだ」
「うん、ならもうちょっと恋人っぽい事したいよ?」
「例えばなんだ」
「デート、とか?映画観に行こうよ」
カリカリに焼いたベーコンと半熟の卵を乗せたトースト、オニオンスープ、さっとありあわせの野菜でつくったサラダ。それだけを用意し、管理人の方を向けば、パンツ一枚で、ウルフガードは呆れた。
しかも、管理人は変なところで節約をするので、苺模様のパンツなどどこで買ってきたのやら、とそれも呆れてしまう。
「目に毒だから、服を着てくれ」
「え~?もうちょっと、ムラムラしたりしないの?」
からかうような口調の管理人に、ウルフガードはため息を一つ。
「いいから服を着ろ。そうしないと朝食はなしだ」
「キャトロのケチ」
「小学生か」
渋々、といった様子で管理人は服を着ている。こっちの理性を試さないで欲しい。恋人同士で同棲していれば、色々とあるが、管理人と暮らしてみて分かったのは、恐ろしいほど生活能力が無い、という事だ。
家事は壊滅的で、仕事は恐ろしい程出来るのに、家事はほぼ出来ない。なので、便利屋家業をしているとハウスキーパーのような仕事を頼まれるウルフガードが、家事をほぼ行っている。それでも、管理人は申し訳ない、と感じているのか、ウルフガードの姿を見様見真似で、家事を行い始めた。
最初はゴミ出し、次に掃除……こんな事を言うと管理人が喜びそうなので言わないが、自分色に染めていく善さのようなものがある。
昨夜の行為だってそうだ、最初は慣れない管理人をリードしたのはウルフガードであり、このまだ誰も暴いた事のない身体を、未知の快楽に溺れさせたのは自負してしまう。
「いただきます。キャトロって料理上手だよね」
「今更だな」
ウルフガードはネットの記事に目を通しながら、ブラックコーヒーを飲む。以前に管理人が真似をして、苦すぎて僕には飲めないよ……と嘆いたコーヒーだ。
そのせいか、ウルフガードはココアも買ってきてある。
「ねぇ、キャトロ、本当にデートしないの?」
「してもいいが、俺は……そういうのには慣れてないからな。ロマンチックなムードにはならないと思うが?」
「別にいいよ、僕がロマンチックなムードにしてあげるから」
「その自信はどこからくるんだ」
「ごちそうさま。根拠のない自信も大事だよ」
自分で食べたものの、食器を洗う管理人にこれまた背伸びした発言だな、と苦笑いしてしまう。ロマンチックなムード、といえば、先日、管理人は自室に家庭用プラネタリウムを買ったというので、キャトロ、一緒に見ようよ、と誘われ、一緒に見た。確かに大きな宇宙ではないが、広がる宇宙はそれでも、十二分にロマンチックだった。
管理人はいたずらが成功した子どものように「そういう気持ちになった?」と聞くので、ウルフガードは「ならない」とばっさり切った。
ウルフガードだって、何も管理人が嫌いな訳ではない、嫌いだったら同棲などしない。だが、管理人はどうも身体を繋げる事イコール想いだと思っているふしがあり、どこで買ったのか分からないが、「YES/NO」枕なるものを買ってきて、ウルフガードを大いに呆れさせた。
勿論、ウルフガードはいつも、その枕を「NO」にしていたが、管理人はいつも「YES」であり、その事で大いに揉めた。そのうちにそんな枕はもうどこに行ったのか分からない。
「映画を観に行こうよ」
「ああ、それもいいが……
ウルフガードのスマホがけたたましく着信を知らせる。仕事の依頼らしく、「至急」の文字に、ウルフガードは「すまない、埋め合わせはする」とだけ言い、バイクのヘルメットとキーを持って、仕事に向かおうとすれば、「待って、キャトロが無事に戻れるようにおまじない」と、管理人は少しだけ背伸びをして、ウルフガードの頬にキスをした。
「絶対に埋め合わせしてね。いってらっしゃい、キャトロ」
「ああ、また」
おやすみは明日の君に会うために、おはようは今日も君が隣にいてくれる事の合図。
ウルフガードが仕事に向かってしまうと、管理人はパソコンの前に座る。管理人は主にリモートワークをしているので、ほぼ家にいる。ウルフガードがいないと、こんなにも部屋は広いんだ……と思ってしまう。
もう大人なのに、子どものようにぐずぐずとウルフガードを困らせてしまう事もある。でも、それはウルフガードに嫌われそうなのに……僕って重たいのかな……
リモート会議をし終えた管理人は、早速デザインの仕事を始める。
集中する為にヘッドホンをしている。
どれくらい、集中していただろうか、気がつけば昼食も忘れていた。時刻はもう夕刻を示していた。
ふっ、とヘッドホンを外される。そして目の前に差し出されるデリバリーの炒飯。
「ただいま。何の事もない仕事だった」
「おかえり。お腹空いてるから助かったよ」
「仕事に集中するとお前はそうなるからな」
デリバリーの炒飯の箱を開けると、ふわりとした卵やチャーシューとごま油のような香りがした。お腹が空いている管理人はそれをスイスイ食べていく。
「ここにご飯粒がついてるぞ」
ウルフガードは意識せずに管理人の頬についたご飯粒を取り、そのまま口に運んでしまう。管理人の事だ、どうせまたからかいの一つでも……とウルフガードが、管理人を見れば、真っ赤になっている。
「も~!どうして、そうキャトロは僕を好きにさせるのが上手いのかなぁ!」
「知らない。それはお前の勝手だろう……
「ずるい!そういうギャップずるい!」
「子どもみたいな事を言うな。まぁ……昨晩はたっぷり大人扱いしたんだからな」
「だから、そういうギャップが僕にも欲しいの!」
「俺にそんなにギャップはないだろう?」
「あるよ、大いにあるよ。いい?キャトロ?」
「良くない。俺も疲れてるんだから、後でお前の熱弁は聞く。今は……炒飯だ」
冷めてしまう前に食べてしまおう、そう思うと、管理人はぎゅっとウルフガードに抱きついてくる。
「もっと大人扱いしてもいいよ?」
「分かったから、離せ」
「キャトロの愛情は分かりづらいよ」
「男なんてそんなものだ」
「そうかなぁ。もっと好きとか言ってくれないと不安だよ?」
そういうところが子どもなんだ、と言いかけたウルフガードだが、やられっぱなしは性に合わない、ならば、やり返すまでだ。
管理人の耳元で囁くように「愛している」と告げれば、管理人は今度こそ真っ赤になって、「キャトロのばか!」と子どものように言い、部屋から出ていってしまう。自分の部屋だから、戻ってくるだろう、とウルフガードは思い、放っておくことにする。
すぐに管理人は「なんで追いかけてくれないの!」とウルフガードに抗議してきて、愛しい恋人はどうも難しい、ウルフガードは苦笑いしながら「お前は本当に面倒くさいな」と言いながら、頭を撫でてやる。
「ねぇ、キャトロ」
「なんだ?」
「あのね、僕も君が好きだよ」
「知ってる」
「なにそれ!やっぱりキャトロはずるいよ!こんなに僕を好きにさせて、後はもう放置なんだから!僕のやってる放置ゲームより放置されてるよ!」
「ああ、先月の課金額がえらい事になった、あれか……
家計も管理しているのはウルフガードである。
二人が言い争いにも似たじゃれあいをしていると——……一方的に管理人がウルフガードを攻め立てているのだが……こんな日常がいつまでも続くように、と、お互いにそれは思っている。
取り立てて何かがある日ではない、でも、だからこそ、そんな日常が愛おしいのだ。

了。