三毛田
2026-06-25 21:56:40
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99 【99/護るもの・護られるもの】

99日目
それは君の事

 護るもの。護りたいもの。護っていると思っていたもの。
 彼という存在。体はもちろんだが、心も気づけば護りたいという枠に入っていて。
 それでも。それなのに。
 俺の知らないところで、彼は消えた。消された。手の届かないところへ。
 だから、大地の権能を引き継ぎあてのない旅に出た。
 いつかまた会えると信じて。
 辛い、苦しい、もうやめたい。
 そんなネガティブな感情は何度だって浮かんできた。それでも、信じていたから。会いたかったから。
 いや。それらは建前に過ぎない。
 愛していたから。
 彼を、穹を。
 列車の他の乗客乗員たちには、抱いたことのない感情。
 触れたくて触れたくなくて。己だけを見て欲しいのに、その感情を抱いている姿を見られたくない我儘。
 それが愛情だと知るのに、気づくのに。独りの旅はもしかしたら好都合だったのだろう。
 彼に抱いているのは愛情ではあるが、そこには恋慕もあり、思慕もあり。
「ああ、そうか」
 きっと、これが恋愛感情。
 この感情をこのまま抱いていいのかわからなくなって、足を止めた。でも、進み続けなければ彼にたどり着けない。
「穹」
「久しぶりの丹恒だ」
 穹を引っ張り出し、樹庭に着いて。
 彼にしては珍しく、強めに抱きしめられた。抱きしめ返そうとして、今の姿だと力加減が難しい気がしたのでそっと背中に腕を回すだけにとどめる。
「丹恒。ちゅーしたい」
「ああ」
 当たり前のように彼の提案を受け入れてキスをしたけれど、これはもしかして、ファーストキスなのでは?
 と思ったら、急に心臓がうるさくなって。
「丹恒、どうしたんだ?」
「何でもない」
 離れようとしたけれど、腰をしっかりと抱きしめられてしまい叶わない。
「別れてから、ずっと会いたくて仕方なかった」
……俺もだ」
「丹恒が俺と同じこと考えてくれてて、嬉しい」
 そう言いながら、俺の胸に頬ずりしてくる。
 この姿になってから、身長差が出来たものだから、普段のように抱きしめ合ったとしても顔の位置が違うことに気づく。
 でも、胸を占めるのは彼への愛しさ。
「丹恒、痛い」
「すまない。肩の飾りが顔に当たったか」
「そんな感じ。というか、その姿格好いいな」
「そう、だろうか」
 自分では、そういうことはよくわからない。だが、彼が言うのであればそうなのだろう。
「丹恒」
「どうした」
「好きだ。大好き。もっとキスしたいし、ハグもしたい」
「俺も好きだ。好きなだけしていい」
「やった!」
 嬉しそうに笑うと、背伸びをしてキスをしてきた。