うずめび
2026-06-25 12:58:24
2478文字
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あの世で一緒に焼かれなかった話 かきたいとこだけ。

リチャぐだ♂・ジョンぐだ♂で一緒に煉獄で焼かれようね、と約束したけど最後までは一緒に行けなかった話。

兄上とぐだ、一緒にと焼かれたけど罪の大きさが違うので最後はぐだは一人で焼かれてしまう感じの話です。描きたいとこだけ。

この後みんなでぐだを助けにいったりなんだりがあるんだと思います。色々未定です。

「リチャード、俺はあなたと一緒には上に行けない。まだ罪が残っているから下に行くんだよ」

 一緒に焼かれると言ったはずだ、君の罪は俺の罪だとも。ならば共に落ちるのが正しいはずだと足を踏み出すのに先に進むことができない。リチャードが待ってくれと手を伸ばす合間にも立香は一人奈落へ向かって歩いてしまう。

「きっと上でジョンが待ってる。あなたから聞いた最良のマスターさんもいるのかな。だからリチャードは大丈夫だよ」
「そうじゃない、そうじゃないんだ立香。ジョンは君が過酷な旅路の果てに救われる事をずっと願っていた。俺も同じだ。こんなのは違う。一人で焼かれて落ち続ける?その先はどうなるんだ。だめだ立香、一人でいくな!」

 いつか落ちる先の地面だけを目指して途方もない時間、焼かれながら落ち続ける?魂は、自我はどうなる。落ちる果てで砕けるか、あるいは果てにたどり着く前に消え行くか。いずれにしろ安寧や救いからは程遠い。
 



「兄上?立香も一緒ではないのですか?共に焼かれるなら、共に上に来るとそればかり」
……足りないと言われた」
「兄上?」
「俺の罪は煉獄で焼かれたが、立香の罪は煉獄で焼くには足りないと。七つの世界を滅ぼした罪を贖うにはまだ刑罰がいると言われた」

 リチャードの言葉を聞いた途端にジョンの顔色が真っ青に変わる。

「立香は、立香はどうしているのですか。今何をして」
……一人で焼かれながら奈落へ。いつか地獄の底にたどり着くまで焼かれたまま落ち続けると」
「え、あ、嘘ですよね、あにさま。嘘だと言ってください。一人で焼かれて落ちつづける?そんなこと、人の魂はたえられないでしょう?」
「ジョン……
「いやです、あにさま。こんなのはいやだ。りつかは、りつかはしあわせにならないと。あんなにきずだらけになってせかいをすくったのに。だってこんなの、きっとなにものこらない」



 ただひたすらに身体を焼かれて落ちていく。煉獄でリチャードの腕に抱かれて焼かれていた頃とは比べ物にならないくらい痛くて苦しいのは、あの人が守っていてくれたからだと今さらながらに知る。
 器を焼き固めると言ったように、きっとリチャードは立香の精神や心が砕けないようにずっと守っていてくれたのだ。二人なら大丈夫だとやわく火の中で微笑んでくれた優しい人は今はもう隣にいない。ジョンとは会えただろうか。彼のいう最良のマスターさんもいたらいいけれど、最良のマスターさんが魔法使いや特殊な人だったら難しいかもしれない。いずれにしろリチャードとジョンが一人でなければそれでいい。

(―――ああ、熱いな)

 焼かれて再生して、その繰り返しが何度目かはもう数えていない。いつかにオベロンが作り出した奈落のようだとも、アーキタイプを見上げた宇宙のようだとも思う。あのときは落ちるのを掬い上げてくれた優しい人がいたけれど、今度こそ一人だ。気の遠くなる果てで地面に叩きつけられるまでの引き伸ばされた永遠。

(本当に心が透明になるのだろうな)

 いつからか思考の端で繰り返すようになったそれに対して、苦言を呈したのはゲーティアだったか。あまり恐怖を嚙み砕くな。───そのうち、本当に何も感じなくなる、と。
 たぶんそうなると確信に似た予感を感じた。人は堪えられないことからは自身を切り離す。永劫に近い落下と焼却の中でいつかはそれを繰り返すだけのものに成り果てるだろう。それが七つの世界を滅ぼした報いであるならもっともな気がした。殺めた人たちは何も考えられなくったのだから、自分もそうならなければ釣り合いが取れないから。

(あの二人が幸せでいてくれたらいいな)

 ぼんやりと考える間にも体は焼けて奈落へ落ちていく。それはまるで彗星のように。




 ずいぶんと久しぶりに何かを視界に納めた気がする。今までずっと焼かれる自分の姿と、焼かれて暗くなった視界の二つしかなかったから、鮮やかな色に戸惑った。赤と金色、緑と黒。何かとても美しく懐かしい色。

「立香、俺がわかるか」

 りつか、りつかとはなんだっただろうか。赤と金色の誰かは何かを呼ぶけどそれが何かよくわからない。隣にいる緑と黒の誰かがそれを見て悲しそうにする理由も。なにも。
 ただ、その姿がなんだか嫌で緑と黒の誰かに手を伸ばした。美しい輪郭をするりと撫でて、けれどももっと違う触れ方をしたような。賑やかに笑っているのは、やめろといっていたのは誰だったか。

「立香?」
「りつかとはなに?わからないとあなたはかなしい?」

 動かした事を忘れた声帯からでた声は酷くいびつで、発した本人すら聞き取れないだろうと思ったのに確かに緑と黒の誰かは聞き取ったらしい。

「立香はお前の名前だ、俺の大事な人の名前。お前が傍にいてくれたら悲しくなくなる。だから傍にいて欲しい」
「なにもわからなくとも?」
「傍にいてくれたらそれでいいんだ」



 助け出した立香は眠って過ごすことが多かった。まだ精神が不安定だから、というのが花の魔術師の見解で自然に落ち着くまでは致し方ないのだという。

―――あんなふうに焼かれてしまってはね。朽ちた花は甦らないが、花が残した種は芽吹くものだ。今の彼はその種のようなもの。君が彼を大事と思うならそっとしておくことだ。苛烈に炎で焼くべきではないよ、獅子心王。

 不思議な色合いの眼差しに頷いて、それからずっとリチャードは立香を見守っている。眠る時、傍にいると寝付きがよいのだと気付いてからは立香が眠るときは必ず傍にいた。

―――いつかはおぼえてない。けれどずっとだれかにだきしめられてたきがする。あたたかくてやさしかった。ふたりならだいじょうぶ、って。

 いつかに寝入りばなに立香がポツリと呟いた言葉をリチャードは思う。きっとそれは煉獄で焼かれていた頃の記憶だろう。立香の精神を守るため一緒に焼かれていたというのに、最後には一人で焼かれてしまって。