第41回お題「年齢差」

赤安は恋人同士で同棲中。
高校生に変装したれいくんを前に、ちょっと困っているあかいさんのお話。
※設定捏造あり

 降谷が高校生になった。
 正確にいえば、高校生に変装しているだけなのだが、彼の姿は高校生そのものだった。

 同棲を始めたマンションの一室。降谷は学ランに着替えながら、説明をはじめた。
 短期間ではあるものの、生徒として高校に潜入する任務に就くのだという。
「本当は今年入って来た新人が担当する予定だったんですが、インフルエンザにかかってしまったそうで……代役として僕に話が来たんですよ」
 手続きの都合で、今から生徒ではなく教師に変更するのも難しかったのだろう。
 本人には言えないが、代役に彼を選んだのは、様々な意味で正解だ。
「高校生か……子どもになりきるのは、君のように器用な人間ではないと難しいだろうな」
「ええ。潜入までは、しばらく練習をしようかと思っているんですよ。赤井、どうですか? 当日は変装用の顔マスクをかぶりますが、体型はこのままでいこうと思っているんです。用意してもらった学ランのサイズもちょうど良いみたいですし」
 目の前には、学ランに身を包んだ降谷が、少し恥ずかしそうに立っている。
 現実の“彼”が、二十九歳であることを忘れてしまいそうだ。
 ほんの少し前まで、グレーのスーツ姿で仕事の話をしていた人物とは思えない。
「よく似合っているよ」
「良かったです」
「いつから潜入する予定なのかな」
「二週間後です。しばらくは僕のことを高校二年生の子どもだと思って過ごしてくださいね。まずは普段の振る舞いから変えていかないと」
 彼は普段の生活から変えていくつもりらしい。
「では、俺もしばらくは君を高校生として扱おう」
「はい。お願いします」
「ひとつ大事な確認をしたいんだが……高校生の君も、俺の恋人ということでいいのかな」
 降谷は視線を逸らすように俯いた。
……はい。それはそのままで……良いですよ」
 降谷の頬は、微かに赤い。
 三十二歳の自分と、高校二年生の恋人。
 設定とはいえ、随分と年の差のある恋人だ。
 指先で、彼の着ている学ランの第二ボタンを撫でる。
 もし目の前にいる彼が高校を卒業するとしたら、この第二ボタンは自分のものになるのだろう。
「実に背徳的な気持ちになるよ」
 降谷は驚いたように目を丸くした。そして、堪えきれずに笑い出す。
 いつもよりも豊かな表情を浮かべて、降谷はこちらを上目遣いで見上げてきた。
 その仕草は、まるで年上をからかう高校生のようだ。
 もうすでに、彼の演技は始まっているのだろう。
「しばらくはダメですよ。今の僕は十七歳なので……成人するまであと一年待ってくださいね」
……今すぐ二十九歳の君に戻ってくれないか」
 赤井が正直に本音を告げると、降谷は再び笑い出した。