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蕨野おもち🍡
2026-06-21 21:32:37
1051文字
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夏に至る
※数年前の再掲
夏至の日のドラロナ。
ふとカレンダーを見ていて今日が夏至だということに気がついた。北半球で一年で一番昼が長い日らしい。
ドラルクと付き合いはじめてから、俺はちょっとだけ夏が嫌いになった。ただでさえあいつとは夜にしか会えないのに、日が長いせいでその僅かな時間さえ短くなるから。
時刻は午後6時半前。まだ日は高く、ソファベッドの横に並んでいる棺桶の蓋が開く気配はない。
「
………
」
棺桶の側に近づいて、蓋の上にそっと頭を乗せてみる。棺というだけあって、中からは呼吸音程度の微かな音はまったく聞こえて来ない。梅雨終わりの少しじめついた空気の中、ひんやりとした感触が額に当たるのが気持ちよくてしばらくそうしていると、中から「
…
ロナルドくん?」と窺うような声がした。
「
……
わるい。起こした?」
「いや、少し前から起きてたんだけどまだ日が高いだろう。出るに出れないでいたところだよ」
「
…
そっか」
「どうかした?」
どうかした、聞かれると。別にどうしたわけでも、何かあったわけでもないのだけど。
「
…………
今日、夏至じゃん」
「
…
うん?ああそうか、今日21日なのか」
「一年で一番昼が長い日なんだって。
……
夏、ってさ。お前が棺桶の外に出られる時間、短いじゃん
…
」
だからちょっとさみしいかも、なんて。
お前のせいで昔より夏が苦手になった、なんて。
顔が見えないからこそ言える本音だった。
「
…
そうか。考えたことなかった。私には今迄ずっとそれが普通だったからねえ」
「
…
そういうもんか」
「まあ確かに起きていられる時間が短いのは不便だけど
…
でもね、私はきみと出会ってから少しだけ夏が好きになったよ」
「
…
?」
だってさ、とドラルクは棺桶の中から、囁くように言う。
「そりゃ吸血鬼の天敵太陽が猛威を奮う時期ではあるけどさ。でも夏ってきみの生まれた季節じゃない。だから好きだよ」
「
…
ふ、なんだそれ。」
「ふふ、きみにまつわるものは何でも愛おしいってことさ」
「
…
そういうもん?」
「そういうもんだよ。それにさ、昼がさみしいなら今日みたいにおしゃべりしに来てよ。私も起きてるのに棺桶の中に一人は退屈だからさ」
「
……
うん。」
姿は見えなくても、声が聞こえるならこのさみしさも少しは紛れるのだろうか。
まだ日は高い。コイツがここから出てこれるのはあと1時間は先だろう。
今日の夜食はせっかくだからなんか夏っぽいものがいいと言うと、ドラルクは「大雑把なリクエストだな」とちょっと笑って「じゃあ冷やし中華でも作ろうか」と言ったのだった。
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