三毛田
2026-06-21 15:53:18
1065文字
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95 【95/偶然の中の必然】

95日目
君といるのは偶然で必然

「あ」
「ん」
 モゴモゴと口が動き、何かを飲み込む。彼の手元にあるのは、多分パムの新作おやつ。 珍しいと思うと同時に、ズルいって感情もわき上がってきて。
「丹恒。一口頂戴」
「ほら」
「ありがとう」
 おねだりすると、悩む素振りも見せず俺の口へ入れてくれる。
「また」
「そうだな」
 おねだりしてから数日。
 彼の手元にある皿にあるのは今日はおやつじゃなくてメインディッシュか前菜のサラダだか分からないけれど、丹恒の口はモゴモゴ動いて。それから、喉が上下した。
「穹。オマエも味見しろ。丹恒の味覚は、当てにならん」
「姫子さんよりは当てになるんだが」
「辛いのも苦いのも得意な人間じゃ、駄目じゃ。ほれ。早く座れ」
「う、うん」
 もうここまで来たら、偶然じゃない。必然だろう。
「いただきます」
 両手を合わせてから、パムが用意してくれた料理を少しずつ食べていく。
「これちょっと苦いから、俺とかなのには向いてない味かも。こっちは、俺は大丈夫。まだピリ辛の範囲。なのはどうかな~」
 サラダには新しい野菜が使われていて、それが苦みが強いやつ。こういうのって、茹でたり火を通すと苦みが消えるのかな?
「ピリ辛ドレッシングを控えめにすればいいだろう。俺は好きだ」
「丹恒は、羅浮にいたから辛いものが好きなの?」
「特に好きだというわけではないが、ある程度までならば耐えられる」
 口元を、紙ナプキンで丁寧に拭いながら。
「うーん……
「どうした」
 俺がその返答に納得がいってないということに気づいたようで、食後のお茶を飲みながら答えるよう促してくる。
「羅浮での生活、楽しくなかった?」
「楽しい、楽しくないで答えろと言うのであれば。答えは否だ」
「だろうなぁ」
 だって、なんとなくだけど雰囲気がそうだったもの。
「それでも学べることはあった。それだけだ」
「恨んだりはしてない?」
 苦いものと辛いものでちょっと渋滞している口の中を、さっぱり目のお茶でリセット。
「恨む。という感覚はいまいちわからない。だが」
「だが?」
「今は、あそこを離れてよかったと思っている。そうでなければ、こうしてお前と過ごすことは出来なかったからな」
「た、丹恒~!」
「こら」
 抱き着いたら怒られたけど、これが抱き着かずにいられるか!?
「俺も、丹恒に出会えてよかった!」
……そうか」
 テーブルから離れ、ソファーまで連れて行かれ。抱きしめられる。
 ので、俺も抱きしめ返す。
「丹恒、好き!」
「ああ。俺も好きだ」
 とキス。