風花莉亜
2026-06-21 09:28:25
3068文字
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青を背負う君へ。


第43回とどち版ワンドロワンライ参加作品。千早くん視点。授業のない日、部活が午前中で終わったその帰り道のこと(帰り道好きすぎだろってくらい多用してる)
いつも通り何でも大丈夫な方向け


「千早、コンビニまで競走しようぜ!」

ニカッと白い歯を見せて笑う、図体だけは無駄にデカイけど中身は小学生みたいな彼は、「誰が小学生だ」

「ちょっと、地の文にツッコミ入れないでもらえます?」
「聞き捨てならなかったからつい」
「つい、じゃない」

全く、やりたい放題だなこの男。
聞き捨てならなかったと言いつつ、既に話題を他へと転換してる藤堂くんは、アイス食いたいなんてほざいている。
確かに今日は暑いので冷たい物が欲しくなるのはわかるけど、それを求めているのにコンビニまで競走しようだなんて、どんな思考回路をしてるのか。
とことんまで暑くなってから食べた方が美味いとか、そういう事を言うつもりだったりするのだろうか?
凡そ同じ高校生だとは思えないくらいの無邪気さを発揮する藤堂くんに、俺は溜息を吐いた。
本当に、嫌になるくらい真っ直ぐで、そして眩しい。

最近の俺の目には、藤堂くんが光って見える。
言うならば、『キラキラして見える』というやつだ。
こんなのはフィクションの世界だけだと思っていたのに、太陽の光を浴びて輝く金色はとびきり眩しい。
目を細めてみたってそれは変わらず、一層の事背けてしまいたくなるけれど、背けるのは惜しい気もする。
相反する気持ちに辟易するが、それも込みで恋なのだと言う。
要くんが。
自称恋愛マスターが腕を組んで偉そうに語る姿は若干腹ただしいものがあったが、言っている事が間違っているようにも聞こえなくて、最後まで話を聞いたんだっけ。
童貞が何か言ってる、で片付けられなかったのが悔しかったけど。

「おーい、千早ァ?」

立ち止まって考え込んでいると、目の前に現れた俺を覗き込む顔。
正直言って、バカ近い。
流石に誰の目にも距離感が狂ってるように映るだろう。
しかしながら、藤堂くん相手にこの距離感で近付かれる事に嫌悪感はない。
ただ、その代わりと言ったら変な話だが、嫌悪感ではなく羞恥心はあった。
自覚してしまった事で、思い出したかのように頬へと熱が集中しだすのに気付き、咄嗟に目の前の顔を押しやる。

「近いですっ」
「ちょ、いてぇって待てコラ! グイグイ押すな!!」

首が変な方に曲がる、などと言っている気がするけど、そんな事は俺には関係がなかった。
一刻も早くこの顔を遠ざけたくて、更にグイグイと押す。
だって、赤く染っている顔を見られたくなかった。
今の俺の顔は間違いなく藤堂くんに惚れている、と言っているようなもので、告白する前にバレるなんて御免だ。
遠慮なく押しやるのを止めない俺に、藤堂くんは自ら距離を取る事を覚えたらしく、少しだけ後ろへと下がった。
首筋に手を当ててさする仕草をしつつ、むすっとした顔を向けてくるけど、目は合わせない。
合わせたら負けだ。

「ったく、首もげたらどうすンだ」
「そんな簡単にもげるようなヤワじゃないでしょ」
「そりゃそーだけどよ、もう少し加減ってものをだなァ」
「はいはい、すみませんでした」

投げやりな自覚はあったけど、まだ完全に熱の引かない顔を見られたくなくて、藤堂くんを置いていく形で早歩きを始める。
コンビニ行くんでしょ、と後ろを向かずに投げかければ、タタッ、と横に並んで勿論だと笑う。
だからその、屈んで顔を覗き込もうとする癖、女子相手にやったら勘違いされちゃいますよ?
女子じゃないけど俺だって勘違いしてしまいそうだし、無闇矢鱈にやらない方が良いと思いますけどね。
なんて事を言った所で、多分無意識の行動なので改善される事はないだろう。
口にするだけ無駄だ。
無自覚ほどタチの悪い物はないとは良く言ったもので、藤堂くんの行動のあれやそれは、全てと言っても過言では無い程に俺に何かしらの感情を植え付ける。
今回もそうだった。
現場を見た訳でもないのに、女子相手に顔を近付ける藤堂くんを想像して、勝手に嫌な気持ちなる。
あぁほら、その子困ってますよ、顔だってあんなに赤く染めて……
そんなに近いとちょっとした弾みでキス出来てしまうなんて、きっと気付かないまま相手からキスされて気付くのだろう。
例えば、こんな風に。
立ち止まる俺に合わせて歩みを止めた藤堂くんは、不思議そうに、そしてやっぱり俺の顔を覗き込んできた。
近付いてきた顔にそっと目を閉じて、ほんの少しだけ背伸びをする。
そうすればもう。
掠める程度に触れ、そして離れた。

……え」

驚きの声を静かに零した藤堂くんを、開いた瞳に映して唇に弧を描く。
こんなに容易くキスなんかされちゃってまぁ、だから言ったのに、勘違いされちゃいますよって。
あれ、言ってはなかったですっけ?
でもほら、これでわかったでしょう、顔が近過ぎたって。
アハハ。
ポカン、と開いた口がマヌケで可愛いですね、なんて。
全くもって本当に、

「無防備すぎです」

トンッ、と軽く藤堂くんの胸を押すと体幹の良いはずの身体がフラリ、と後ろへと下がる。
余程衝撃だったのだろう、未だに驚いた顔で俺の事を見ていた。
見開かれた瞳、開いたままの唇、マジマジと観察してみたけれど、驚き以外の感情が読み取れなくて首を傾げる。
そこには、あるはずの嫌悪感が見当たらなかったのだ。

「あの、藤堂くん」
「おまっ、こんな所でいきなり……っ」
「はい?」

声をかけると藤堂くんは弾かれたように数歩後ろへと下がり、顔を真っ赤に染めた。
え、なにその反応。
想像していなかった反応に、困惑する俺。
藤堂くんは口を手のひらで覆いながら、あーだのうーだの、何と言っていいのかわからないといった感じで視線をウロウロとさせている。
時折こちらを見ては何かを言いかけて、しかし言葉にならずに口を閉じる。
それを繰り返す様子は、普段の快活な姿からかけ離れていた。
まだ頬の赤みが引かない所を見ると、照れているのは間違いないのだが、何で照れてるんですかね、この人。
実に不思議だった。

「そんなに照れます?」
「あ、当たり前だろ」

当たり前なんだ。
俺にキスされただけでこんな風になってしまうなんて、ちょっとチョロすぎるんじゃないですか?
これが他の野球部の面々でも同じ反応になるのかと思ったら、ちょっとってかだいぶ妬けるんですけど。

「つーか、おめェこそどういうつもりでキスとかしてきたんだよ」

どういうつもりって、藤堂くんがどれだけ無防備かってわからせる、つもりで?
首をコテン、と傾けると一緒になって傾けてくるものだから、それが何だか可愛かった。
つい口元に手をやってクスクスと笑っていると、その手を取られて代わりに触れてきたのは、藤堂くんのソレだった。
先程俺がした掠めるようなものではなく、しっかりと確かな存在感を示すように触れて離れていく。
今度は俺がポカン、と口を開く番だった。

「俺は、おめェの事が好きだからキスしたんだけど」
「へ……?」

そっちはどうなんだ、と訴える目に、たまには素直になってみるのも良いんじゃないか、ともう一人の自分が囁く。
寧ろ今しかないだろう、と。
一度目を閉じ、深く息を吸って吐く。
吐ききったタイミングでそっと目を開き、こちらをジッと見つめる瞳を見つめ返す。

「藤堂くん、俺……

君のことが。

「好き、かもしれないです」



空は快晴。
突き抜けるような青を背負った藤堂くんは、今までで一番キラキラして見えた。



END


タイトルと中身がマッチしてないw