ヒノチャン
2026-06-20 22:44:05
9116文字
Public ヒノチャン創作
 

ヒノチャンカルデア(ぐだひの新選組)に召喚された道満

夢小説だ!逃げろ!
時系列としてはインド異聞帯をクリアしたくらいです。保管庫の数字は実際のものです。

「では早速、拙者がカルデア内を案内させていただこう」
「おお、じゃあ頼んだよ小次郎」
うむ、と静かに美しい剣士は頷いた。暗い青の髪がサラリと靡いて、自分を見上げる。
「まずは其方の自室となる部屋へ」
……ええ、よろしくお頼み申しまする」
にこりと笑えば、同じようににこりと笑顔が帰ってくる。
剣気、殺気何の圧さえない。サーヴァント佐々木小次郎。アサシンのクラスであるこの男、だがそこに背負うは物干し竿と喩えられし長剣。
目立つ。だが、気がつけばこちらにその存在すら忘れさせる。末恐ろしい。
「あ、そうだ。道満、いたずらしちゃダメだからねぇいい子にしてるんだよ~」
マスターの暢気な声。
「ンン、ご心配召されよマスター。拙僧は既にあなた様の忠実なるしもべにて
「道満が悪いことしてたら斬っていいからねっ、小次郎!」
「はははははは、信頼して差し上げてはどうか?主よ」
小次郎は道満の背を軽く叩いた。な?道満殿?と微笑む。

「信頼されておるのかおらぬのかあの方は不思議な人でございますねぇ」
廊下を歩きながら会話が始める。
「おや、道満殿は欺瞞の目を向けられていると感じておられるのか」
「ふふ、ンンンンいえ。どうでしょう、正直拙僧はあの方が何を考えてらっしゃるか全く読めませぬ」
だが、不気味だとは感じる。
キャスター・リンボの存在を知らぬわけがない。
我が地獄界曼荼羅にはまだ到達していないそうだが、剣豪七番勝負やインドの異聞帯は乗り越えたそうだし。
だが、それをあえて話題に出さない。普通ならば「リンボ」と呼んで良いものを、あれは最初から「道満、よく来たね!」と両手を広げて喜んで見せた。
まあそういう危篤なおなごもおろうが。
と、いうか─。
<すがた>がまるで違うではないか!!
道満は召喚されたときから、ポーカーフェイスだった。下総で見えたあの、少女はまるで別人に変わっていたのだ。揶揄的な表現でなく。物理的に。
燃えるような夕陽の髪、輝く稲穂を思わせる目。力強い眉。華奢な小娘の体。
それをこうしてカルデア式召喚で、かつての敵としての一面を隠し、対面しようものなら嗚呼、嗚呼!
それはなんと甘美でスリリングな巡り合い!
心躍るとはこのこと!

と、息をまいていた道満であったが。
蓋を開けてみればなにやら<人ではないなにか>が、カルデアのマスターとして身を置いている。あれのことについて、初見である道満は戸惑うしかなかった。が、別人だと指摘は出来ない。
リンボの記憶はない、ということにしているのだから。
「何を考えているかわからない、とな。まぁそうよなあ、あれは普通に見ても変人奇人の部類でござる。だが、仲間思いで情に厚い。良いお人だ」
小次郎は宙に目線をあげながら話す。
「主はまぁ、よく喋るおなごと思っておるほうが良かろうて。それ以外は別段………ま、普通でござる。あの子は思慮深い時もあるが、直感や感情で動くタチでもある。予測不可能、考えるだけ無駄だ。むしろ、予測不可能であるからこそ何をしても納得するいや、納得するようになったと言うべきか。ふ、拙者も大概甘やかしておるのだが、過大評価はせん。だが良いマスターであるのは間違いないでござる」
「ンン。ただ自身のマスターの指示に従えばいいサーヴァントとはそのようなもの、と。然り、左様でありますなぁ我らに個別の思想や意見は認められませぬでなあ」
「ふむ?それはどうだろうな、あの子は我らに意見を聞くことは多い。その時は、ちゃあんとご自身の意見を伝えたほうが良いでござるな」
時に佐々木殿?アサシンのサーヴァントは貴方だけではありますまい。なにゆえにこうも、拙僧は警戒されておらぬので?少し、拍子抜けでありまする」
小次郎は声をあげて笑った。嘲笑、というよりは事態のちぐはぐさに純粋に笑った。
「他に隠密の監視の目でもあると思っておられたか。それはまさに拍子抜けであろうな、ここはそういうところでもある」
………新撰組、だと名乗っておられましたね、ンンン。そこも不可解でありまする」
「なぁに、案内と共に説明しようではないか。だがしかし、言語で聞くより体感した方が理解は早かろう」


「なんだ、ササキ。また新入りか、もう俺は覚えるのをとっくに辞めたがお前は毎度大変だな新人の世話を任されて」
「アンデルセン先生、息抜きですかな」
「そんなところだ。場所を変えれば進まないものも進むかと思ったがダメだったな」
「誰も急かしはすまい」
「ああ誰もいないさ、この俺自身が急かす」
「それは厄介でござるなぁ」
青髪の子供アンデルセンがスタッフの休憩スペースであろう場所で執筆をしている。道満は深々とお辞儀をした。
「お初にお目にかかりまする、拙僧クラスをアルターエゴ蘆」
「道満、な。俺は見ての通り作家だ三流サーヴァントだ相手にするな俺も相手にしない」
「は、左様でございますか
「では、失礼をば先生。この廊下の奥が、道満殿の部屋だ」
小次郎が先導する、道満もそれに倣った。
「おや、そういえば他のサーヴァントの皆様は?」
「おのおの好きにしておるよ、シュミレーションルームで仮想戦闘図書館で読書、スタッフの手伝い。ああ、そうだ忘れておった。ここではスタッフの手伝いをせねばならん、給料は出んのでボランティアだがな」
小次郎は食堂の運営や、物資の整理などのそういった雑用をシフト制でこなすことを説明する。道満は小次郎と同じシフトに入っていると。
「私の仕事は主に農業プラントでの農作業、そして主人の護衛だ」
「農業プラント」
道満は目を丸くした。
「ついこの間、イベント特異点先で無用に作物を育ててしまいあわや歴史改変となる事態になったのだ。原因となるそれを全て回収して、そしてこのカルデア内に陣地作成の魔術を応用して作った畑に移したというわけでござる」
「成る程。皆様もそうやって日常生活に必要なお仕事をなされているのですねサーヴァント用の部屋数はそこまでないものだと思いましたが、さて。拙僧に個室が与えられた特別な理由はおありで?」
「まぁ、来たばかりで自身の魔力で自室を作れと言うのも酷であろう。マスターの気遣いだ、そして警戒でもあるかな」
冗談っぽく言うその口元は、笑っている。
「勝手に変な部屋を作られても困る、というわけですねぇ。ンン、承知いたしました」
「しかし主の口ぶりを察するに、道満殿は新撰組入りであろうから、いずれボイラー室付近に居を求められようて。ここは数日の仮住まいと思ったほうがいい」
「ボイラー室?聞き間違いでしょうか、ボイラー室付近に住めと?」
静かに扉が開いた。白い部屋。ベッドがあってシャワールームがある。それだけの部屋だった。
「新撰組が、そこにあるからな」
また、新撰組だ。道満は小さくため息をつく。
「理解が追いつきませぬ
いずれ分かろう、と小次郎は笑った。

シュミレーションルームでは、ちょうどランサー李書文とバーサーカーベオウルフが戦闘を行なっていた。
「彼らのような血の気の多い武人らは、ああして戦闘シュミレートで日々を過ごしておられる。他にも、レイシフト可能な場所もあるのでそこへ赴き、エネミー狩りをして自主的にアイテムを取得してくるサーヴァントもいる」
「ははぁ、本当に自由に過ごされているのですねえ」
「もちろん許可は必要になる、事前にマスターを通してスタッフや所長の認可が降りねばレイシフトはできないでござるよ。どこか行きたい場所があるのであれば、拙者と同行という形の方が許可は下りやすかろう」
「ンンなるほど。その時はお頼み申しまする」
「こちらの部屋は談話室。食堂の隣だ、よく子供サーヴァントが集まって遊んでおられるよ」
小次郎は「おうい」と声をかけてから入っていった。入り口付近で、道満は立ち止まる。
「あら、小次郎のおじさま!ちょうどよかったわ、お父様役が足りていないの」
「ナーサリー殿申し訳ない今は新入りの道満殿の案内の任についておるのでござる」
「まぁ、噂の道満おじさま?」
ナーサリーは駆け出した。その後を、ジャックとジャンヌリリィがついていく。
「おやおや皆様、元気で宜しいですねぇ。初めまして、拙僧は」
「道満さんでしょー?おかあさんの新しいサーヴァントだね!」
「道満さん!属性は混沌・悪と聞きましたよ!悪いことは見逃しませんからね!」
「ンンンン?信頼されておりませんねぇ、拙僧はそのようなことは致しませぬ」
屈んだ道満に、子供たちは群がる。
「故に、警戒のための魔術も解いてほしいものです」
奥に座っていた人物に、道満は申し訳なさそうに言った。小次郎が紹介する。
「道満殿。彼も古株だ、新撰組ではないがな。キャスター、クー・フーリン殿でござる」
「おうよ、新撰組に入ってんのは槍持ってるオレの方だ。ま、いずれ会うだろ」
「どうでござろうな、最近はギリシャの英霊たちとエネミー狩りに勤しんでらっしゃる。あまりカルデア内では姿を見ておらんでござるよ」
「なんだよ冷てぇ奴だなぁ、マスターに会ってやりゃあいいのに。おお、そうだったな魔術を解くぜ」
ルーン文字が突如浮かび上がり、道満の目の前から消えた。
これで道満は談話室に入れる。子供たちがその手を引いた。
「ねえねえ、一緒に遊んでくださいな」
「ン~、お誘いは嬉しいのですが拙僧はまだカルデア内を回っておりませんので
「左様、父親役の適任は他にもおられる。ジャック殿、そなたの駆け足ならアンデルセン先生も逃げられまい」
「お、先生が部屋から出てるなんて珍しいじゃねえか。ジャック連れてこい。オレの婿は先生で決まりだ」
「はーい!じゃあちょっと待っててね」
ジャックは姿を消した。風が後から追いついていく。
「子供が好きなら談話室に顔を出しな、遊んでやってくれ」
クー・フーリンはにたりと笑った。
「ええ、もちろん。こちらには顔を出すように致します。なれば皆様の警戒も解けましょうぞ」
「そうそう、そういうこった。わかってるじゃねえか」
「では、隣が食堂だ」
食事は必要ないというのに、不思議なものだ。
その考えを察したのか、小次郎は静かに笑う。
「カルデア式英霊召喚、不思議なもので食事からも魔力を得られるのでござるよ。それに食事をするという行為自体を楽しむ方も居る、拙者は後者だ。ここの、エミヤ殿が作る蕎麦は上手い」
「ほお、それは良いことを聞きました」
「食べていかれるか」
「宜しいので?」
「人と同じように食事をすれば、人はそれに安心感を覚えるのでござるよ」
小次郎の言葉に、視界の隅に映るスタッフたちの感情を察した。
「ンンンンンあなた様もそのように過ごされたのでありますか?」
「警戒を解いたか、ということならば違う。拙者は第一回目の召喚サーヴァントゆえ。警戒のけの字もなかった」
それに、と小次郎は続ける。
「マスターに気に入られてしまえば誰も警戒はせぬよ」
「ンン?その口ぶりだと、拙僧にさっさとマスターに気に入られてしまえとそういう風に聞こえますがねぇ。子供たちと遊び、食堂に顔を出し、そしてあなた様とレイシフトにご一緒させていただくと。そうして善人としてあれば良い、と」
少し意地悪そうに口元を歪めれば、一瞬小次郎は眉をしかめた。
………ふぅむ、自覚がないか。それは困ったな」
「ンンン?なんの事です」
「お主は既に気に入られておるよ、誰も警戒などしていない。まぁただ無警戒なのは格好がつかんというわけで、それぞれ少しは目を見張っておろうが」
はぁ」
「食べ終わったら<新撰組>へ向かおう」
に、と笑うその目元は、馴染みのある日本人のそれだった。


「副長殿、こちら先ほど召喚に応じて下さった新入りサーヴァントでござる。おそらくは新撰組入りが決まろうと……おや、回覧板には既に目を通されておったか。これは失礼」
回覧板、というのは副長土方歳三が持っているタブレットのことだろうか。モニターにデカデカと回覧板というタイトルが書いてあり、察するにそこに新入り情報としてリンボのことが書かれているらしい。しかしすぐに消されてしまったので、内容を盗み見ることは不可能だった。
予想以上に、この組織の情報伝達は早い。
リンボはごくりと生唾を飲み込んだ。
「道満、か。何が出来る」
こたつで茶を飲んでいるのは、土方。そうしてその隣に織田信長と信勝。茶々。沖田オルタ。こたつがぎゅうぎゅうだ。小次郎に倣って、畳の上に正座する。
「俺は新撰組副長土方歳三だ、面々のことは把握済みか?」
「ええ、形だけの自己紹介ではありましたが礼儀は重んじるが最善とンン、出来る限りの挨拶回りはいたしました。皆々様のことは既に存じげておりますので、挨拶は不要ではありましたがねぇ」
「じゃあ本題で良いのではないか?わし、さっさと話終わらせてテレビ見たいんじゃけど?」
「てゆうか別にここで話す必要はないんじゃないか?僕たちには無関係だろ」
信長と信勝の文句が飛ぶ。
「しかし二人とも、ここが新撰組屯所なのだ。ここで話をしないといけないとまじんさんは思う。思うみ」
「ええ?!ここって屯所になっちゃってたワケー!?茶々初耳なんだけど!?」
「うるせえ、すぐ済むから黙ってろ。道満、さっきの問いに答えてくれりゃ次に進める」
ン、拙僧が何が出来るか、という問いでありましたな……それももうご存知のはずでは?拙僧は陰陽師、魔を祓うことを生業としていた者の影そうですねぇ。敵を呪うのが主力でしょう。向き不向きで言えば、後衛サポートが」
「副長殿、そうは言うが道満殿は結構腕力で物を言わせる戦い方をなさる。前衛に置くが良いかと。主もそのつもりでござる」
小次郎が口を挟んだ。
「ほう、零番隊長としての意見はありがてぇな。」
「ぜ、ろばん?」
リンボは目を丸くする。
「まじんさんは、二番隊長だぞ。ええと、はじめちゃんが三番だ。一番はアルトリアオルタさんで
沖田オルタに続いて茶々が答えた。
「順番が決まってたのってあとは槍を持ったクー・フーリンって人だけじゃなかったっけ?」
「そうだな、原田の席にクー・フーリンを置いてる。あとはまぁよく選ばれるメンツが新撰組だ。俺がいるところが、新撰組であるようにマスターであるあいつが選ぶサーヴァントは新撰組になる」
土方は、茶を飲み干した。
「道満、お前も選ばれるのなら新撰組だ。のちのち戦闘の動きを見て配属を考える、来たばかりの奴はまずは他の奴等の働きぶりを観察しておくといい」

「さっぱりでございました」
リンボは素直に言った。小次郎は羽織を脱いで片手に持ちながら歩いている。その隣を行けば、すれ違うカルデアのスタッフたちは一瞬リンボをギョッとして見つめるが、すぐにその存在を見過ごした。
もはや、慣れてきているのか。
情報伝達も早ければ、皆の警戒が薄れるのも早い。
そこまで信頼されておると?あの小娘が?

「あれはああいうもの、それはこういうもの、と考えるが楽でござるぞ。拙者でさえ、真面目に考察しようとすると知恵熱が出ようもの。当の昔に理性は失ったも同然である」
「考えるな感じろ、フィーリングということですな」
「うむ。それがいい……………、と」
突然、小次郎が歩みを止めた。リンボもそれに倣う。
「どうなされましたか」
「ああ、いや。ここは案内しても良かったのかどうか判断がつかなかったので迷った次第。面目ない、一度確認を取ってもいいでござるか」
「ええ、もちろん」
小次郎は、その扉のそばにある通信機でどこかへ連絡を取り始めた。
立ち入り禁止。扉に手書きの赤文字で書かれている。
ペンキが乾ききらず、垂れた水滴の玉がそのままで固まっていた。
見た目は重々しいのだが、そこまで嫌な雰囲気はない。何故だろう。不気味だ、と最初は思ったのだが、今では身近だとさえ感じるフシがある。ワケがわからない。

「ああ、保管庫だ」
小次郎が通話している。相手の声は聞こえないが、少し低い気怠げな女の声と察した。マスターだ。
「しかしだな彼にはそれを与えたのであろう?教えていいものか……何?案外小次郎は優しいね、だと?いやいやいや。お主が鬼畜なのだ。自身が至って普通の感覚であると勘違いしている。………喜ぶ?喜んでくれる?ははぁそうか、では賭けるか?……ふふ、相分かった。ではお主にはそうさなぁ、肩揉みでもしてもらおう」
話はついたらしい。
「待たせたな、道満殿」
「いいえいいえ、お構いなく。それでマスターはなんと?」
「いずれは拙者の相棒とするそなたであれば、全て知っておいて良かろうとのことだ」
リンボは、素直に驚いた。
「相棒、でありまするか」
「嫌なら拙者は無理強いせん。あと、相棒という字面にそこまで深い意味合いもない。あの子は我らを並べて戦わせたいだけなのでござる」
で、ここなのだが。
小次郎は立ち入り禁止の扉を開けた。彼はフリーパスらしい。
「保管庫だ。アイテムや、礼装、サーヴァントを保管しておく場所でござる」
…………その、会話を聞いてしまったのですが」
「ああ、別に隠し立てする必要を感じなかったまでのこと。罪悪感を覚えずとも良いでござる。それがどうした?」
「隠しておられる何かを、拙僧に伝えてしまえばそれに対してマスターは<拙僧が喜ぶ>と判断したのでありましょう?そしてあなた様はその逆に、賭けた」
「賭け事にしてしまったことを不快に思われたのであれば謝罪する、すまなかった」
「いえいえ、とんでもない!拙僧、興味が湧きました。そしてその賭け勝負未だ内容は理解できませぬが乗る方が面白いかと良い、かと。ンン、ふふふふふ。マスターは拙僧が喜ぶことが、ここにあると。しかし逆に佐々木殿は、拙僧は喜ばぬ、と?」
「ああ、そうさな。いやしかし、拙者よりも其方のことは主が理解しておろう。賭けはそれがしの負けかもしれぬ」

リンボは背中が粟立つのを感じた。ああ、なんだこのスリルは。楽しませてくれる。これはいい。面白い。
よだれが垂れそうになるのを飲み込んだ。リンボは、早る気持ちを抑えて小次郎に言う。
「保管するもの、アイテムや礼装そしてサーヴァントと申しましたな?このポッドがそうでありましょうああいやしかし、霊体化させてデータとして残すのでしょうなあ。場所を取りましょうし
「ほう?わかっておられるなぁ、このポッドは本来ならばこの部屋には必要ではないのだ。宝具を重ねる際に霊基を合成する、そのための装置がこれでござる」
「ははーん、わかりましたぞ!マスターはサーヴァントを全て保管しておられるのですな!?一度召喚したサーヴァントでさえ、捨てきれずに!ああ、なんとお優しいことか……
リンボはうっとりした。
実際に感動している。ああこれは、壊すに得難い快感を持てる!
楽しみで仕方がない!
「捨てる、というか……使う時は使うのだがな」
小次郎は目を細めた。
「使う。と、申しますと?」
「れべるあっぷに必要な種火が無いときに、あと少し経験値が必要だというときに主は一気にこの保管庫からサーヴァントを使う」
にやり、と口角があがる。
「おやおや。おやおやおやおや?クククククああいや失礼!予想外でありました!なぁるほど、マスターは優しさのカケラもない外道でありましたか?はははははは、それは良い。我が主として上々!そうでなくては!」
感じていた不気味さは消えてなくなった。純なる正義を穢すのは楽しかろうが、純なる正義が世のため人のためと身銭を削る様、そうして心すり減るのはもっと良い。そのすり減ったもので、心で、外道に変わってしまうのも、もちろん良い。
「そしてこの間、その全てを使ってしまわれたのだ。故に今、ここに保管されたサーヴァントはおらぬ。では、最後はマスターの自室へ赴こう。賭けは、マスターの勝ちであった」
「ン、ははははは!マスターは拙僧のことを何でもお見通しですなあ。嬉しいことでありまする……ええ、ええ本当に。心の底から喜びが感じられますぞ」

小次郎の後ろをついていく。青い髪が、夕日に照らされて紫の色を強くした。ゆらり、ゆらりと後ろ髪が揺れる。
ボイラー室の方へと戻る。通った覚えのない通路を進むと、奥には一室だけ部屋があった。
そこが、マスターのマイルームである。

「ねぇ?喜ぶって言ったじゃん」
「はいはい、拙者の負け。降参でござるよ、そなたの言う事をひとつ聞いてやるさね」
ベッドで部屋着姿のまま、寝転んでいたマスターは笑った。小次郎は慣れた動作で、壁際のソファーに座る。新品ではなく、使い込まれたソファーなのがやけにリアルだった。生活感がある。

「宝具5の小次郎26体が保管庫に居たんだけどそれを道満の種火代わりに使ったって言ったら、道満は絶対喜ぶって」

マスターは、いたずらっ子のように笑った。
それを兄のような顔で愛おしそうに眺めるのは、佐々木小次郎だ。
……………?……
リンボの思考は止まった。ンンン?と言う声さえ形にならない。小首を傾げるしか出来なかった。
何を、なさったと?」
そうしてやっと声になる。
「え、だから種火がさぁ、全然なくてね?」
マスターがキョトンとした顔で言う。
「保管庫に保管してた小次郎を使う時だなと思って、道満のレベル上げに使ったんだよ」

蠱毒。そんな単語を思いついたが、実際違う。
異なる。
蠱毒は閉じ込めておいて残り一つにするのだ。そうではない。ただ、閉じ込めておいただけ。宝具を重ねたのは、霊基を合成したのは、保管庫を圧迫したから。容量を超えたから。保管庫でそれが出来るように、装置まで特別に置いて。
そんな場所に、本人に案内させて。
本人に、説明させたと?

「ひ、引きました…………
引き攣る口元でやっと言えた。ドン引きでありまする、と続けると、小次郎がわははははと声をあげて笑うではないか。
「これはこれは。賭けは、それがしの勝ちであったな」

男は、それはもう嬉しそうに言うのだ。
「さてマスター?肩叩きをしてもらおう」