三毛田
2026-06-20 22:17:28
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94 【94/赤い糸の先には】

94日目
君がいて欲しい

「赤い糸の伝説ぅ?」
「伝説っていうか、おとぎ話みたいなもの。うーん。おまじないから派生したものっていうのが、近いかも」
「俺が読んだ書物にも、似たような記述があったな。資料ではなく、物語だった気がするが」
 なのの言葉に胡乱げな視線を向けると、どうしてか丹恒まで少し乗り気なような言葉を向けてきて。
「結ばれる二人は、小指と小指が赤い糸で繋がってるんだって」
 ニコニコ笑いながら、小指を立てて見せてくる。俺も真似して小指を立てると、そっとそこに三角のスナック菓子を被せてくる丹恒。
 お前、なんで今日は色々なノリがいいんだよ。
 いつものクールで一歩引いた態度は何処にやった。
「さては丹恒、仮面の愚者が化けた偽物だな?」
「それはないよ、穹。アンタがなかなか起きてこないから、二人でラウンジの掃除をしたんだけど、いつもの雑雲吟の術で床を水浸しにしてパムに怒られてたんだから」
「雑で悪かったな」
 ムスッとした表情で、胸の下で腕を組む丹恒。胸が強調されてますよ。
「そっかぁ」
 掃除に参加しなかったことを責めるような視線が、二人から向けられてる気がする。でも、口笛を吹いて誤魔化す。誤魔化されてくれ。
「もう。たまに甘やかすとすぐこれなんだから」
 あれで甘やかしていたって!?
 なんて言ったら、色々と文句を言われた上に一人で掃除を言いつけられそうだ。
「そ、それで。赤い糸なんて本当にあるのか?」
「大抵は創作物の代物だな。だが、そういうことに関する奇物がないとも言えない」
「なるほど」
「でも、あった方がロマンチックじゃない? ラブロマンスってやつ」
 手を組んで、その手に頬ずりしながらうっとりした声で。
 残念だが、俺にはなのの言うロマンチックさもラブロマンスにもみじんも興味がない。
 丹恒はどうなのかと思って視線を向けると、自分の小指を見ていて。
「ん」
「なんだ」
 なんとなくだけど、彼の小指に赤い糸が結ばれていたとして。その先に、俺じゃない人がいたら嫌だと思ってしまった。
 だから、そっと小指を絡めて。と、彼は何をしているんだこいつは。って表情を浮かべる。
「本当アンタたち何してるの」
「赤い糸の代わり?」
「興味なさそうにしてたのに?」
 意味わかんない。って、ちょっとだけ怒ったように。
「そう、か。ああ。お前がそれを望むのであれば、俺はやぶさかではない」
「じゃあ、赤い糸? 毛糸? でも使って、俺と丹恒の小指と小指を結んでもいいかな?」
「ああ。俺は構わない」