ぽつぽつと大きな葉に注ぐ雨粒が心地のよい音色を奏でている。その音をどことなくご機嫌に聞いている恋人の顔をそっと覗き見てぼんやりと可愛いなぁと思ってしまった。
「綺麗やなぁ」
ちょっとしたお出かけで雨に降られてしまったがちょうど近くに雨宿りスペースもあったし、傍には紫陽花が咲いていた。
穏やかに雨に打たれる紫陽花は可愛らしく楽しそうに揺れていて、それを見つめる彼の顔も優しく緩んでいる。
「すごいっすねここ」
「そうやなぁ」
彼の視線を奪っている紫陽花は青と白、そしてピンクとカラフルだ。確か土壌の状態の違いで色が変わると聞いたが同じ土地に咲いているのは凄いと思う。
「よぉ見てみ。種類ちゃうで」
「えっ?」
そう言われてじっと自分も紫陽花を注視してみると確かに形が違うように見えた。こんなに花を注意深く見ることも今までなかったからちょっぴり新鮮だ。
「今度紫陽花で有名なとこ行ってみるか?」
「有名って?」
「例えば神社とかやな。この時期によぉ宣伝されとるよ」
「へぇ」
まさかのデートのお誘いだ。……本人にそのつもりはないかもしれないがこんなひとときから次の約束が生まれるなんて、胸が温かくなる。
「そんなとこいっぱいありそうっすね」
「そらあるわ。それに多かったらいっぱい一緒に行けるやろ?」
……この人やっぱり上手だな。一生勝てる気がしない。
「ふ、そろそろ行くか? どうせ雨止まんやろ」
まるで踊りに誘うかのように俺の手を取って雨の下へ連れ出そうとする彼に思わず唾を飲み込んだ。
……このあと帰る場所はもちろん俺の部屋。他意はない? 本当に?
「紫陽花は気持ちよさそうに雨浴びとるやん」
「……風邪引いてまいますよ」
「すぐ風呂入ったらええやろ」
雨に濡れるのは、べたべたするしあまり好きではない。
それでも、俺はこの人と濡れるならきっと高揚するんだろうなと頭の奥で呟く。
「……風呂入ったら行きたい場所決めましょ」
「ふふ、そうやなぁ。飯美味いとこも探さなあかんしな」
ぽつりと俺の頬に雨が当たる。紫陽花の奏でる音色をBGMにしながら俺たちは躍り出たのだった。
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