第38回お題「制服」(FBI、警察、学生、など)

同棲中の赤安。
オメガバースネタで、れいくんのはじめての巣作り。

 その日、赤井はいつもよりも早く退勤した。
 いわゆる“予感”のようなものがあったのかもしれない。
 自宅に帰り着き、玄関のドアを開けてすぐ、赤井は異変に気がついた。
「零!」
 靴を脱ぎ捨て、赤井は寝室へと駆けてゆく。寝室に入ると、降谷の“匂い”がさらに強くなる。発情期特有の匂いだ。
 発情期を迎えた降谷と過ごすのは、これが初めてではない。同棲を始めてから幾度も経験してきたことだ。だが、今回はひとつ明らかに違うところがあった。
 寝室にあるベッドの上に、赤井の私服や持ち物が大量に運び込まれていたのだ。
 赤井がこんな光景を見るのは初めてだった。もしや、これがあの“巣作り”なのだろうか。
「あ、あかい……おかえりなさい」
 いつもより舌足らずな声で、降谷が言う。赤井は降谷へと近づいた。
 赤井は目を見張った。自分が昨晩、降谷の前で着てみせたFBIのレイドジャケットを、彼が身に纏っていたからだ。
『あなたもあの有名なレイドジャケット、持っているんですか?』そう問われて、クローゼットからジャケットを取り出し、降谷に見せた。降谷はどこか嬉しそうな表情を浮かべて、『ちょっと着てみてくださいよ』と言った。降谷に言われた通りに袖を通し、彼が納得するまでジャケットを着続けた。
 巣の材料を増やすために、自分の匂いをつけさせたのだろうか。
 他の服は、丁寧に畳まれて彼を取り囲むように置いてあった。皺にならないようにという配慮なのかもしれない。
 数ある衣服の中で、まさかFBIの制服ともいえるレイドジャケットを彼が身に着けるとは思いもしなかった。
「どうやら、それがお気に召したようだな」
 赤井が囁くと、降谷はゆっくりと顔を上げた。その顔は、まるで発熱しているかのように赤くなっている。
「これが一番、匂いが薄かったから……昨日あなたに着てもらえてよかった」
 巣材のすべてに自分の匂いがついていないと、落ち着かなかったということなのだろうか。
 彼の性格なのか。オメガとしての本能なのか。
 どちらにせよ、彼が巣を作るために準備をしていたと思うと、胸が高揚した。
「俺も君の匂いをもっと間近で味わいたいんだが、巣に入っても良いだろうか」
……良いですよ」
 早く、早く、と懇願するように、降谷が両手を広げる。
 赤井は誘われるまま、降谷を両腕に抱き締めて、ベッドに身を沈めた。