白殊皎(しらよし こう)
2026-06-18 20:30:00
2535文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

その病、不治につき

レイシフト先で足を挫いた黒の剣士。
同行している土方にそれが見つかり……。

この作品は2026年4月4日・5日に開催された、ぐだぐだ鯖WEBオンリー「ボイラー室横より愛をこめてW~二回目~」での白殊独自のリクエスト受付企画【白殊に歳勇小説リクエストを投げつけようVol.2】でリクエストいただいたものです。

◆リクエスト内容◆
土方さんお手製の薬をイヤイヤする近藤さん(黒剣)に無理矢理飲ませる話

無理矢理ってところがミソですよね。
当方の土方さんは医神さま(アスクレピオス)と妙に仲が良いのです(裏設定)。

 ぐきり。
 地を蹴って跳躍した時、自分だけがわかる嫌な音がした。
 一瞬バランスを崩した黒の剣士だったが、咄嗟に地面に衝撃波を放って体勢を立て直した。
「近藤さん、大丈夫か!?」
 必要のないところでそれをしたため、何かあったのかと土方が駆け寄った。
「なんでもない。戦線を離れるな」
 戦闘中でも自分を優先する土方にじろり、と鋭い眼光をむけた。
「こっちはもう終わってる。さっき変な動きをしただろう、何があった」
 土方は近藤に近づくエネミーを斬り払って更に近づいてきた。
「大丈夫だ」
 腕を掴もうとする土方の手を払い歩を進めようとしたが、足首に力が入らずそのまま転びそうになったので虎徹を支えにして踏ん張った。
「どこが大丈夫なんだ、見せてみろ」
「い や だ」
 正直、右足首が尋常でないほど痛んだが、ここで土方にその弱みを見せて介抱されるのはプライドが許さなかった。

 ここは微少特異点。
 ご多分に漏れずマスターとはぐれた状態でレイシフトされ、到着と同時に敵、というか野生の魔物に襲われた。
 そして、この負傷。
 全く以て運がない、と近藤が思ったかは別として、まずはマスターとの合流が必要だろう。

「万全じゃない状態で合流して、いきなり戦闘になったらどうするんだ? 不覚を取るかもしれないだろう?」
 ちょうど今みたいに、と土方も引き下がらない。
「しつこ──い!?」
 過保護なのもいい加減にしろ、と振り向いたところにドン、と肩を押された。
「い、痛いっ」
 そのままふらふらっと身体が泳いだところをしっかりと腰を抱きこまれ支えられた。
「ほらみろ。そんなんで戦えるか」
「──ッ!」
 その強引なやり口と近い顔に頬を染めて身体を捩るが、足に十分に力が込められないのと、土方の力の使い方が巧みなのか振りほどけなかった。
「足、見せてみろ」
 大きな木の根元に連れ込まれ、座らされる。
…………
 草履と足袋を脱がされると、そこはかなり腫れ、熱を持っていた。
 それを見て土方は無言で睨み付けてきた。
……これくらい、どうということはないだろう」
 剣呑な視線に同じような視線で返す。
「ハァ……
 土方はその様子にばりばりと頭を掻いて懐に手を突っ込んだ。
「ほらよ」
 そして何かを取り出すと近藤に手渡した。
「生憎酒はないが、水ならある。飲んどけ」
 それは真新しい薬袋で表書きは【石田散薬】とある。
 言うまでもなく土方の実家が商っていた打ち身・捻挫・骨折などに効くという内服の粉薬である。
「いーやーだ」
 近藤は顔をしかめてその袋を投げ返す。
「近代では薬効もクソもないと判断されたそうじゃないか! わざわざ飲まなくてもしばらくすれば──むぐっ」
「薬効もクソもなくて悪かったな。こいつは名は同じだが昔の薬じゃねぇ。ありがたくも医神さまにも手を入れてもらった全然別の薬だ」
 土方は左手で近藤の両頬を掴んで強引に口を開けさせるとそこに薬をねじ込んだ。
「~~~!!」
 アスクレピオスの手が入っているからなのか昔飲んだものとは全然違う味に、近藤はジタバタと暴れた。
 土方は手元の竹の水筒から水をあおると、そのまま近藤の口を塞ぎ、舌を巧みに使って粉薬ごと彼の喉の奥に流し込んだ。
「んぐぅ」
 近藤は飲み込まないと吐き戻しそうに感じて、嫌々ながらごくんと飲み込んだ。
「まずい! 薬効に手を入れてもらったのならもうちょっとマシな味にしてもらえ!!」
 飲ませられたことがよほど嫌なのか、実質口吸いだったことに全然気がついていない様子で、まるで子供のように舌を出して顔をしかめる近藤に土方はふふ、と笑う。
「あの医神が味とかこだわると思うか?」
「俺はまだどんな人物だか知らん」
 カルデアが長いおまえとは違うんだ、と近藤は顔を逸らした。
「そろそろマシになってきたんじゃないか?」
「!」
 言われて右足首を見ると、先ほどまでの痛みがほぼ無くなり、腫れもかなり引いていた。
「段違いの効き目だな」
「そういうことだ」
 口移しのついでに少しの魔力を乗せておいたことは黙ったまま、布を裂いてその部位をサポートするように巻いてやる。
「あとはマスターと合流してからだな」
 足袋と草履を履かせ紐を締める。
「俺は子供か」
 そこまで世話を焼かれて近藤は不服そうに頬を膨らませた。
「あぁ、手のかかかる大きな子供だ」
 土方は近藤の足首を一撫でして、愛しいものを見る目でその瞳を見つめる。
「ばか……
 どんな悪口を言っても効かなそうな態度に、近藤は頬を染めて口を引き結んだ。
「次にこいつにお世話になるようなことがあったら、ちゃんと自分で飲めよ」
 足首の様子を確かめるように立ち上がった近藤に土方は先ほどの薬袋を差し出す。
「そういえば、おま、え……
 自分で飲め、と言われて、今更のように無理矢理飲まされた事を思い出して近藤は更に耳まで赤くなった。
「なんだ?」
 にや~り、と口角を上げて意地悪げに土方は近藤を見遣る。
「どさくさにまぎれて……おまえ……!!」
「お、繋がったな。藤丸、今どこだ」
 わなわなと身体を震わせる近藤を無視して腕につけた通信機に向かって話しかける。
「行くぜ、近藤さん」
 相手の座標を確認して土方はさっさと先に立って歩き始めた。
「待て、歳!!」
 それを追いかけて咄嗟に外套の袖を掴んだ。
「足は大丈夫みたいだな」
 土方は掴まれた袖ごと近藤を抱き寄せると、自身の唇で近藤の口を塞いだ。
「ん、ん、ん~~~」
 不意を突かれた上、舌を絡めた深い口吸いに移行されて土方の腕の中でもがいた。
「合流したら、できねぇからな」
 口を離すと、ぺろ、と舌で自分の唇を舐めた。
 近藤はその仕草に背筋にぞくりとしたものが走る。
「続きは、ここを解決したら、だ」
「──ぅうう……
 何もかも見透かされているような土方に、その袖を握りしめたまま近藤はまた赤くなって黙り込んだ。

──近藤さん静かだけど、何かあったの?
 合流したマスターにそう聞かれたが、土方は『さぁな?』と涼しい顔で答えたという。