いしえ
2026-06-15 18:44:24
1283文字
Public 封神腐
 

砂つぶ城(じろ)の計画死/呂趙呂(画像SS版+本文のみ版)

支配という絶対にどこか依存のあるのが呂趙呂の良さだよなーと思います。
5/26に紙に書いてあったものをやっと入力できました。






[砂つぶじろの計画死]




 絶対者趙公明に、へらへら媚びへつらってその内、絶対的にだれにも触れさせぬ、不可侵のいびつなガラス玉を潔癖にて有す。呂岳とは、そういう者“だった”。ああ、超越の語さえ、形容に乏し。凌駕は、何にも勝るうつくしさだ。好めば花にしおれさえさせぬくせ、なにさえできるくせ、無力な子羊に情けをかける神は、いたく悲し気にこう言うのだった。
「ほころんだ花が、栄華のさき、必ず萎れるように――つぼみのたどる摂理は、ああ、いかに陳腐でも、決まりきったシナリオ宿命なのさ!」
 陳腐の舞台に拍手を送りて、好む茶番を、上質、茶菓子おかしとす。猛禽絶対者の爪さきは、召使いごとき、心の臓も脆弱な砂玉さぎょくも、たわむれ掴んで、てのひら握り込む。このかたの前では、堅固ぶる城塞とて剥き身のアサリより無防備だ。まして貧相な砂の城ごとき、その気ままなさざ波ワルツスコップおもちゃ菓子に、あそばれるままの脆さで落城も築城も、過程も竣工も着工も、幾度も、幾度とも繰り返す。されど、どれほど弄すがままのちいさきものでも、売却と引き渡しだけはだれにさえせぬが、ただこの一柱がため、そのせい在ると呂岳に解させる。それは、歴史の定めを思わせた。
 憐れで貧相な守り人よ、ああ、護るべきに思うたその砂つぶを、ひとすくいの砂山にさえたわむれに呑まれるを歓ぶ身よ。無情程度実感するさえ遥か傲慢に思うその、圧倒の前。自身の矮小さを嘆くより慶ぶ身に、感謝するがいい。
 ああ、絶対者の気まぐれが射たその矢を永劫、流れる血に悦ぶのだろう。いつかきままが済みそっぽを向かれたとて、その矢をたわむれ抜かれたとて、その跡地に永劫、砂玉さぎょくの城の骸骨かばねの守り人を、続けるのだろう。ヒトと同じ色の血を流してみせるくせ、この血を、絶対は、無彩色へと塗り替えてしまった。黒い薔薇がいかにカラフルか、呂岳は、思い知る。城に埋もれたいびつなつぶが、アポトーシスさえ、自己にては許し得ぬ。水かきを失うことも、尾を失うも、足を得るも、葉を落とすことも。“城主”の望まぬ限りはなにも、――自己のかたちを守る細胞死とて、なにも、与えられはしないのだ。それは、生命という摂理を絶対的に歪めるちからが、しおれることさえ愉しむくせしぶとく、根の強さを、しぶとく、けぶらせつづけるいびつな完全美だ。そのせいの薫りこそがなによりつくりもの。そのせいのつくりものこそが、なにより薫る。味さえも、つくりものだけがやけに美酒。
 呑まれた粗挽き胡椒がテリーヌ、まきこまれていくらも、プレートを華やかに思う。どこかへ行ってしまっても、境のない浜辺で城は、今日もまた、今はまだ。いつか来るのか知れぬ子どもの飽きの、今は来ぬなか。ぺたぺた、ぺちりと、つくられてはざぁと、バケツみずがめにこわされる。もはやらされている城のどこかで、いつかのぎょくは、そのあるじとして待ちつづけるのだろう。
 砂つぶの城に、死は来ない。砂つぶじろの永劫死は、神に、計画されている。





fin.


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