[砂つぶ
城の計画死]
絶対者趙公明に、へらへら媚びへつらってその内、絶対的にだれにも触れさせぬ、不可侵のいびつなガラス玉を潔癖にて有す。呂岳とは、そういう者“だった”。ああ、超越の語さえ、形容に乏し。凌駕は、何にも勝る
力だ。好めば花にしおれさえさせぬくせ、なにさえできるくせ、無力な子羊に情けをかける神は、いたく悲し気にこう言うのだった。
「ほころんだ花が、栄華のさき、必ず萎れるように
――つぼみのたどる摂理は、ああ、いかに陳腐でも、決まりきった
シナリオなのさ
…!」
陳腐の舞台に拍手を送りて、好む茶番を、上質、
茶菓子とす。
猛禽の爪さきは、召使いごとき、心の臓も脆弱な
砂玉も、たわむれ掴んで、てのひら握り込む。このかたの前では、堅固ぶる城塞とて剥き身のアサリより無防備だ。まして貧相な砂の城ごとき、その気ままな
さざ波と
スコップに、あそばれるままの脆さで落城も築城も、過程も竣工も着工も、幾度も、幾度とも繰り返す。されど、どれほど弄すがままのちいさきものでも、売却と引き渡しだけはだれにさえせぬが、ただこの一柱がため、その
生在ると呂岳に解させる。それは、歴史の定めを思わせた。
憐れで貧相な守り人よ、ああ、護るべきに思うたその砂つぶを、ひとすくいの砂山にさえたわむれに呑まれるを歓ぶ身よ。無情程度実感するさえ遥か傲慢に思うその、圧倒の前。自身の矮小さを嘆くより慶ぶ身に、感謝するがいい。
ああ、絶対者の気まぐれが射たその矢を永劫、流れる血に悦ぶのだろう。いつかきままが済みそっぽを向かれたとて、その矢をたわむれ抜かれたとて、その跡地に永劫、
砂玉の城の
骸骨の守り人を、続けるのだろう。ヒトと同じ色の血を流してみせるくせ、この血を、絶対は、無彩色へと塗り替えてしまった。黒い薔薇がいかにカラフルか、呂岳は、思い知る。城に埋もれたいびつなつぶが、アポトーシスさえ、自己にては許し得ぬ。水かきを失うことも、尾を失うも、足を得るも、葉を落とすことも。“城主”の望まぬ限りはなにも、
――自己のかたちを守る細胞死とて、なにも、与えられはしないのだ。それは、生命という摂理を絶対的に歪める
花が、しおれることさえ愉しむくせしぶとく、根の強さを、しぶとく、けぶらせつづけるいびつな完全美だ。その
生の薫りこそがなによりつくりもの。その
生のつくりものこそが、なにより薫る。味さえも、つくりものだけがやけに美酒。
呑まれた粗挽き胡椒がテリーヌ、まきこまれていくらも、プレートを華やかに思う。どこかへ行ってしまっても、境のない浜辺で城は、今日もまた、
…今はまだ。いつか来るのか知れぬ子どもの飽きの、今は来ぬなか。ぺたぺた、ぺちりと、
築られてはざぁと、
バケツにこわされる。もはや
守らされている城のどこかで、いつかの
玉は、その
主として待ちつづけるのだろう。
砂つぶの城に、死は来ない。砂つぶ
城の永劫死は、神に、計画されている。
fin.
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