山茶花
2026-06-14 19:40:27
5122文字
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癒しのひととき【264SK067】

シルデュが露天風呂デートするだけの話/のんびり/4800字程度

*シルデュ付き合ってる、恋人設定です
 
「おお! いい感じの部屋ですね!」
 僕らは、今。天然露天付きの、家族風呂に来ていた。
「そうだな。これなら十分にゆっくりできそうだ」
 シルバー先輩も、持ってきた荷物を置きながら答える。
 僕は、時間も限られてるしさくっと入ってゆっくりしましょう、と先輩に声をかけた。

 僕たちがなんで、ふたりで家族風呂になんか来てるかって?
 それは、ええと、だな。……これが僕らの、デートだからだ!
 その、なんていうか。いつもデートが麓の街の商店街とか、シルバー先輩の寮の部屋になりがちだなってなって。
 だから、えっと。中庭で、新鮮さがあるデートもしてみたいですねーって雑誌広げて話してたら、それならば良いところがあるぞ、ってヴァンルージュ先輩が出てきて、雑誌をめくって。
「温泉などどうじゃ? 裸の付き合いもたまには必要じゃろうて」
 って、お勧めしてくれた。僕たちは、温泉かー、って考えて。
「いいかもしれないな。日頃の疲れも取れそうだ」って、シルバー先輩も賛成してくれたから。
 お互いの親に許可取って、僕たちはこうしてふたりで、日帰りで、家族風呂に来てみることにしたんだ。

「デュースはまだ脱がないのか?」
「あ、今脱ぎます……って、先輩もう準備できたんですか!?」
「時間が限られているからな。荷物を置いて、すぐ脱いだ」
 いつの間にか全裸になっているシルバー先輩に、僕も慌てて服を脱ぐ。
 ……それにしても、うん。タオルは肩にかけて、前、隠さないんだな。こんなところでシルバー先輩のその、裸を見ることになるとは、思わなかったぜ……
 
 僕も服を脱ぎ、一応タオル巻いて大事なとこくらいは隠しながら、まずはかけ湯をして、洗い場へ向かう。
 すると隣に座っていたシルバー先輩が、せっかくだから洗ってやる、と僕の方を向いた。
「え!? じ、自分で洗えます……っ」
「遠慮するな。ほら、目を閉じろ。シャンプーが目に入るぞ」
「は、はい……
 そうして。目を閉じて大人しくしていると、シルバー先輩の優しい指先が、僕の髪でシャンプーを泡立てて。
 そのまま、髪をマッサージするように指の先で揉まれながら、ぬるいシャワーのお湯で洗い流された。
「ぷはっ」
 ぷるぷると少しだけ顔を振ると、シルバー先輩が、子犬のようだなと言って笑った。
「次は身体だな。大人しくしていろよ?」
「へっ、からだ、って……!!」
 僕があらぬことを妄想している間に。シルバー先輩の指が、ボディソープの泡と共に僕の肌を滑る。
 ……けど、別に先輩、やらしい手付きでもなんでもなくて。普通に、僕の身体を洗ってくれたのだった。
「って、先輩、そこはさすがに自分で洗えます……っ!」
「ん、そうか? なら、他のところを洗っておくから、そこはお前に任せるか」
 って思ってたら、危うく大事なところまで洗われちまうところだった……。べ、別に触られるのが嫌なんじゃなくて!
 ……まだ僕ら、そういう関係にはなってないし! 清い関係だし! ここ、温泉だし! いろいろとダメだろって思っただけだ!!
 シルバー先輩には別にまったくその気とか他意はないにしても、だ!!
 それで、ようやく僕の身体にシャワーをかけて、洗われ終わると。
 シルバー先輩は、俺も自分の身体を洗うか、と言った。だから僕は、お礼に洗います、と言って、シルバー先輩の髪を洗っていく。
「先輩、今日はシャンプー使いましょうねっ」
「任せる」
 シルバー先輩の柔らかな銀髪に、指を通して。さっきやってもらったみたいに、頭皮をマッサージするようにして、先輩の髪を洗う。
 すると。
……ぐう……
「先輩、寝たら口とか目にシャンプー入りますよ! 苦いにがいですよ!」
「はっ……すまない。心地良くて、つい」
 シルバー先輩が居眠りを始めてしまったので、僕は早めにシャンプーを洗い流すことにした。
 それから、先輩の背中や腹筋も、ボディソープで洗い流す。
「よい、しょ……っと!」
……
 シルバー先輩は、特に何も言わない。
「痛くないですか?」
「いや、痛くは、ない。むしろ……
「むしろ?」
 僕がきょとんとしながら、首を傾げると。先輩は言った。
……お前の肌が、俺の身体に滑って。それが何か、心地良いなと思っていた」
「なっ、何言ってるんですか、もうっ!! シャワー流しますからねっ!!」
「ああ。どうやら、既に頭がゆだってしまったみたいだ。できるだけ冷たいので頼む」
 そうして本人のリクエスト通り冷たいシャワーでシルバー先輩の身体を洗い流し。
 もう一度かけ湯して、僕らはようやく、内湯に入る。
「ここ、内湯はヒノキ風呂らしいです。木の匂いがして、落ち着きますね」
「本当だ。……懐かしい匂いがするな……
 森で暮らしてたっていうシルバー先輩には、木の匂いはすごく落ち着くものだろう。
 僕は、目蓋が今にも落ちそうなシルバー先輩を眺めていたけど。
 ……案の定、シルバー先輩はこくりこくりと船を漕ぎ始めた。
「先輩。シルバー先輩、お風呂で寝たら危ないですよ」
「はっ……。心地良くて、つい。起こしてくれて、ありがとう」
 内湯だと気持ち良すぎちゃうみたいですね、風にも当たれるよう露天に行きましょうか、と僕が提案すると。
 それはいい案だ、と。シルバー先輩も、露天へ移動する僕へとついてきた。
「露天の方は、すごいな、これ。岩をくり抜いて作られた風呂桶になってるみたいです」
「なんと、俺たちが余裕で中に入れる、これほどの大きさの岩を……。どんな達人の一閃で斬られたのだろうか。見てみたかった」
「さすがに機械でやってませんかね!?」
 そんな雑談をしながら、僕たちは岩づくりの露天に入る。打たせ湯もあるから、修行もできるな。
「先輩、打たせ湯ありますよ。修行しなくていいですか?」
「ふっ。やっておくか」
 そうして打たせ湯に肩を打たせているシルバー先輩に感想をインタビューしてみる。
「どうですか? 気持ちいい?」
「打たせ湯の刺激によって、肩の凝りがほぐれていくのを感じる。大変気持ちいい」
「ふはっ、それなら良かったです~」
 お前も打たれてみるといい、と言って場所を交代してくれたので、僕も打たせ湯に肩を当ててみる。
「あっ、ほんとだ、気持ちいい~。筋肉の凝りがほぐれていく感じがしますね」
「ああ。両肩バランス良く打たれておくのがいいと思うぞ」
 特にお前は、机に向かう時間も長いだろうからな、と言われて。確かに、と僕は気合を入れて肩を打たれておいた。
 それで、一通り打たせ湯を楽しんだ後。
「風が気持ちいいですね~。やっぱり露天風呂だと、熱めのお湯との温度差で、すごいなんか、整う? みたいな感じがします」
「そうだな。吹き抜ける風が、心地いい。それに、この景色もきれいだ。植物と石で飾られた庭園……、雅という奴だな」
 確かにすごく景色もきれいで、リラックスできますね、と、風景も含めて楽しんでいると。
 シルバー先輩が不意に、僕を呼んだ。
「デュース、こちらへ」
「へ? なんですか、どうかしました?」
 言われた通り、シルバー先輩の傍へ行くと。僕は、シルバー先輩の腕に捕まった。
「ほあっ」
……湯の中で筋肉をほぐすのは、良いストレッチにもなるんだ。おいで。少し、揉んでほぐしてやる」
 そう言って、シルバー先輩は。僕を膝の間に入れ。腕や肩などを揉み始めてくれた。
「ふ、ふぁあ~……。気持ちいい、です……
「だろう? ほら、こっちも……ほぐしておかないとな」
「えっ、あ、足も……っ!?」
「当然だ。この足は、俺とお前の、自慢の足だからな、労わってやらないと」
 そうして、シルバー先輩に。肩も、足も、太腿も、腕も。手のひらも、指先まで、全部にぎにぎ、やわやわと揉みほぐされて。
 僕は。
「ふ、はぁ……。なんか、もう、気持ち良すぎて、お湯に溶けちゃった気すらします……
「それは何よりだ」
 シルバー先輩の手によって、とろとろにされてしまったのだった。
 せめて僕もちょっとはお返ししようと、シルバー先輩の方を振り返り。
「僕も手と肩くらいは揉みますっ」
 と言って、シルバー先輩の肩を、正面から揉む。
……
……
 位置取り間違えたな、とちょっと僕は思う。正面から肩を揉むの、目が合って気まずいし、ちょっと恥ずかしい。
「ふっ。気持ちいいな」
「そ、それならよかったです……
 シルバー先輩は気にしてないみたいだから、まあ、いいけど。
 それで、今度は先輩の手をもみもみとマッサージして揉んでいると。
 シルバー先輩の手に、指を絡められて。ぎゅっと握られた。
「あっ、もう。先輩、いたずらしちゃダメですよっ」
「ふっ、すまない。お前の手に握られているのが、可愛らしくて」
 それに、ほら。こうやってもマッサージになるだろう、と。
 先輩は僕の手をにぎにぎとぎゅっと握ってくる。
「もう、僕の手をマッサージしてどうするんですか……
「俺も、お前にたくさん触れていたくてな。いいだろう?」
……たくっ……少しだけ、ですからね」
「ふっ。……楽しみだな。今は、こうして、わずかに触れるだけで我慢しているが。いつか、遠くない未来。お前と、もっと深く触れ合える日が、今から楽しみで仕方ない」
……先輩、意外となんていうか、えっちっていうか……、スケベの人ですよねっ」
「さて、誰のせいだろうな?」
「あっ、僕のせいにしましたねっ! もうっ!!」
……お前は、楽しみじゃないか?」
……怖くもあり、楽しみでもありますよ。先輩だって、そうでしょ」
「ああ、そうだな」
 そうして先輩は、もっとこちらへ、と。ぐい、と僕の身体を引いて。僕のことを抱きしめるようにして、温泉を楽しむ。
 僕は、肌と肌が触れ合い、吐息の近いドキドキを誤魔化すように、先輩にちょっとだけつんとした悪態を吐く。
 そんな風にじゃれ合い、時にはふざけ合いつつも。そうして僕たちは、お互いの身体をたくさん揉みあって、ほぐして。
 日頃の凝りも何もかもを温泉の中に溶けださせてしまって、そろそろ上がるか、となったのだった。

 改めて服を着ていると、シルバー先輩がまだろくに服も着ず、パンツしか身に着けないままで扇風機の前の、藤編みで出来た椅子に座ってるのを見た。
「先輩、服ちゃんと着たらどうですか」
 湯冷めして風邪引きますよ、と僕が言うと。シルバー先輩は、これくらいで風邪を引くような柔な鍛え方はしていない、問題ないと言った。
「お前が服を着ていくのを見てるのが、思いのほか楽しくて。見終わったら俺も着る」
「どういう感情なんですかそれは……
 僕はそれならさっさと服を着てしまおうと、全部の服を身に着けて、それで、さあシルバー先輩も服着てくださいね、と迫る。
 そうするとシルバー先輩は、ああ、と頷いて、自分もようやく服を着だした。
 なので僕は、その間にドライヤーで自分の髪を乾かして、軽くセットし直す。
 シルバー先輩はドライヤーで乾かす気がなさそうだったので、服を着た直後、シルバー先輩をドライヤーの前まで連れて行って、僕が乾かした。
「お客さんかゆいところないですか~」
「心地良くて、また眠ってしまいそうになっている」
「寝ないでくださいね~」
 そうして、シルバー先輩の髪もそれなりにふんわりと乾かせたあと。
 僕たちは、最後に忘れ物のチェックや、汚した場所がないかを確認して、温泉を出る。
「ありがとうございました、またのお越しをー」
 そんな挨拶をする番頭台のお兄さんに、気持ち良かったですー、とお礼を言って、僕たちは学園へと戻る。
「気持ち良かったですね、先輩。たまにはこういう温泉デートみたいなのも、いいかもしれないです」
「そうだな。俺も、お前と一緒に、もっといろんなところへ行ってみたい」
 帰りの電車の中。僕たちはふたり並んで、寄り添うように居眠りをして、降りるはずの駅を少し乗り過ごしてしまったけれど。
 それも旅の醍醐味よ、と親父殿なら笑って仰るだろうな、と言う先輩の言葉に、そうですね、僕の母さんもわりとそういうタイプです、と笑い合って。それで、ここどこだろう、せっかくならこの駅で土産探していくか、とか、ちょっとだけ予定外の散策をしながらも。どうにかこうにか、学園に戻る駅を探すのだった。

*おしまい