Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2026-06-14 01:38:48
2754文字
Public
ネロ×キリエ
Clear cache
いつの日か、隣を……
フォルトゥナの街に佇むドレスショップ。
ショーウィンドウに飾られているブライダルシューズに、キリエは思わず目を奪われ――
ネロがキリエにブライダルシューズを贈るお話。
ある日の午後。
買い出し帰りに街を歩いているとき、ふとキリエがショーウィンドウの前で足を止めた。
フォルトゥナの街に佇むドレスショップ。ウェディングドレスを着たマネキンの足元には、白いブライダルシューズが飾られていた。
なめらかなサテン生地に包まれたシンプルなデザイン。低めのヒールで、つま先にはゴールドのリボンの飾りと小さなパールが輝いていた。
「綺麗
……
」
その控えめな華やかさに、キリエは思わず目を奪われる。
少し先を歩いていたネロは、彼女がついてきていないことに気がつくと足を止めた。
「キリエ?」
振り返ると、彼女はショーウィンドウの前に立っている。
ネロは来た道を数歩戻り、その隣に並んだ。
「欲しいのか?」
突然声をかけられ、驚いたキリエは思わず肩を跳ねさせた。
そして、慌てた様子で首を横に振る。
「ううん! 違うの! その
……
素敵だなって、思っただけで
……
」
そうは言いつつ、ショーウィンドウから離れるのが名残惜しそうに、キリエは少し視線を落とす。
その横顔を見つめながら、ネロは口を開いた。
「試着だけでもしてみるか? その靴、気になるんだろ?」
ネロの問いに、キリエは思わず笑みをこぼしながら顔を上げる。だが、チラッと値札が見えた瞬間、すぐに首を横にぶんぶんと振った。
「大丈夫! 本当に、素敵だなって思って見ていただけなの! それに、子どもたちがお腹を空かして待っているだろうから、早く帰ってお昼ご飯の用意をしないと
……
!」
そう言って、キリエはショーウィンドウに勢いよく背を向けると帰路を足早に歩き始めた。
だが、数歩足を進めたところで立ち止まり、顔だけそっと振り向く。
視線の先はショーウィンドウ
——
ブライダルシューズ。
その前に立ち尽くしているネロと目が合った瞬間、キリエはハッと我に返り慌てて顔を背ける。
そして、ほんの少し肩を落としながら、トボトボと帰路を歩き始めた。
その寂しそうな背中を眺め、ネロは再びショーウィンドウに視線を向ける。
ウェディングドレス。そして、その足元に飾られたブライダルシューズ。
しばらく無言でそれらを見つめたあと、ネロはゆっくりと踵を返した。
***
それから数週間が過ぎたある日のこと。
キリエが温かいハーブティーを飲みながら、寝る前のひと時を過ごしているときだった。
「キリエ、ちょっといいか?」
子どもたちを寝かしつけたネロが、リビングへやってくる。
扉を静かに閉め、どこかそわそわとした様子で、ソファに腰を下ろしているキリエの正面に立った。
「? どうしたの?」
キリエはマグカップをテーブルに置くと、ネロをそっと見上げた。
「
……
これ」
頬をほんのり染めながら、ネロは背中に隠し持っていた箱を差し出す。
光沢のある白い化粧箱。キリエは不思議そうに首を傾げながら、それを両手で受け取った。
「
……
開けてみて」
優しく囁くように声をかけるネロ。
キリエは静かに頷くと、箱をそっと開いた。
中に掛けられていた薄葉紙をめくると
——
「! これ
……
」
思わず息を呑む。
中に入っていたのは、ショーウィンドウで見つめていたブライダルシューズだった。
驚きのあまりキリエは言葉が出ず、目をまるくしてネロをじっと見つめた。
彼女の様子を微笑ましく思い、ネロは小さく息を吐く。
「それ、気に入ってただろ?」
「ネロ
……
覚えててくれたの?」
「ああ。
……
届くまで、時間がかかったけどな」
そう言って、ネロは少し照れくさそうに頭をかいた。
「
……
でも、本当にいいの? こんなに高いもの
……
」
嬉しいけど、少しだけ申し訳なさも募る。
キリエはブライダルシューズに視線を落としながら、そっと俯いた。
そんな彼女に、ネロはその場に片膝をついて座ると優しく微笑みかける。
「気にするな。俺がキリエに似合いそうだなって思って、プレゼントしたかったんだ」
「
……
もしかして、ここ最近、仕事ばかり入れていたのはこれのため
……
?」
ふと、最近のネロのことを思い出すキリエ。
彼女の言葉に、ネロは少し気まずそうに視線をそらした。
「ははっ
……
まあな」
照れくさそうに笑うネロを見つめながら、キリエは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
自分が何気なく見つめていただけのものを、ネロは覚えていてくれた。
それだけではない。そのために仕事まで頑張ってくれていたのだ。
「ありがとう、ネロ
……
」
一筋の涙がそっと頬を伝う。
胸がいっぱいになるのを感じながら、キリエは箱の中のブライダルシューズへそっと視線を落とした。
「
……
履いてみてもいい?」
「ああ」
ネロが指先で彼女の涙をそっと拭う。二人は見つめ合うと、互いに微笑んだ。
「本当に素敵
……
」
そう呟いたあと、キリエは足元のルームシューズをその場で脱いだ。そして、箱の中からブライダルシューズを取り出し、履いてみようと身を屈めた、そのときだった。
ネロが突然、キリエの手からブライダルシューズを自らの手にそっと取る。
「え
……
」
驚くキリエをよそに、ネロは片膝をついたまま彼女の足元へ手を伸ばす。
次の瞬間、キリエの足は純白のブライダルシューズに包まれていた。
「綺麗だよ、キリエ
……
」
キリエの足もとに視線を落としながら、ネロはそう囁く。
そして、彼女の手を取ると、優しく引き上げるように一緒に立ち上がった。
キリエはネロに手をひかれるまま、その場からゆっくりと歩き出す。
サイズはぴったり。履き心地もよく、驚くほどに足に馴染んだ。
「どうだ?」
「うん
……
すごく歩きやすいわ」
嬉しそうに微笑むキリエ。その様子を見て、ネロは安心したように息を吐いた。
「でも
……
これ、特別な靴よね
……
? こんなに高価で素敵なもの、なんだかもったいなくて
……
」
そう言って、足元へ視線を落とすキリエ。
少しの沈黙のあと、ネロは彼女の手をぎゅっと優しく握った。
「その靴
……
」
「?」
「いつか
……
俺の隣を歩くときに、履いてほしい」
「え
……
」
その言葉に、キリエは思わず目を見開く。
握られた手から、わずかな熱が伝わってくる。
ブライダルシューズ
――
それが何を意味するのか、二人は知っている。
言葉にしなくても、わかっている
――
「うん
……
」
頬が熱くなるのを感じながら、キリエは静かに頷く。
ネロは繋いだ手を引き寄せるようにして、そっと彼女を抱きしめた。
包み込むような温もりに、キリエもそっと身を寄せる。
いつの日か本当にその靴を履いて、大切な人の隣を歩く未来を思い描きながら
――
了
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内