望月 鏡翠
2026-06-13 17:33:24
888文字
Public 日課
 

#2119 植物園の骨13

#毎日最低800文字のSSを書く


 思わず早口に答えを言いそうになったが、興味津々すぎると思い堪えた。
 技術が発達し出生前に体内を確認する手段が生じたことで、観測できるようになった現象だ。
 珍しくはあるが、異常なことではない。吸収された双子が生まれたあとの子供の体内に残っている例も確認されている。
「あら、流産だったんじゃなかった?」
「そりゃ、結婚したあとの叔母さんの方だよ。叔父さんだ。生まれてくる前は双子だったらしい」
「あらぁ、そうだったの」
「そうそう。それで、結婚したあともあの家に住んでたんだけど、嫌な思い出あるって言って、別んところに住むようになったんだ」
 やはり家の中には、家族しか知らない話がある。
「では叔父さんは故人を偲ぶというか、供養のような意味合いで、大切にされていたんでしょうか」
「そうなのかもしれないけど、まあわからんよね。死んだ人の気持ちなんて。日記とかあったんだろ。読めば何か書いてあるんじゃないか?」
「そうかもしれませんね。お二人は、目は通されたことありますか?」
「あるわけないよ。人の日記なんて」
 これから人の日記を読み漁ろうと思っている比叡は、曖昧な笑いで応じた。
「ああ、いや、息子や比叡さんが読む分にはいいんだけどさ。俺たちにとっては叔父さん叔母さんは何というか、近すぎて。顔を見知った肉親の日記を読むのはやっぱり少し気まずいよ。自分の子供の日記を読むみたいな微笑ましい気持ちにはなれないし。苦しいときのことも書いてあるだろうし、だからそういうのは思い入れが遠い人か、比叡さんみたいな全くの赤の他人が読んでくれるのがいいと思う」
「確かに、そうかもしれませんね。……お茶、ありがとうございました」
 屋敷のことをもっと詳しく調べ直さないといけないのかもしれない。
 あの屋敷に不審死を遂げたものは、いない。だが、生まれる前に消えた命は、記録されない。
 だが現代医療を持ってしても、全ての子供が無事に生まれてくるわけではなく、短絡的に二つを結びつけることはできない。
 日記を読めば、当事者たちがどのように感じていたのか、わかるのだろうか。