望月 鏡翠
2026-06-13 17:31:52
1163文字
Public 日課
 

#2118 植物園の骨12

#毎日最低800文字のSSを書く


 乗ってきたワゴン車にひとまずダンボールの資料を運び込む。
 一通りの作業を終える頃には、腕が疲労で震えていた。
 少し休んでいきませんかと声をかけられ、今度は断る理由がなかった。そのままハンドルを自分で握って車を運転して戻らねばならないことに、うんざりしていたからだ。
 だが埃まみれの物置で作業をした後なので、食卓がある場所に入れてもらえるような有様ではない。庭の縁側に腰を落ち着かせてもらうに留めた。
 冷えたお茶をありがたくいただく。
「お疲れ様です。大変ですねぇ、あの子も自分で来ればいいのに、人を使うことばっかり上手くなって」
「確認したいといったのは僕ですし、仕事でやっているだけですから」
 本当はコンサルタントはここまでしない。刑事であり、仕事としてきているからこそ、遺品整理の真似事をしているだけだ。
「中を確認したついでに片付けてもらったらいいのにね。そのまま戻すんじゃ、ほら、元の木阿弥ですし。中身を確認したんなら、いるものといらないものに分けてね」
 冗談じゃない。物置の片付けまでやらされる筋合いはない。ちゃっかりした人たちだ。
「預かったものの目録はお送りしますから、以降はご依頼主様と相談してください」
 早めに切り上げて逃げたいところだが、屋敷について話を聞いてみたくもあった。
「あのお屋敷、立派な温室がありましたが、植物がお好きな方だったんですか?」
 老夫婦は顔を見合わせる。
「さあ、どうだか。少なくとも叔父は植物に関心がある方ではありませんでしたよ」
 そう答えたのは、夫だ。
「あらでも、確か何かを植えろってうるさくいっていたのではなかった?」
 そう首を傾げたのは、奥方だった。
「そうなんですか。確か住んではいなかったと聞いているんですが、当時から何かに使おうとしていたんですか」
 話をどの方向に持っていくのが一番スムーズかを思案しながら、比叡は絵詞を選んだ。
「いえいえ、百年経ってようやく古さに価値が出たような家ですから。もっと早く手放すなり立て替えるなりすればよかったのに、叔父が随分と執着していたので。叔母もですが。人を入れたりだとか、建物に他の人を入れたり、何かに使ったり、そういうことを考えられるようになったのは、本当に最近です」
「執着?」
「双子の片割れが、あそこにいると信じていたんです」
「双子?」
 過去に不審な死がないか確認するついでに、一族の家族構成についても確認したはずだが、親族に双子なんていただろうか。双子と書いていなかったとして、生年が同じになるはずだから、流石に気がつくはずだ。
「正確には双子になるはずだったというか何というか。なんていうんでしたっけ、片割れがお腹の中で消えてしまったんです」
 バニシングツイン現象。消失双胎。