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望月 鏡翠
2026-06-13 17:24:46
1066文字
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日課
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#2116 植物園の骨10
#毎日最低800文字のSSを書く
屋敷の遠方に住んでいる管理人だが、その実家は都内にあった。
家が近い親族の所有にした方が管理がしやすいのではないか、というのは外部の人間から見た勝手な意見だ。相続諸々の問題で彼らはああなっていて、彼らなりの最良を選んでこの形に収まっている。
話ぶりからわかっていたことではあるが、随分と経済的に恵まれた一族だ。いくつも土地を持っている、地元の名士というやつなのだろう。大きな屋敷に出迎えられた比叡は、門構えに気圧されながらもインタホンを押した。
金持ちの解像度が低い比叡は、使用人が出迎えてくれるような家を想像した。だが家に住んでいるのは老夫婦二人だけで、家の中も謎の美術品などはなく、ごくごくありふれた調度が並んでいた。
都内という立地条件に気押されるが、家そのものに特別な要素があるわけではない。地方都市に行けば珍しくはない大きさの、庭付きの二階建ての日本家屋である。
古くからここに住んでいるというが、山中の屋敷に比べると建築様式が新しく、そこまで古い建物には見えない。外観から予想される建築年数を見るに、管理人が生まれた頃合いで建て直したのだろう。
名刺を取り出して名乗ると、息子から聞いていますと穏やかに微笑んで出迎えられた。約束した通り、連絡をきちんと取っていてくれていたようだ。
出だしから躓かずに済んだのはいいものの、正式な客人として出迎えられてしまうと時間を取られてしまう。
案の定、応接室に通されそうになり丁重にお断りする。話は聞きたいが雑談をしたいわけではない。
比叡は、身分を偽っている身の上だ。
長く話すほどにぼろが出やすくなる。調べてすぐには虚偽とわからない程度の細工はしておいたが、インターネットに詳しくなかったとしても人生経験は相手の方が上だ。
不動産は周囲に隠すことができない財産だ。今まで、胡乱な輩も寄ってきただろう。それでも詐欺師に騙されることも事業を傾けることもなく、安定した収入を維持していたから、先祖の土地をそのまま所有しているわけで、不明な年寄り扱いするのは間違いだろう。
少なくとも土地の運用においては、比叡よりも詳しい。余計な会話はしない方がいい。
「依頼人が同席していないときに、ご実家に長居するわけには行きませんから。必要なものだけお借りしたら、すぐにお暇します」
「そうですか、ではこちらに。お探しのものはこっちの物置に部屋に纏めておいてあります。全くあいつ、結局肝心なところは人任せなんだ」
後半の家族に対する愚痴は聞かなかったことにした。
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