何度も「あのさ」と切り出そうとした。だけどその度にこれを聞かされた森重はどうするんだ、困るだけだろうと口を噤んできた。それももう限界が近かった。
「…あ、っ…ちょ、待てって……んっ、」
押し倒されたベッドの上。もちろん準備だって終えているし、身体は森重を欲しているのに、心が置き去りだ。
「……やめろ…、なぁ、おねがい、だから……っ」
ぽろぽろと溢れた涙に森重の目が大きく見開かれ愛撫の手が止まる。
「泣くほど嫌だった?」
「ちがっ…!」
それは違うのだ。誤解されることだけは避けたくて諸星は伸ばした腕を森重の首に掛けて引き寄せた。森重は抱き返した諸星の身体を起こし向かい合った。
「どうしたの?」
「いや…。もう大丈夫だから続き、しようぜ」
森重の顔に唇を寄せた。
「全然大丈夫って顔してないんだけど」
森重は先ほどベッドの下に脱ぎ捨てたTシャツを拾って諸星に被せた。
「おいっ!」
「話してくれるまで続きしないから」
「……お前なぁ、」
子どもみたいに拗ねた素振りに呆れた諸星だったが「オレってそんなに頼りない?」と傷ついた表情を浮かべた森重を目にして言葉を失った。
「違うって!ただ…」
「ただ?」
「お前に言っても仕方ねーっていうか…絶対つまんねーから…」
語尾が小さくなっていく。それでも聞かせてと真っ直ぐ見つめられ、諸星はこれまで溜まっていた出来事を語りはじめた。それはもう立て板に水のごとく。
大きなプロジェクトを抱えている上に新人の教育を任された。もちろん断ったのだが聞き入れてもらえなかった。この新人がなかなかに手がかかる。ただでさえ今諸星が置かれているポジションは上からも下からもあれこれ言われて気を遣うのだ。他の後輩のフォローも仕事の一部だし、取引先への営業も手を抜けない。年齢とともに減ってると実感している体力。森重が作ってくれる弁当のおかげでなんとか乗り切っていたが、先週森重が遠征だったためそれが無くなった。そこで張り詰めていた糸がぷつりと切れてしまったのだ。
「大さんが大変なことに気づかなくてごめん」
諸星の変化に気づかなかった森重は自分を責めた。
「……謝んなよ。お前は何も悪くねーよ」
森重はもっと過酷な環境に身を置いているのに。それでも自分をここまで思ってくれている。そんな器の大きさにまた涙が出た。
「話してくれてありがとう。でも何もできないって悔しいね」
「黙って最後まで話聞いてくれたじゃねーか。それで十分なんだよ!わかったか?」
諸星はベッドの上で胡座をかいて背を丸めた森重を抱きしめた。(サイズ的には抱きついた形だが)
「また週明けから弁当あるよ」
「……ありがとな」
額をこつんと合わせて笑い合えば自然と触れ合う唇。熱を上げていく身体に、置き去りにされていた心が重なって森重の全部を受け入れた。
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