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めめた
2026-06-12 23:07:47
4735文字
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優しさを愛と言うならば(柳そじ)
年齢操作(高2×高1)
※中1時の木曽路の身長を160cm辺りと仮定しています。
※雲明に正体不明の相手がいる前提です。
性交がしたい木曽路と、許さない柳生の話
馴染みの喫茶店は人も疎らだ。目の前の雲明は二つ目のカステラパフェを半分ほど減らしている。一つ目のパフェが届いてから、いや、それよりも前の注文を終えてからずっと、木曽路の言葉に反応を返さないでいた。
「雲明さ〜ん!」
こうして木曽路が話を中断して雲明に呼びかけるのも、もう数回目である。
高校一年生、秋の入り口。高校生大会も近付いてきているのに、なんとも馬鹿げたことで悩んでいる、とは思う。
「柳生先輩、やっぱ俺じゃ駄目なのかな
……
」
柳生が中学校を卒業する日、木曽路と柳生は晴れて付き合うことになった。もう恋人になって二年近い。
木曽路の悩みとは、柳生とそれらしい触れ合いをしていない事だ。触れ合うだけのキスをして、ハグをして、手を繋ぐ。そんな触れ合いはあるが、木曽路は思春期の、好奇心も旺盛な男児だ。もう一歩踏み込みたい。
しかしながら、木曽路がそうやって触ろうとすると柳生はあからさまに拒否をするのだ。木曽路が中学生だったころにはまだ早いと言われ、では高校生になったのだからと試みてもやはり、まだ早いらしい。それも柳生は至極真面目な顔と態度で拒否するのだから、木曽路は項垂れるしかない。
「雲明は、そういうこと無い?」
「カステラパフェひとつ」
雲明は空になったパフェグラスを前にしながら、追加の注文をする。店員が去ってから、木曽路はじろりと睨まれた。
「木曽路」
「えっ、は、はい!」
どうせまた睨まれて何も言われずに無視だろうと思っていたが、予想に反して雲明はようやく木曽路に向けて言葉を発した。
「大切な人のそういう話は、言いふらすものじゃないよ」
「うっ
……
」
確かにそのとおりだ。焦ってデリカシーのない事を聞いてしまったことを反省して、雲明を見る。
テーブルに置かれた新しいカステラパフェに手を付けようとした雲明は、持ち上げた腕を下ろしてから改めて木曽路を見た。
「そうやって言いふらされるから、柳生先輩も断ってるんじゃない?」
「ううっ
……
!」
雲明の言うことはご尤もで、木曽路は何も言い返せなかった。弁明の余地もない。
話は終わりとばかりに、雲明は三つ目のカステラパフェに手を付けた。
木曽路は自分でも思っていた。考えないようにしていたが、人気者の柳生が自分と本気でそんな関係を望むわけがないと。自分とそんな関係になって、雲明の言うように言いふらしでもしていたら、きっとそのことは柳生の汚点となるのだろう。
柳生の判断は間違いでは無いのだ。一人で舞い上がって、焦っていただけ。失敗する前に気がついて良かったじゃないか。
木曽路は視界のどこか遠いところで黙々とパフェを減らしていく雲明を見ながら、深い思考の中に沈んでいく。
「木曽路、柳生先輩とちゃんと話をしたほうがいいよ」
ごちそうさま、と手を合わせた後で、雲明は遠いところを見る木曽路に声をかけた。
ちょっと言い過ぎたかもしれないと思うものの、そもそも柳生が悪いのだ。木曽路が求める答えを告げればいいだけなのに、こうして悩ませて、雲明は巻き込まれている。
柳生も少しは焦ればいい。雲明は少しばかり、意地悪だった。
カステラパフェはしっかりと木曽路に奢ってもらって、雲明と木曽路はそれぞれの帰路についた。
——
話したいことがある。
そんな要件で予定を取り付ければ、柳生は木曽路を自宅へ招いた。
大きな家の、広い部屋。その気は無いのに自室へは呼ぶのだから、柳生の気持ちは本当に分からなかった。本当に、ただの後輩としてしか見られていないのでは、と思いながらも、キスはするのだ。距離感のおかしい先輩でしかない。
広い部屋に鎮座する大きなベッドを一瞥して、木曽路は控えめにソファへ浅く腰掛けた。身体の大きな柳生を支える、大きなベッドが木曽路は好きだったが、それももう迷惑だったのかもしれないと思えば近付く気にもならない。
目を閉じて、ゆっくりと開く。
ローテーブルを挟んで正面に座した柳生は、いつも通りの様相で木曽路をみていた。
「あの
……
」
時間を取らせるのも良くないと、木曽路は早速本題を切り出した。こうなっては全て悪い方へと考えてしまう。
ローテーブルに出されたお茶が、部屋の照明を反射していた。
「すみませんでした」
どうやって伝えようかと悩んで、最初に出たのは謝罪だった。
柳生に罪悪感を抱かせない、最適の言葉を選んで、慎重に、せめて良い思い出になるように。
「俺、もう充分に良い思いさせてもらいました」
明るい部屋にきたのは間違いだったかもしれない。木曽路は頭の片隅で思った。
「だからもう、おしまいにして下さい。今まで、」
「おい」
聞き慣れない低い声が木曽路の言葉を遮った。
「それ、やめろ」
おそるおそる柳生の顔を見れば、木曽路の前ではしたことのない、怒りに満ちた目をしている。
「そ、それってどれですか?」
努めて明るく言い返すと、柳生は己の手で目を覆った。その手が離れると、目つきは少しだけ和らいでいた。
「違う、悪い
……
そうじゃなくて
……
」
柳生にしては珍しく言い淀んでいた。
木曽路は困らせることを言ったかと発言を振り返るが、どんな顔でどんな事を告げたか、ついさっきのことなのに記憶には残っていなかった。ただただ、重たい感情だけが木曽路の中にある。
「まず言っておくが、俺はお前と別れる気は無い」
逡巡の後、柳生は断言した。先ほどとは違う、硬さの中に優しさを含んだ声だった。
「それで、なんでそんな事思った」
あの時から、初めて人前で弱音を吐いた日から、そうだった。柳生に言われるとどうにも嘘がつけない。真っすぐに見つめてくる目が、静かな声が、怖がらずに曝け出せと言っているようだった。
「柳生先輩は
……
俺と仕方なく付き合ってるのかなって」
「好きでもない奴と付き合うほど俺がお人好しに見えるのか? 他は」
柳生は実にハッキリした人物だ。嫌なら嫌というだろう。けれど懐に入れた相手には優しい。木曽路は自分が、柳生の懐に入れられている自覚はあった。だからこそ、今の状況が柳生の優しさ故のものだと思えたのだ。
「俺に嫌なところがあって、我慢させてるのかもって」
「
……
してないし、すぐ我慢するのはそっちだろうが
……
他にもあるな?」
木曽路の言葉を、柳生は淡々と否定していく。
取り繕うのは得意なはずだった木曽路は、柳生の前ではそれが上手く出来ない。簡単に見抜かれるほど、表情はずっと歪なままなのだろう。
「お、俺と
……
セックス出来ないって
……
」
「それは
……
まだ早いって言っただろ
……
!」
柳生の視線が今日初めて狼狽えた。右往左往としたそれは、木曽路にもハッキリと嘘をつかれているのだと分かってしまった。
「まだって! じゃあいつなら良くなるんですか
……
?」
良くなる事なんて無いだろうと、木曽路は答えを知っていながら聞いてしまった事を言い終わってから後悔した。
いっそ、柳生自身に性欲が無いタイプだと、そう言ってくれたら納得できる。無理に迫ることももうしない。けれど言葉を濁して逃げるのは、つまり木曽路とはしたくないだけなのだと思わせた。
「
……
ッくそ!」
柳生は声を荒らげて、勢いよく立ち上がった。肩を揺らした木曽路はそれを見られたかもしれない事に怯えた。
身長、体格、力、それらに訴えられると木曽路は柳生には敵わない。暴力なんて振るわれたことは無く、木曽路に触れる柳生の手はいつだって慎重で、優しかった。
それでももう別れを切り出したのだから、優しくされる理由も無い。
ローテーブルが足でずらされて、お茶が揺れて溢れたのを見た瞬間、木曽路の身体は宙に浮いた。
「うわぁ!? なに!?」
予想もしていなかった行動に木曽路は反射で声を上げたが、頭が後ろに回されて柳生の表情は見えない。
太い両腕がしっかりと支え、短い距離を安定感のある足取りで運ばれて、座り慣れた場所に下ろされる。木曽路は咄嗟に柳生を見上げようとしたが間髪入れずに肩を押され、結果的に何もせずとも柳生の顔を正面に見る事になった。
「え
……
?」
「やっぱ
………
」
逆光で柳生の表情はよく見えない。顔を反らした拍子に柳生の長い髪が肩から滑り落ちてくる。
「
……
すまんな木曽路。俺の問題だ」
「俺じゃ駄目なんでしょ?」
柳生の横顔を見ながら、木曽路は思ったよりも冷静な声が出て驚いていた。心臓がバクバクとうるさいのが、一層虚しさに拍車をかける。
「いや、逆
……
というか
……
」
この体勢でいる理由が分からなくて、木曽路は横に垂れた柳生の髪に目をやる。サラサラと艶めいた、美しい髪に触れるのは好きだったが、今はもう手を伸ばす気にもならない。
「加減が、出来ないだろ
……
!」
再度、真っすぐに見下ろした柳生の顔は真剣だった。
「こんな
……
ちっさくて軽い奴相手に手出せるわけないだろうが! お前、俺が普段どれだけ
……
っ加減してると思ってやがる!」
「え、え
……
?」
至近距離で放たれた吐露は真剣そのもので、木曽路は事態が即座に把握できなくなって、意味の無い声を漏らす。
一拍置いて、木曽路はハッとした。
「ちっさくて軽いって俺のこと!?」
「お前以外に居ないだろ」
「いや俺、百七十以上あるんですけど
……
筋肉だってついてるし
……
」
出会った頃ならまだしも、木曽路だって身長は伸びている。サッカーを続けていて、筋肉量だって増えた。同時に柳生の身長もまた伸びていたが、木曽路が小さくて軽いと思う者など居ないだろう。
「知らん。俺にとっちゃちいせえし軽かった」
「お、横暴だ
……
!」
ベッドに背を預けて重なり合った状態で、木曽路と柳生はいつもの調子を取り戻し始めていた。
「いいか木曽路、俺はお前を手放す気は無いからな」
「う
……
」
力強い目は、それが真実で譲る気は無いと雄弁に語る。
見惚れてしまった木曽路に構わず、柳生は半開きの口を塞いでから、上体を起こした。
「あのぉ
……
」
傍らに座したまま、木曽路の頭に手が伸ばされるた。それを喜んで受け入れながら心臓が落ち着いてくると、次々に疑問が浮かんでくる。
「なんだ」
「柳生先輩が優しく触ってくれてること、俺、知ってます」
「! おう
……
そうか」
ゆっくり呼吸をしながら、高い天井を見つめる。
「でも俺は、手加減しなきゃいけないほど弱くないですよ」
頭を撫でる手が止まったのを感じて、木曽路は起き上がる。柳生の顔は、相変わらず自分よりも高い位置にあった。
「それと」
「まだなんかあんのか?」
力いっぱいに握られた拳が目に入って、木曽路はそこに手を重ねた。
「あの
……
そんなに強く
……
擦るんですか
……
?」
おそるおそる、だった。想像すると股間部が縮み上がりそうだったのだ。
「ハァ!?」
突然大きな声が響いて、木曽路は目を見開いた。
「おま、木曽路お前
……
マジか
……
?」
柳生も目を見開いている。驚く理由が分からなくて木曽路は真剣に頭を働かせたが、なんの意味もなかった。
「やっぱ、まだ早いな
……
」
「どういうことですか!」
柳生の態度に納得がいかなくて、木曽路は腕に縋り付いた。暗い気持ちは晴れて、心なしか視界も明るくなった気がする。
柳生は木曽路を振り払わずに、空いた腕で抱き締めて、今度は自らがベッドに背中を預けた。
それも決して荒々しくは無い動きだったのが、木曽路は今さら照れくさくなって、迎え入れられた胸元に熱の増した顔を埋めた。
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