AmexAmexxx
2026-06-12 21:34:48
2089文字
Public FF14
 

出会いとこれから


 何が起きたのか、理解できないまま突っ立っていた。
 あちこちで起こる爆発、暴走しているとしか思えない機械兵。あちこちで悲鳴が上がって、人々が逃げ惑っている。自分も逃げなければと思いながら、足が竦んで動けない。上から大きな瓦礫が降ってきて、ああ、潰されるんだ、と認識したその瞬間。

「危ない!」

 体を包んだのはきらきらと美しく輝く光。その光に阻まれて、瓦礫が霧散した。欠片ひとつぶつからなかったものの、腰が抜けてその場にへたり込む。こちらに走ってきたのは、薄い水色の髪に真っ白な肌をした、白い角と鱗を持つ見慣れない種族の小柄な女性。

「怪我はない? 動ける?」
「た、たぶん」

 差し伸べられた手を握れば、その手はひんやりとしていた。ぐ、と助け起こされて、様子を確認した女性はうん、と小さく頷いた。動ける、と判断したのだろう。

「急いで逃げて。気を付けてね」
「あ、ありがと」

 礼を言う頃には、彼女の視線は既に違う方向を向いていた。爆発音、また悲鳴が聞こえる。躊躇なく走り出した背中は、振り返らない。
 その姿が、鮮烈に脳裏に焼き付いた。

―――

「で! で! あの人どうしてんのかなーと思ってたら! アルカディア出てて! 大暴れだったじゃないですか!」
「あ、あのねチェル、毎回言うけど、近いってば」
「いやーもう、まさかまた再会できると思ってなかったし! 絶対この人僕の運命の女神さまだ! って確信しちゃって。アルカディアのあねさん、マジかっこよすぎて抱いて……! って感じで! 」
「タタルぅ……
「はいはい、冒険者さんにお触り禁止でっすよ」

 石の家にて。
 カウンターに座っていたレインズの隣、大興奮の様相でレインズとの出会いを語るチェルは相変わらず距離感がおかしい。思わず近くにいたタタルに助けを求めると、ぐい、とその背の裾を引っ張ってくれた。はあい、としょんぼりしながら言うことを聞く辺り、既にタタルの手中らしい。
 ソリューションナイン育ちのチェルは、エオルゼアのことなど何も知らない。それどころか、ソリューションナインの暮らしに慣れている彼にとって、エオルゼアの暮らしはかなりのカルチャーショックだったようだ。不便だと騒ぎながらも、何もかもが新鮮なようで、毎日楽しそうに過ごしている。現在は剣術士の修行に勤しんでいるようだ。「冒険者さんを守るナイトになりたくないでっすか……?」というタタルの誘いにあっさり乗ってしまったらしい。結果として石の家に出入りしているので、チェルとしては一石二鳥という気持ちだったのだろう。

「ていうかチェル、そのあねさんっていうのやめてほしい……
「え、だめすか」
「何かちょっと、いや、かなー。レインズでいいよ」
「いやそんな! あねさんを呼び捨てなんて! そんな! そういうのはやっぱ、ベッドの中で……!」
「殴られたい?」
「ひえ、すんません……。えーでも何か、あねさんはあねさんって感じで……

 腕を組んで、ううん、と困ったようにチェルは唸る。彼の中ではすっかりその呼び名で定着してしまったのだろう。レインズとしては、その呼び名はどうしてもヤ・シュトラのことを考えてしまうので、できれば変えてほしいと思ってしまう。彼女にとって、その呼び名はきっと特別だ。
 ――しかし、何度チェルに出会いの話を聞いても、そんなことあったかな、と考えてしまう。
 あのときはばたばたしていたし、一人一人を覚えていられるような状況ではなかった。ミルクティーブラウンの長髪に、紫に近い青の瞳。桜色のメッシュはレインズに一目惚れした後に入れたと聞いたので、当時は入っていなかっただろう。元々の髪色も違う可能性はあるので、そのせいで思い出せないのかもしれない。

「あ! じゃあれーさん! れーさんでどうすか!」
「まあ、それならいいよ」
「じゃあれーさん! へへー、僕だけの呼び名って感じでいいすね」
「え、友達に私のことれーさんって呼ぶ人いる……
「えー!? じゃあ他の」
「何だ、賑やかだと思ったらレインズとチェリ坊か」
「サンクレッド、ウリエンジェ」

 きい、と扉が開いて、石の家に入ってきたのはサンクレッドとウリエンジェだ。どこかへの情報収集から帰ってきたのだろう。むう、とチェルが眉を寄せてカウンターから立ち上がる。

「チェルだって言ってるだろ、このチャラおじ! チェリ坊って呼ぶな!」
「喚くなよ、チェリ坊」
「だーかーらー! その呼び名は! 男の沽券に関わる! マジで!」
「また始まりましたね……
……ねえウリエンジェ、私が知らない間にサンクレッドとチェル、仲良しになった?」
「サンクレッドは面白がっていると思いますよ」
「だよね」

 涼しげな表情でチェルの相手をしているサンクレッドは、いつもと変わらない。チェルがムキになって噛みついている光景に、レインズはウリエンジェと顔を見合わせて肩を竦める。賑やかな声を聞きながら、カウンターに置いたままのドリップコーヒーに手を伸ばした。