夏は太陽が大きく見える気がする。それが海に反射してるんだから、きらきらして当然だ。浜辺が鉄板みたいに熱いのも頷ける。隣ではレオが鉄板相手にそばを踊らせてソースの香りを立たせてる。もうもうと上がる湯気はいつ入道雲になっても可笑しくない気がした。奥ではエマが客に焼きそばやラムネ瓶などをきりきり配膳している。屋根の下だが汗が流れている。それなのに花でも添えるみたいな涼しい所作だから、流石だ。
自分は外に面した所で、浮き輪の貸し出しをしながら、何かあったら海に飛び込めるようにしている。海まで行かずとも、喧嘩なんかが起これば、それを始末しに行く。海の用心棒も兼ねていると言って良い。
その脇では、水道水から長いホースを引いた長身の男が、ホースの口を窄めて上から海水を落としてやっていた。帰宅する人だけでなく、子供が集まって、ジャックの周りではしゃいでいる。
あいつそういうとこあるんだよなあ。カリスマ性って言うのか。対したことしてないのに、いつの間にか人を集めている。
この海の家だって、調理しているレオが店長のように仕切っているが、オーナーはこいつだ。自分達も、ジャックの人脈だと言える。
「うわっ。」
後ろから冷たいものを首に当てられた。
フード越しとは言え、気配もなく近寄られてこの温度差は驚く。
「どうぞ。」
後ろには案の定と言うか、冷えたラムネを持ったオーナーが、至極楽しげにこちらを見下ろしていた。ラムネはありがたくいただく。
ビー玉を瓶の中に押し込むと、しゅわりとしたラムネの鳴き声が囁く。喉を鳴らして飲み下せば、ひやりと甘い。
一口飲んで問う。
「おまえは?」
「いただきました。舐めますか?」
「いや今は……って言うかおれも今飲んだんだから分かんねえよ。」
「ふふ、同じ味の口ですね。」
「……だから今そういうこと言うな。」
冷やっこい肌の男のはずなのに、簡単に茹るように火が通る自分。夏のせいだ。
「じゃあ今年も花火の間、ここに来てくださいね。終わるまでずっとキスしててくれて良いですよ。」
こいつ、こっちがキスしたくて堪らないもんだとばかり思ってやがるな。別にそんなんじゃねえ。そんなん少しだけだ。
そもそも、そうは言うが花火は打ち上げじゃない。ただの手持ち花火だ。そりゃ毎年好評だが、視線を上に集められるわけじゃない。それでも断れない。抗えないなら、やっぱり夏のせいにしてしまおう。
今はまだ、海の家の親子の声と、軒先に吊った風鈴の音が近くでする。夜は冷えてくれと、熱くなる自分の温度のために、願った。
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