たくとろ
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#rylkweek2606 Day4「修学旅行」

リコが最終決戦後に学校に戻ったifです。

 セキエイ学園3年生のビッグイベント、修学旅行。学園に戻ってから、長らく冒険に出ていなかったリコはこの時が来るのをとても楽しみにしていた。
 行き先はアローラ地方で、しまめぐりをはじめとしたアローラ特有の文化を学ぶことを目的としている。
 飛行機が滑走路を走って、徐々に空へと浮上していく。地に足がついているのに体が浮くような不思議な感覚。飛行船で旅していた頃が懐かしい。
「楽しみだね〜」
「うん! どんなポケモンがいるかなあ」
「リージョンフォームのポケモンがいっぱいいるらしいね! 地域料理とかも楽しみだなあ……マラサダ早く食べたい!」
「うんうん! ご飯も楽しみだね! あとマンタインサーフィンとか……!」
「だねえ。それから……リコ、久々に会えるんでしょ?」
「! うん」
 リコは手に持った旅行のしおりを見つめる。一日目と二日目、四日目は予定が細かく決められているが、三日目は各々好きに過ごしてよいことになっている。クラスメイトと共に観光するのがセオリーだが、リコはここでライジングボルテッカーズの仲間たちと共に過ごすことにしていた。
「電話は時々してるけど、直接会うのはほんとに久々で……早く会いたいなあ」
「リコいっつもうずうずしてるもんね! 授業中もたまにぼーっとしてるし」
「えへへ……学校も楽しいけど、やっぱり冒険したくなっちゃうんだ」
 冒険へのトキメキはいつだって無くならない。卒業したらまたみんなと。毎日のように思い描いている。
 一日目は夕方に出発した。アローラとの時差を考慮して、飛行機の中で仮眠をとることを前提としているのだ。アローラに着くと、真っ白な太陽が暖かく出迎えてくれた。
 この日はアーカラ島で説明を受けて、しまめぐり体験を行なった。三つの試練に分かれて挑戦し、優秀な者はしまクイーンのライチとの勝負もある。リコとアンは試練を上手くこなしてその権利を獲得。他の生徒たちも大盛り上がりのバトルを見せた。
 夕方、夜までの自由時間。リコとアンはブティックにやってきていた。
「アローラの服は半袖多いね〜!」
「うん。どれもかわいい」
「じゃあリコ、始めよっか」
「? なにを?」
「明日の服選びだよ! 久々に会うんでしょ? ロ・イ・と」
「っ!!」
 いたずらな笑みを向けられ、リコの頬は赤らんだ。首をブンブンと振って息を吐いた。
「会うのはみんなとで、もちろんロイだっているけど……
「久々に会うんだし、かわいいって思ってもらいたいでしょ?」
「それは……うん。でも、デートでもないのにあんまり気合い入れたら変に思われないかな……
「そんなの誰も思わないって! ロイのこと抜きにしたってオシャレした方が楽しいじゃん?」
……そうだね! どれにしようかな〜」
 笑顔で服を選び始めたリコを見て、アンも微笑む。二人は気になった服を片っ端から選んで試着していく。ようやく選び終えた時、気づけば全体集合まであと少しだった。二人は急いで会計を済ませてブティックを後にした。



 翌日。リコはアンと共にライジングボルテッカーズのみんなと約束した集合場所に来ていた。あと十五分でみんなが来る。アンと話していると、空から声がした。
「おーい! リコー!」
「ロイ!?」
 前に学校に来た時のように、ロイは空からタイカイデンに掴まって現れた。途中で飛び降りて、リコの方を向くとにっこり笑う。なんだか前より少し背が伸びたような。リコの心臓が少しずつ高鳴る。
「リコ! 久しぶり!」
「ロイ……久しぶり! えっと、約束の時間、まだ、だよね?」
「へへ。リコに早く会いたくて、先に来ちゃった」
「そ、そっか……
 早く会いたくて。ロイのことだし、きっと深い意味なんてない。けれど、分かっていても鼓動は速くなってしまう。
「久しぶり〜ロイ。相変わらず元気そうだねえ」
「アン! 久しぶり。アンも元気そうだね!」
「まあね〜。それで、どう? 久々に会ったリコは」
 ロイはリコの方を向いた。水色のフリルブラウスはリコの肌を手の甲まで包み、首元で花のネックレスが輝いている。茶色のショートパンツはリコの白い足をより引き立てている。足元まで見ると、白いサンダルがまぶしく光り、視線を上に向けると紅潮した顔でチラチラとロイの様子を伺うリコの瞳と目が合った。
「ど、どうかな……
……! 似合ってる! すごく! その……かわいいよ」
「ありがとう……! よかった……
 互いに顔が赤い二人を、アンは満足げに見つめる。まるで初デートのカップルみたいだねというちょっかいは、さすがにダメかなあと胸にしまう。
 照れ合って言葉が出ないリコとロイ、それを見て楽しむアン、しばらく無言が続いているとライジングボルテッカーズの仲間たちが合流した。
「みんな久しぶり!」
「久しぶり。修学旅行はどう? 楽しい?」
「うん! 昨日は島クイーンのライチさんと勝負したんだ!」
「んだそれ! オレサマも戦いてえ!」
 一気に賑やかになった。この感じ、懐かしい。リコは冒険の日々を思い出して笑った。
 いつものハンドサインを交わして、彼らは今日の冒険をスタートした。シェードジャングルでナゲツケサルの群れを見たり、海でナマコブシを投げたり、ポニの大渓谷からの景色を眺めたり、色んな場所を巡って、彼らはたくさん笑い合った。
 あっという間に夕方になり、リコとアンの集合時間が迫る。アーカラ島へと戻る船の上、リコが夕陽を眺めていると、隣にロイがやってきた。
「リコ、今日はありがとう。久々に会えて、冒険できて、すっごく楽しかったよ!」
「ロイ……ううん、こちらこそありがとう。予定合わせてくれて……ロイやみんなと一緒に色んなところに行けて、ほんとに楽しかった」
 リコはロイに笑顔を向ける。夕陽に照らされた笑顔は、どこか切なさを孕んでいる。瞳を見ただけで、ロイはそれを察した。
「僕、今日ほんとに楽しみだったんだ」
「え?」
「リコが学校に戻って……それは仕方ないし、リコが戻ってくるまでにもっと成長するぞ! って思っても、やっぱり寂しくて、会いたくて、声が聞きたくて、そばにいてほしくて、上手くいかない日もたくさんあったんだ」
「ロイ……
「それで、今日リコが隣にいて、一緒に冒険して、ずっと絶好調だった。もっと一緒にいたい。このままリコのこと連れて帰りたいくらいだよ」
 こんなに、こんなに。ロイがいっぱい想ってくれていた。同じ気持ちだった。今日の楽しさで覆って胸にしまおうとした気持ちが、どんどん前に押し出されてくる。
「明日からちゃんとやっていけるかなってちょっと不安だよ。だから、お願いしていい?」
「お願い?」
「ああ。まずは、毎日電話したい。電話できなくても、今日何があったかたくさん話したい」
……! うん! 私もしたい!」
「よかった。あと……卒業して戻ってきたらさ……
「うん」
……僕の気持ち、全部聞いてくれる?」
 ロイの優しい瞳は、奥底で力強く燃えていた。なんて答えるかなんて、決まってる。
「いいよ。私も、ロイに伝えたいことがあるから……聞いてくれる?」
「ああ。もちろん聞くよ」
 リコとロイは小指を絡めて見つめ合った。その指にも激しく響く鼓動は、お互いにどっちのものか分からない。でも、お互いの言いたいことはもう分かり合っていた。