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Hizuki
2026-06-11 22:33:05
1967文字
Public
あんスタ[零薫他]
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光の華を咲かせて
【あんスタ】零薫。手持ち花火をする2人の話。何を見るか、誰と見るか。
寮に着く前に、スマートフォンのロックを外して立ち上げたのは、ホールハンズではない方のメッセージアプリだ。仕事以外の個人的な連絡を取る時に使っていて、登録している相手はそこまで多くない。探し人の名前を見つけてタップすると、メッセージを打ち込んだ。
『まだおきておるかや』
送信すると、既読はすぐに付いた。
『よければげんかんにおいで』
仕事の後に少し寄り道をしていたら、思っていたよりも帰りが遅くなってしまった。明日の仕事が午後からだということは知っていたから、きっとまだ起きているだろうという見込みもあった。先程と同じように既読が付いたのを見て、スマートフォンをポケットにしまう。返事はどちらでも構わない。しばらく待ってみて姿を見せなければ、部屋に引き上げようと考えながら、玄関前の階段に腰を下ろした。
「お~い、零く〜ん?」
ガチャ、とドアが開く音に続いて、遅い時間を考慮した控えめな声で自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「ここじゃよ、薫くん」
声が聞こえた方に顔を向けると、声の主は驚いたように自分の側に置いたそれを指し示す。
「って、どうしたのその荷物?」
「今日の現場の近くで花火大会があったんじゃよ。一緒にやらんかえ?」
荷物のビニール袋の中から、手に触れたものを一つ取り出した。何種類かの手持ち花火ががセットにされた、ファミリーサイズのものだった。
寄り道の理由はこれにある。休憩中の雑談で近所で花火大会があるという話が出て、仕事が終わってからスタッフ達とそれを遠目に眺めてから解散となった。打ち上げ花火を見るのは難しくとも、手持ち花火であれば寮でもできるのではと思い立ち、そのままの足でバラエティショップを覗いてきた結果がビニール袋の中身だった。
「
…
まさかこれ全部花火?」
「色々あるんじゃなぁと思って、つい
…
」
「え~?二人でやるにはちょっと多すぎない?」
ビニール袋を挟んだ隣に屈んだ薫くんが、その中身を覗いて驚きと呆れを含んだような声を上げる。特設の売り場が組まれ、子供向けのものから大人まで楽しめそうなものまで所狭しと並んでいた。色々と手に取り、会計を済ませてみれば店の一番大きなビニール袋いっぱいになっていた、というわけだ。薫くんとやりたいと思って買ってきたものではあるが、多少冷静になった今見れば、薫くんがそう言うのも無理はない。返す言葉もなく、苦笑いを浮かべることしかできなくなっていると、すっと薫くんが立ち上がった。
「とりあえず、蝋燭と水入れたバケツ持ってくるね」
火を点けるためのそれと、消すためのそれだった。
「
…
見てたら俺もやりたくなっちゃった」
薫くんが時折見せる、あどけない少年のような笑顔は本当に眩しい。月が昇っている時間だというのに、薫くんのそれは太陽と重なる。
「
…
お願いできるかえ」
一瞬言葉を失って、依頼の言葉を続けると、薫くんは一度姿を消した。買ってきた花火の中から二人でやるのにちょうどいいだろう量のものを出して、戻りを待つ。
「お待たせ~」
ご機嫌な様子で戻ってきた薫くんが手にしていたものを地面に置いた。蝋燭に火を点け、花火の外装を開ける。一本ずつ手に取って、順番に先端を炎に近付ければ、溢れ出した色の違う光が二人の側を照らした。
「
…
綺麗じゃな」
「うん、綺麗だね」
ぽろりと零れた感想を薫くんが拾ってくれた。地面から30センチほど離れたところで弾けている花火は、見上げていたものよりも小さなものだ。けれど、こちらの方が好ましく思えるのは、隣にいるのが薫くんだからなのだろう。
「今度さ、晃牙くんとアドニスくんも呼んでみんなでやろ?」
「うむ、そうじゃのう」
「でも、こんなにあったら四人でやってもまだ余っちゃうかも」
「そうしたら、また薫くんとやればいいじゃろ?」
「ふふ、そうだね」
そんな話をしながらやっていた一袋分の花火は、あっという間になくなってしまった。最後の線香花火の火の玉が落ちたのはほとんど同時だった。片付けは自分の方で買って出た。部屋に戻る薫くんを見送ってから、荷物とそれらを持って中に入った。
UNDEADのグループメッセージに薫くんからの花火のお誘いが流れたのは翌日のこと。二人からも前向きな返事が返ってきた。日付はまだ定まらないものの、楽しみな予定はいくらあってもいい。きっと賑やかな楽しい夜になるだろうと思いながら、ベッドの側に置いた花火に視線を向けた。
…
一体どこから話が伝わったのかは分からないが、後日蓮巳くんからあの時間に花火をしていたことについての説教を薫くんと揃って受けることになったのはまた別の話。十分すぎる説教から解放されてから、薫くんと顔を見合わせて笑ったのだった。
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