三毛田
2026-06-11 21:48:05
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85 【85/素直になれない】

85日目
気づいていなかったから

 多分、本人に悪気はないってわかっている。
 俺も子供っぽい対応をしたって自覚はあるし。
「素直になれない俺が悪いのかな?」
「丹恒に比べたら、穹の方が素直でしょ。はい、あーん」
「あー」
「ほら。今だって」
 俺のおやつ皿からクッキーを一枚とり、なのは口元まで持って来て。小麦とバターのいい匂いに、素直に口を開ける。
 やっぱりパムの作ったものは美味い。
「だって、美味しものが口元に来たら口を開けたくなるだろ?」
「分からなくもないけどさぁ」
「集中してる時の丹恒は、口元に持っていくと食べてくれるけど」
「それ、アンタが差し出すからでしょ」
「そうか?」
 気にしたことはない。
「というか、ウチがそんなことしたら白けた目を向けられるだけだよ。姫子とヨウおじちゃんはもちろんだけど、パムもわざわざ食べさせるなんてことしないし」
 ぱちぱちと、瞬きしてなのを見る。
「食べさせないと、倒れるだろ?」
「それは自業自得ってこと。体調管理は、自分の管轄。それを怠って倒れたら自分が悪いってこと」
 わかる? ってちょっとだけ諭すような表情。
 そしてついでに、鼻を押されて。
「わかるけど、俺はやだなって」
 甘いってことは理解してる。でも、それと感情は別っていうかなんていうか。
「アンタが世話を焼きたいなら、それでいいよ。ウチは止めない」
「うん。それがいいと俺も思う」
 何で丹恒の世話を焼きたいのかって考えたんだけど、ただただ放っておけないっていうのが正しい気がする。
「穹。三月ちゃんもおったか」
「パム! どうしたの?」
「丹恒に、食事用のショートブレッドを持っていってくれるか?」
 綺麗にラッピングされた袋を渡されて、受け取る。それと同時に、新しい皿を渡されて。
「これじゃ」
 ショートブレッド? って思っていたのが伝わっていたようだ。
「ん。ちょっとしょっぱいけど美味しい!」
「食事用じゃからな」
「うん。俺、これ好き」
「また焼いておこう」
「お願いします」
 包みを持って、資料室へ。
「丹恒、入るぞ」
……ああ」
「パムから届け物。今すぐ食べるか?」
「ああ」
 今度はすぐに返事が。包みを開き、口へと持っていけば素直に口開いて。
 もごもご動く頬が可愛い。
 可愛い?
 何だろうか、この感情は。
「穹?」
 唇の端にショートブレッドのカスをつけた丹恒は、次をくれと口を開けていて。
「ん!?」
 少し抱き寄せて、その口に噛みつく。
「そっか。好き、なんだ」
 呼吸をするために口を離し、ボソッと呟いたら腹に衝撃。