平坦で何を考えているのか分かりづらい、あるいは直ぐに食べ物に向かって行く食いしん坊と思われている傭兵だが、誰の目にも明らかに不機嫌な時もある。夢見が悪かったらしい。
そういう時は、相手が傭兵に限らず、誰も近寄って行かない。傭兵だから余計に、という事もあるだろうが。誰だって進んで殴られたくはない。だからこういう日の傭兵の周りには、対戦の救助や治療でもない限り、誰も寄り付かない。
ただ一人の霧の狩人以外は。
「どぉ〜しました?そんなにご機嫌斜めで。怖い夢でもみたんですか?わたしは出演してました?出演料頂戴して良いですか?逆に子守唄でも歌ってあげましょうか?ふふふ〜ん、如何です?それともお腹が空いたのですか食いしん坊さん?それとも今は大好きな食事も喉を通りませんか?それならそれで、苦しんでえずいているとことを見せて?おまえさっきから呻き声一つ上げませんねぇ〜?我慢勝負でもします?わたしはしつこいですよ?わたしがしつこくされるのは嫌ですが。」
滅茶苦茶鬱陶しい狩人だ。
傭兵はゆさゆさ体を揺すられながらも、なんの反応もしない。周りからすればその無反応すら恐ろしい。
だが狩人、リッパーには分かっている。自分の虫の居所が悪いだけで、他者に原因がない場合、その他者を痛め付けるような事はしないと。傭兵は原因を突き止めて対処する方が、彼の好みだと。
ただ、この場合、夢をとっちめる事はできないが。だから彼はこうして鬱々としている。
それはそうと、しつこくされるのは傭兵だって嫌いだ、鬱陶しい事も。
だからそのタイミングでリッパーは言葉を潜める。
「お茶を淹れたのです、あったかいですよ。隠し味を入れたから、何を入れたか当ててみて、勝負しましょう?」
絶妙なタイミングだ。
「どうです?」
「……分かった。」
傭兵を遠巻きに見ていた者達は、対戦以外で、今日初めて彼の声をその時聞いた。
気儘だが救助狩りのタイミングを外さない狩人は、俯いた傭兵を掴み上げ、ずるずると引き摺って行った。生き残っていようとも、恐怖に抗う気力がなければ、その体は狩人の意の儘だ。
だが、今はそれで良いのだろう。きっと、お茶の良い香りのする椅子へ座らされるに違いない。
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