三毛田
2026-06-10 22:16:34
1081文字
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84 【84/手をつないで帰ろう】

84日目
君の手が好きだと気付く

「ん!」
 差し出された手を、そっと握る。
 俺が素直に握ったのが珍しかったのか、それとも嬉しかったのか。驚いたように目を丸くした後、ニッコリ笑う。
 アンカーまでの距離は、そこまであるわけじゃない。
 でも、こうして手を繋いで歩くのが穹は好きなようで。
 普段なら断るのだが、今日は気分がよかったので素直に繋ぐ。
 ああ、でも。
 彼と手を繋ぐことは嫌いじゃないのだと改めて。
「今日の丹恒、素直で可愛いなぁ。普段から乞うならいいのに」
「俺は常に素直だが、お前からしたら違うのか」
「えー? どこが?」
 怪訝そうに、少し眉を寄せて俺を見る。
 何でそんな表情を浮かべるのだろうか。
「まあ、いいや。手を繋いでしまったので、列車の俺の部屋に行くまで離しません」
「そうか」
 穹が楽しそうであれば、嬉しそうであればそれでいい。
 そう思っていたのだが、少しだけ欲が出てしまった。
「ただいま~!」
「おかえり。荷物なら届いておるぞ」
「本当? 早いな~」
「台車に乗っておるから、後で取りに来るとよい」
「はーい」
「丹恒もおかえり」
「ああ、ただいま」
 列車に着いた俺たちを出迎えたのは、パム。
 いつものことだが、パムの声を聞くと安心する。
「今日もオマエたちは仲が良いな」
 俺たちの手を見て、ニコニコとしている。これもまあ、いつものことで。
 何故手を繋いでいる? という疑問もなく、当たり前のように受け入れられているのだから不思議だ。
 パムだけじゃない。姫子さんやヴェルトさん、三月だって俺と彼がこうして手を繋いでいることは当たり前の光景だと言わんばかりの表情で見てくる。
「丹恒、ありがとう」
「いや」
 挨拶をして回り、穹の部屋に着く。そっと離れていく手に、名残惜しいと思ってしまった。
「荷物を持ってきたら、もっと一緒に居るから」
 俺の気持ちを感じ取ったのか、彼も名残惜しいと思ってくれたのか。
 頬を撫でてから部屋を出ていって。
「っ」
 今何をされた? 当たり前のように受け入れていたけれど、なぜあんなにサラッと頬を撫でられる?
 驚きすぎて、時間差で羞恥心が。
「丹恒ただいま~。あれ? どうしたんだ?」
 思わず座り込んでしまった俺を、戻ってきた穹は不思議そうに見てきて。
「お」
「お?」
「お前の、せいだ」
「とうとう意識してくれましたか~?」
 俺の反応にむふー。と、鼻の穴を広げながら嬉しそうに。
 それから荷物を置くと。
「抱きしめていいか?」
「どうしてそうなる」
「丹恒が好きだから。可愛すぎて抱きしめたい」