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たくとろ
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#rylkweek2606 Day2「パニックホラー」
映画の中身で筆が乗っちゃって、予定と話がだいぶずれました()
「リコーこの映画知ってるー?」
画面の向こうのアンから画像が送られてきた。そこにはベトベトンっぽい見た目の怪物が大きく描かれている。
「なんか
……
怖いね」
「だってホラー映画だもん! 最近ロトムフリックスで配信されて、学校でも話題になってるんだ〜リコも見てみなよ〜」
「でも私
……
こういう怖い映画ってあんまり得意じゃないし
……
」
「ただ怖いだけじゃないから! 恋愛モノとしてもいいんだよ〜」
恋愛モノ。リコの興味が少し向いた。察したアンはニヤリと笑った。
「興味あるならさ〜頼りになる人と一緒に見たら怖くても大丈夫なんじゃない? ロイとか!」
「ロ、ロイと二人で
……
?」
「え〜? 二人でなんて言ってないよ〜でもリコが二人で見たいならいいんじゃない?」
リコの顔が熱くなった。穴があったら、いやもう今掘った墓穴に埋まりたい。リコの心は恥ずかしさでいっぱいだ。
「それじゃ、見たら感想教えてね〜! あと、ロイと進展したかどうかも!」
「もう! アン!」
「へへへ〜! バイバイ!」
最後までいじられた
……
でも、アンなりに応援してくれている。ロイを誘ってみよう。リコは早速ロイの元に向かった。
その日の夜、ミーティングルームでリコとロイ、そしてラウドボーンやマスカーニャ、彼らのポケモンたちが集まっていた。
数時間前、リコがロイを映画鑑賞に誘った時、ロイは言った。せっかくだから夜に見ようよと。その方が雰囲気出るからと。
そして現在、部屋の照明も消して、プロジェクターの光だけが彼らの明かりだ。
「ロイ
……
やっぱり電気つけない?」
「絶対この方が雰囲気出て楽しいよ!」
「そうかもだけど
……
」
「ニャ、ニャ」
「リムリム」
リコの両脇にくっついたマスカーニャとブリムオンがリコの手を優しく叩く。後ろを向くと、グレンアルマが右腕を上げてポーズを取った。みんながいるなら大丈夫。リコは覚悟を決めた。
「じゃ、映画流すよ」
「う、うん」
ロイがスマホロトムをタップすると、ロトムフリックス、ポケウッドのロゴが続けて流れて映画が始まった。
始まりは、とある研究所。そこでは、ベトベトンとベトベターを対象とした特殊な実験を行っていた。画面に映るのはポケモンのシルエットが描かれた帯がついた瓶。中には多種多様な色の液体が入っている。研究員たちはそれをベトベトンたちに取り込ませていた。
それからいくらかの月日が流れた夜のこと。研究所の近くにある学校。その廊下を歩く男がいた。男の頭から帽子が落ちる。窓から差し込む月明かりが男の顔を照らした。ドロドロと溶けた男の顔を。
「キャー!?」
「びっくりした
……
」
「だよね!」
「いや、リコの声で
……
」
ロイに冷静に返されて、リコの顔は赤くなった。
「でも、今の怖いとこでしょ!?」
「確かに怖いとこだったけど、リコがあんまりおっきい声出すから
……
」
「ごめん
……
」
「あはは。気を取り直して続き見ようよ」
翌朝。たくさんの学生が登校してきた。いつも通りの景色、いつも通りの授業。主人公のアリアは相棒のマリルと共に、いつも通りの学校での時間を満喫していた。
三限、体育の時間。校庭で生徒たちはポケモンと共にマラソンに励んでいた。アリアがマリルに合わせてゆっくり走っていると、クラスメイトの少年、レインが相棒のライボルトと並んで隣に来た。
「相変わらずちんたらしてんなあお前ら」
「いーじゃん別に。レインこそ、ライボルトに合わせてもらってんでしょ」
「へっ! オレはこいつが全速力でもついてってやるよ! いくぞライボルト!」
頷いたライボルトは一気にスピードを上げて、前の生徒やポケモンたちを追い抜いていく。レインも雄叫びを上げながらライボルトを追いかける。そんな彼らを見て、アリアはマリルと笑い合っていた。
決められた時間を走り終えて、生徒とポケモンたちはゆっくり休憩タイムだ。アリアもマリルを抱えて地面に座り込み、ボトルの水を飲んでいる。すると隣に汗だくのレインが座った。
「どうよ
……
ライボルトにだって
……
負けてねえぜ」
「息切れヤバ
……
無理しすぎだよ」
「無理なんて
……
してねえ
……
」
「ハイハイ。ちゃんと水飲んでおきなさい。ほら」
「ん? えと
……
いいのか?」
「なにが?」
「
……
なんでもねえ」
レインはアリアから受け取ったボトルの水を、口を離して飲んだ。アリアはそれをぼーっと眺めている途中、体育館の裏からふらふらと歩いてくる生徒を見つけた。
「先生、あの子」
「ん? おーい! 大丈夫か? 保健室行くか?」
体育教師はふらふら歩く生徒に駆け寄って声をかける。そして、異変に気づく。
「なんだ
……
その腕
……
足も
……
」
ドロドロとした両腕。人と同じ形をしながらも、徐々にドロドロと溶けていく両足。紫色の肌。狼狽える教師の肩を掴み、顔を上げた。
「ベタァァァァ!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
人の形を保っていないドロドロに溶けた歪なおぞましい顔。その顔や体からいくつもの触手が伸び、教師の体を取り込んでいく。
「誰か
……
!! 助け
……
!!」
教師の体が完全に飲み込まれた。一部始終を見ていた生徒たちは悲鳴を上げて校舎の中へ駆け込んでいく。
「何
……
あれ
……
」
「おい! 逃げるぞアリア!」
「マリマリ!」
「う、うん」
教師を取り込んで二体に増えたドロドロの怪物は、次々に生徒を襲って数を増やしていく。焦る生徒たちは校舎の扉を閉めようと動く。しかしまだ外にいる生徒は開けようと必死だ。そして怪物の魔の手は生徒のポケモンたちまでも取り込んで数を増やし、次々に迫り来る。
「どうしよう
……
」
「こっちだ!」
レインはアリアを引っ張って昇降口から離れ、廊下の窓ガラスの前に来た。
「ライボルト、ワイルドボルト!」
窓ガラスを割って、ライボルトは校舎の中に入った。開いた穴にアリアとマリルを押し込み、レインも校内に入った。
「一旦上行くぞ!」
「うん
……
」
やけに静かだ。映画に集中していたロイがふと目を横にやると、リコがとても怯えた顔で震えていた。
「リコ、大丈夫?」
「うん
……
まだなんとか。マスカーニャたちもいるし。でも、ここからどうなっちゃうんだろう
……
この子達、無事に逃げ切れるかな」
「きっと大丈夫だよ。ライボルト強そうだし!」
「もー、そんな理由?」
でも、確かにあのライボルトなら怪物も倒してしまうかも。ちょっと安心してリコは顔を映画に向け直した。
上へ逃げたアリアとレインには困難が立ちはだかった。怪物がいるのは外だけではなかったのだ。逃げ込んだ生徒が階段を上る中、上からも生徒たちが来た。怪物と化した友を引き連れて。
「アリア! こっち行くぞ!」
「うん
……
!」
レインはアリアの手を引いて廊下をひた走る。向かった先は音楽室だ。扉を開くと、中には誰もいない。彼らは角に置かれたピアノのそばにへたり込んだ。
「ここなら遠いし、早々あいつらも寄り付かねえだろ
……
」
「そうだね
……
でも、なんなのあいつら
……
ポケモンなの?」
「ベトベトンみたいだったけど、人を飲み込んで仲間にするなんて聞いたことねえ
……
とにかく今は休もうぜ。ただでさえマラソンでクタクタなんだ
……
」
「うん
……
」
それから数時間後、楽器が鳴らなければ静かな音楽室は、そこに隠れるアリアたちの吐息の音だけが響く。怯えたマリルを撫でながら、アリアは自分にも大丈夫だと言い聞かせる。外の様子は分からない。いつまでここにいればいいのだろう。もしかしたらずっと。
「! 伏せろ!」
レインに押さえつけられて体がうつ伏せになった。どうしたのか聞こうとした直後、それは目に入った。窓の外を垂れていく紫色のドロドロ。その表面を一周してきた目玉が窓の中を覗き込んだ。窓が全て、覆われていく。たくさんの目が中を覗き込む。身動き一つ取れない緊張感の中、アリアの体に押しつぶされたマリルが弾け飛んで、壁にぶつかり跳ね返り、ピアノの鍵盤の上に乗った。鈍い音が鳴り響く。
「ベタァァァァァ!!」
「まずい! 逃げるぞ!」
「マリル! こっち!」
怪物たちが次々と窓ガラスを割って音楽室の内部に入ってくる。アリアたちは廊下に逃げ出した。しかし廊下にも怪物が大量にいた。
「ライボルト! ほうでんだ!」
電撃を解き放つと、怪物たちが怯んだ。その隙に彼らは逃げる。どこに逃げればいいのかも分からないから、ただひたすらに。
しかし、どこに行っても怪物だらけ。ついに校舎を抜け出したアリアたちだが、もうどこにも頼れる友や教師やポケモンはいない。二人と二匹だけが、ただ逃げ惑う。
「ニャ〜
……
」
「マスカーニャ、眠い?」
「リムゥ
……
」
「ルマ
……
」
「みんなもう眠いんだね。ありがとう。先に部屋で寝てていいよ」
マスカーニャたちはリコの頭を撫でてミーティングルームを後にした。
「リコは戻らなくていいの?」
「うん。怖いけど
……
最後まで見る」
「そっか。じゃあこっちにおいで。マスカーニャたちの代わりに僕がそばについてるよ」
「あ、ありがとう。お言葉に甘えて
……
」
リコはロイの隣の席に座ろうと椅子に触れた。ロイはその手を掴んで、リコを自分の膝の上に乗せた。
「ロ、ロイ? な、なんで」
「この方が怖くないかなって思ってさ」
「た、確かに怖いのはマシだけど別のドキドキが」
「さ、続き見よ」
ロイはリコの体を優しく抱きしめて映画の続きを再生した。
どこに行けばよいか分からず、ただ怪物から逃げるアリアたち。逃げ回る途中、アリアが一つ思いついた。
「レイン! 確か、災害時の避難用にヘリポートがあったはずだよ! あそこは高いし、ヘリを呼べれば逃げ切れる!」
「そうか! よし行くぞ!」
二人は急いでヘリポートに向かって走る。校舎から離れた坂道の上に立つ塔。その屋上にヘリポートが設置されている。坂道を走っていると、プロペラが回る音がした。
「どうしてもうヘリが
……
」
「きっと誰かが生き残ってあそこまで行ったんだ! 急ぐぞ!」
二人は坂道を必死に駆け上がる。ライボルトのほうでんとマリルのバブルこうせんで道を阻む怪物を薙ぎ払いながら進み、ついに塔の中に入った。エレベーターは停止していた。重い足を持ち上げて、なんとか塔を登る。そして、三階に辿り着いた時、見知らぬ男が怪物に追い詰められていた。
「ひいー! 来るな来るな
……
くそっ、私のせいじゃない
……
私のせいじゃ
……
!」
男は彼らの目の前で飲み込まれた。アリアは近くに落ちていたカバンを拾った。中には大量の書類とパソコンが入っていた。
「まずい! こっち来る!」
「逃げなきゃ
……
!」
怪物たちはアリアたちを標的にして襲いかかる。一歩でも止まってしまったら、飲み込まれる。そして、ついに彼らは屋上に出る扉を開いた。
「やった
……
! レイン、さあ!」
「ダメだアリア
……
オレはここまでだ」
「え?」
アリアが振り返ると、レインの足は怪物に掴まれていた。そして、どんどんその手は体へと伸びていく。
「ライボルトを頼んだぜ
……
あとオレ、お前のこと
……
」
「レイン! いやああああ!!」
アリアの悲鳴が響く中、レインは最後の力で扉を閉めた。涙するアリアをヘリの運転手が呼ぶ。レインの意思を無駄にしないため、アリアはライボルトとマリルと共にヘリに乗り込んだ。
ヘリに乗って数時間後、声が枯れるほど泣いたアリアは拾ったカバンの中にあった資料をふと手に取った。そこに書かれていたのは様々な実験の詳細。あの怪物たちの正体だった。特定のポケモンのDNAから作り出した液体をベトベターやベトベトンに取り込ませるとどうなるのか。その結果として生まれたヘドロゾンビ、それがあの怪物たちであった。
アリアは怒りに震えた。そんな実験に巻き込まれたなんて。そのせいで、レインは。手からこぼれた資料の中の一つがアリアの目に止まった。それは、希望。ヘドロゾンビを元に戻せる可能性。揺れ動くヘリの中で、アリアは固い決意をした。
「う
……
っ
……
」
「リコ?」
「ごめん
……
感動しすぎて」
「うん。いいよ、そのままで」
「ありがとう
……
ロイ」
しばらくして、リコとロイはミーティングルームを出た。真っ暗な廊下をラウドボーンが照らし、リコはロイにひっついて歩く。
「怖い?」
「うん
……
ヘドロゾンビ
……
出てこないよね?」
「あはは、大丈夫だよ。ベトベトンは起きてくるかもしれないけど」
リコの部屋まで送る途中、リコが言った。
「映画の最後、みんなでキビキビしちゃったときのこと思い出したな」
「あったね。あの時は怖かったなあ。でもなんで?」
「だって、ロイと一緒になんとか逃げ切れてると思ったのに、ロイも知らないうちにお餅食べちゃってたんだもん
……
怖かった」
「あはは、ごめんね。もうそんな思いさせたりしないから」
「絶対だよ?」
「ああ。リコのこと絶対一人にしないよ」
「
……
うん!」
数日後、アンに感想を伝えたリコの笑顔はとても輝いていたという。
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