せつが
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きっと、澄みわたる夏空よりも

野球部伊織に脳を焼かれたぽんきちの産物。ポストまとめおぼえがき。なので骨組みだけ。
ろくすっぽ野球知らないで書いています。
ああ、それはもう、どうしようもない……と、眩しげに白球を見送る伊織が書きたくてやった。
バッターとピッチャーの二刀流。二天一流だけに。左打席でもあり、メジャーのあの方をパロっているのだと思いました。
タイトルはパロ。

マウンドの土は夏の陽射しを受け熱を持っていた。
靴底からそれが伝わってくる。
伊織は汗の伝う額を拭った。
甲子園最終回スコアボード二対一。
あとひとりで夏が終わる。
そのひとりが、打席へ向かって歩いてくる。
大和健。
伊織の背後2塁には、先の打席で背負った走者が、ホームへと帰る機会をうかがっている。
打たれれば逆転サヨナラ。守りきれば優勝だ。
肌を刺す空気の中、伊織はマウンドに立っていた。
大和は打席に入るとスパイクで土をならし、軽くバットを振った。その動きひとつひとつを伊織は知っている。
同じユニフォームを着ていたころからずっと見ていた相手。進学でわかれてから三年。この三年、追いかけてきた相手。
大和が構えた。
塁は空いている。歩かせる手もある。凡打で詰まらせ抑える術もある。
だが、それでは立ち行かぬと思った。
彼を相手に策で勝ったとて、伊織はそれを、生涯忘れることができないだろう。
だから。
伊織は見る。
取らねばならぬ。彼から、ヤマトタケルから三振を。
一球、二球とカウントが進み、いよいよというところで、伊織は捕手のサインに首を振った。一度ならず二度。
勝つためならそれでいい、それが正しい。そんなことは理解している。
伊織が望んだ球種に、捕手が目を瞠ったのが見えた。
諦めた捕手がミットを構えたところで、上体を起こしつつ心の内で謝罪する。
……我ながら修羅じみている。
だがこれしかなかった。バッターボックスから微塵も揺らがぬ構えのまま、ひたと見据えてくるヤマトを前に、伊織からいくつもの候補が消えた。
最後に残ったのはただひとつ。
空をきらせる。
これしか、選びようがなかったのだ。
振りかぶる。左足が上がり、すべての音が消える。腕がしなり、食いしばる奥歯に負荷がかかる。掌中にある縫い目の感触が、指先から離れてゆく。

きぃぃん——

よく知った、硬く、どこまでも透明な金属音。
これまで幾百、幾千と握り、投げ放ってきた硬球は、その音とともに、伊織の手の届かぬところへと飛んでゆく。
高く、高く高く、夏空に弧を描いてボールは遠くなってゆく。
静まり返っていたスタンドから、地鳴りのような歓声が湧き上がる。メガホンが激しく打ち鳴らされ、球場が揺れるよう。
逆転サヨナラ! 優勝! そんな言葉が、夏よりも熱いスタンドに満ちていた。
なのに、伊織の耳には聞こえなかった。
嵐のような歓声の中、伊織が耳にしたのは、きぃんというひとつの音だった。
その音だけが、いつまでも耳奥で響いている。
ヤマトの打った白球を、マウンドに立った伊織は見送っていた。
腕を下ろすことも、膝をつくこともなく、バックスクリーンへと吸い込まれ見えなくなるまで、ずっと。

という伊さんの夏だったとさ。
おしまい。
このあと伊はチムメンにもみくちゃ歓迎されるせばとですね、目が合うかもしれないし合わないかもしれない。
リトル→リトルの上の中学のやつ、までは一緒で、高校進学でそれぞれ別の強豪校へ、かなーと考えていますが、これに整合性があるかはわからん。
帰り際、引き上げる伊に向かってヤマトが「野球をやめるな!」って遠くから大声で呼びかけるわけですよ。
ほんで数年後、メジャーでふたりは同チームになって、今度は同じ勝利へと向かうっていうわけ。
ヤマトとの対決ですっきりした伊くんは、夢は一度でいいなって、チームとしての勝利を選べる男になる。