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どうもこんにちは、山野詠子です。「むかごの冬」あとがきとなります。
自分が小説上で表現したいことはすべて本編中にこめてありまして、これ以降に書いてあることは裏話、言い訳レベルの蛇足、そういうことばかりですので、作者のパーソナルなどに触れるのは危険(作品が楽しめなくなるとか、そういう意味で)だなあと思った人はあんまり読まないほうがいいかもしれません。その予想はたぶんめちゃくちゃ当たっているからです。
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しかしあとがきとか裏話
……みんなはどんなことが読みたいですかね、と友達に聞いてみたら「作業環境、執筆中に聴いていた音楽とか
……」と言われて、なるほどな~と思ったんですが、なんか、イメソンとか作業のお供の音楽とかって、人のそれを教えてもらえると嬉しいんですが、いわゆる
……なんていうの?「内臓」じゃないですか。
好きな音楽って、すごく個人的でプライベートな部分で、それを晒すっていうのはだいぶ弱いところを見せる感じがして、ドキドキしてしまうんだよな。
だから普段はあんまり書かないんですが、でも今回は書くことにします。
広橋真紀子さんというピアノ奏者さんの「THE PIANO IN DARKNESS」というアルバムがあって、これをずっと聴いていました。
この曲、もう何年も前に骨折して入院しているとき、寝苦しさから逃れたくてiTunesで曲を探しているときに偶然見つけたもので、見る限りこの広橋さんという方は普段癒し、リラクゼーション系のピアノをたくさん弾いている方っぽいのですが、このアルバムはタイトル通り結構ダークで寂しさを感じる曲が多くて、それが自分の精神をいい感じに刺激してくれるものの、あんまり深入りもしてこない感じで、暗い作品を作るときの精神作り? によく聴いていたりします。
あと世界的に有名なビョークの、これまた超有名な鬱映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のアルバムというべきかなんというかの「Selma Songs」もめちゃくちゃ聴きました。これも意識して「暗いなー」ってものを書くときに聴きがちです。
でもこれは曲が好きというよりは映画を観たときの「うぎゃ~」の感情を引っ張り出して、自分を負の方面に奮い立たせようとしている感じな気がする。作業用BGMっていうよりは精神に鬱エナジードリンクを注入するある種のドーピング行為ですね。
……だけど、実は、この「むかごの冬」は、あんまり書いていて「うわっ、鬱だ~」とはなっていなかったりしました。後述。
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記憶が正しければまだ超暑かった時期、八月の半ばとかにいきなり「あ~なんかまた小説書きてぇな~」ってなって、イラストのふくろう先生に作画資料と、だいたいこんな話になると思います! というストーリーとキャラ設定の雑書きみたいなものを送りました。
ふくろう先生はとても手が早い方ですので、すぐにキャラデザが上がってきて、それから実際のイラストのラフも相当早くいただけて、九月にやった大阪の即売会で許可を得てラフ画+あらすじのペーパーを頒布しました。
今そのペーパーを見ると、大まかなストーリーは同じだけども、ちぎるパパ・枡野蕊のセリフが結構変わっていたりします。蕊は実際に書いてみるまで安定しなかったな
……いやそれはまたあとで。
先にキャラ絵があるという超恵まれ状態で、よっしゃ書くぞ~となったんですが、九月中は仕事が詰まっていてあんまり着手できず、しっかり腰を据えて書き始めたのは十月頃だという認識。
その頃は一ヶ月あれば余裕で初稿を上げて、なんなら推敲まで終わらせられるだろうと余裕綽々でした。考えなしのアホ。いやでもアホはアホなりに考えていた。
というのも、この作品、最初は「嵐の夜の色情狂たち」と同じくらいの原稿枚数を考えていて、そうするとだいたい五万字くらいで、余裕じゃん。と思ってたんですね
……。
実際は九万字を超えてしまって、初稿が上がったのは十一月の十日を過ぎた頃でした。それも初稿で、実はこのあとがきを書いている時点でまだ推敲が残っています。うわああ。
◆
企画の出発点はまあ「おねショタ寝取られを書こう」「パパに寝取られるやつエロそう~」みたいな安直さでした。
せっかく新作を書くからには、変わったことをするか、以前よりも進歩していないとつまらないなとは思っていて、ぼんやりと目的を設定してはいました。
そのうちひとつは「よりがるまにやピクシブっぽいエロを書こう」。
前々作の「嵐の夜~」もそれに挑んでいるんですが、今回は、ストーリーはまあまたニッチなのはさておいて、濡れ場の描写はよりチューニングして「がるまにやピクシブでスケベな小説を読む人」の好みにしてみたい、という考えがあった。
でもそれは「そういう人に売りたい」という感じともちょっと違って、単に自分がやってみたい、やれるか試したいというアレですね
……売りたいならおねショタ寝取られとかは、もうスタート地点を間違えてるし
……。
よりがるまにっぽいエロってなんだよ。と言いますと
……えーっと、「嵐の夜~」はピクシブに濡れ場のサンプルをふたつアップしていて、時間が経った今ではどっちも同じくらいの数、ユーザーさんからブックマークをしてもらえているんですが、掲載したばっかりの頃は結構露骨に閲覧数やブックマークの伸びが違いました。
その理由も、まあ独自研究で、なんか違う力が働いていたのだとしたらすみませんなんですが、わりとわかりました。
片方、閲覧数が多いほうには「クリ責め」のタグが入っていたんですね。
この作品を読んでくれる方のだいたいは「あ~ね」ってなってくださると思うんですが、そうでもない人にご説明しますと、女性向けのネットエロ小説の中で、たぶん一番人気なんじゃないかな? っていうタグ(要素)なのですね。
クリ責め/クンニ/寝バック/中出し
あたりは、絶対伸びるとは言いませんけども、含まれていると閲覧してもらえる可能性が上がるんじゃないかと
……。
それで、まあクリとか乳首とかの突起を責める行為は、山野も好きでエロく描写できる自信があった(どうでもいいこと・山野はちんぽを責める描写の場合も亀頭とか先端をいじめてるとエロくていいんじゃないかと思っているところがある。突起は弱点。弱点を責めるのはエロい)。 そういう要素が好まれるならガンガン入れよう! という自分への挑戦でした。
実際、なかなか「視覚から入ってくる想像しやすいエロ」になっているんじゃないかと思います、今作の濡れ場は
……。
それをキャラクターが台無しにしていく小説なんですけどね。
これは「嵐の夜の~」のあとがき冊子でも書いたんですが(すみません、現在入手困難。DL販売版にはあとがきがついてこないんです)今作もまた「最後まで読むとシコれなくなる小説」になっちゃいましたね。しかも嵐の~のおっくんと満子よりもその傾向が強いです。人殺しちゃったからね。
でもじゃあお前はそういう、エロそうなものをシコれなくする、嫌がらせみたいなことをしかったのかっていうと違って、私は本気でエロいことをしていた奴らが、シコりに支障が出るような人間くさい、書き割りではない感情や行動の爆発をさせることが本当に素敵だし、美しいし、書きたいと思って書いた。
◆
エロシーンと言えば「嵐の夜の~」でやった「最初に濡れ場を書いてしまう」という反則技をですね、実は今回もちょっと試みたんです。
ストーリーの流れに沿って書いていくと、結構しんどいかもなってシーンとエロがサンドイッチになっているので、先にエロだけ書いてしまってどうにかパッチワークするという手段。
今回はおもいっっきり失敗しました。せっかく書いた一万字くらいのエロシーンがひとつ、ほぼまるごとボツに。ウギー! でも横着をしようとした自分が悪いです。
なんでそうなっちゃったかというと、蕊のキャラクターを自分自身書くうちに理解していったところが多くて、ガバガバ解像度の状態で書いた濡れ場は、行動も言動も、なんならやってるスケベの内容もなんか違うわ
……という感じで
……。
プロットが後半に行くにつれてどんどん雑になっていったのもよくない。蕊との二回目の濡れ場なんて「太ももコキ クンニおねだり 笑われる バック」みたいなことしか書いてなくて、これはプロットとは言わないだろって感じだった。未来の自分に丸投げしすぎで泣けちゃう。
今作の諸悪の根源である枡野蕊なんですが、なんか
……一応最初からコンセプトは「なんか太宰治的な負の色気があって(あとセックスがうまくて)女にモテる」「父親には百億パーセント向いていない」「ちぎるのことは憎んでいる」「むかごに対しての感情は遊び、復讐、嘲笑以外にない」というふうに決まっていて、ブレてないんですが、なんか、そこまで決まっていても書くのが難しかった。
でも楽しかった。自画自賛というか手前味噌なんですが、寝取り男として蕊を見た場合、あんまり寝取られモノにはいないタイプの男が書けたような気がします。ナイーブで、自分から恥をかきにいく(喘いだりエロ実況したり)タイプのセックスをするヤツ。
そう、なんかわりといい濡れ場が書けちゃったから「うーんこいつをただの寝取り男にするのはもったいないなー」みたいな欲が出かかって、でもなんか書いていくうちに「いや、最低男以外のなにものでもないな」って軌道修正できた。そこはできた。
最初はもっとレイプ、無理強い、弱みにつけ込んで
……みたいなセックスをさせるつもりで、もっと口調も最初から悪い感じだった。
それが意外と柔らかく気持ちいいプレイをするタイプだったから、なんか、う~ん
……となったんですが、書くのを止めて散歩とかしてるうちに「だってセックスがウマいのはこいつの処世術だし
……」「別に女をイかせることくらい蕊にとっては簡単で、誠意でもなんでもないんだよなぁ」みたいに思い直せてよかった。蕊に惚れなくてよかったね山野。
でも蕊とのセックスって、普通に恋人同士とかでしてると思うとすごくエッチだなあという描写が多くないですか?
脚ピン癖がある子に側位や寝バックをしてあげるとか、オナニー見せて、利き手と逆の手でしごくのが気持ちいいと言ってみたりとか。もったいね~。
でも、もったいないのが贅沢なんだよな。こんなラブラブセックスを「してくれる」男が実際はただのクズで、女の欲望につけ込んでいるだけというのが、イイんだよな。むかごの冬的には。
あと、じゃあお前は蕊が気に食わないかというとそうでもない。結構気に入っている。
本当に最低な男だけど、嵐の夜の「満子の兄」とか、転変めちゃくちゃの「ドクター」に比べると、わりと噛んでみるとウマいところのある奴だと思っている。
最初の妻佑月、その後にくっついた琴香、どっちもまあヒドいこと言ってたんだけど、彼なりに所有物としては愛してたんだと思うと泣けてくるね。
あと女に去られたりするたびに奴の中で「セックスがうまいだけの男って、必要とはされるけど愛されはしねえんだなぁ」という絶望がデカくなっていくのだと思うと興奮するね。
私はセックスするたびに傷つく男の身勝手さが、気持ち悪くて大好きだよ。
◆
むかごとちぎるのキャラクターについてと、物語のラストについてなんですが、実はラスト、どうケリを着けるか悩んで、プロットから二転三転しています。
ふたりが一度離ればなれになって、数年後にピンサロで働いていたむかごに
……という展開はずっと不変だったんですが
……。
最初期(ふくろう先生に見せたとき)は、ちぎるがむかごをブチ犯して「僕もう大人だよ」みたいなことを言ってきたのに対して、むかごが内心(ちぎるくん、お父さんに似ちゃったなあ)みたいなことを思ってるとかいう、わりと本当に救いのない話でした。
その後ちょっと考えて、ピンサロで騒ぎを起こしてから場面転換して、数日後、むかごの運転でちぎると一緒に雪の林に入っていき(どうでもいいんだけどむかごの引っ越し先は栃木のイメージ)、裸になるように命じられて、むかごが「あっ、私ここで殺されるんだ~」と思ってたらそこでブチ犯されて、お別れした後の男性遍歴とかを言わされてちぎるくんが鬱勃起したり射精したりして「むかごちゃんを傷つけて宝物にする」みたいな結論に至るものを
……考えてたんですが
……。
うーん
……。
まず雪の中に
……というのは、冬を舞台にしたかったというのもあるんですが、志摩ビデオとかでよく見ていた「雪責め」が大好きで、いつかSMモノとかでやりたいなと思っていたのを入れようと欲張ったんですね。たぶん。
で、自分的にはハッピーエンド
……とまではいかないけど、ちぎるくんに報われてほしいと思っていたので、ちぎるの報われってなに? って考えると「むかごちゃんと結ばれる」なわけで、それを叶えようと思っていたんですよ。
むかごに今まで寝た男について訊ねて「もうおぼえてない! いっぱいセックスした!」とか言われて「ちくしょう! 濃いの出る!」ってなってるのは、エッチだし、寝取られ好き的にもまあ、燃えるのかなって。
あのね、ここまで読んでくださった方はお察しでしょうが「エッチだし
……」「燃えるのかなって
……」とか言ってるのでおわかりなように、もうね、これ全然しっくりこなくて。
なんかね、美しくないんですよ。なんで? って。なんで? ってなる。なにと言われても困るんだけどまったくピンと来なかった。
で、気づいちゃったんですよ。あ、私こいつらをフツ~の「ハッピーエンド」にしたいと思ってないな
……って。
◆
むかごの冬はわりと悲しい話のはず
……だった。
なのに「ご主人さまにあ」とか「嵐の夜の~」とか、もっとさかのぼると「めくとき」とかを書いてるときにあった「嫌だ
……嫌だ
……かわいそうな目に遭わせたくない、逃げたい
……」みたいな気持ちには一切なっていなくて、四章のときもなんかむかごにも蕊にも「哀れだね~~~」って思ってた。ちぎるくんはマジでかわいそうだけども。
それはなんでかというとね、簡単。私はもうこいつらの幸福を諦めているから。こんな奴らに幸福なんていうヌルいものが似合うわけがないから。不釣り合いな幸せほどブサイクなものはない。
小学生のチンポをハメられたがってオナニーし、その欲望を大人の男(小学生の父親)を代用品にして満たしていた女に、「オトナになって彼くんと結ばれました、めでたし」が許されると思うのか? 思わないね。そんなご都合主義のチンポハーレムが書きたかったんじゃない。
じゃあお前は堀井むかごが憎いのか? そんなこともない。私は彼女のような逃げまくる人間にも生きる道があってほしいと心底願っている。
むかごみたいな女の詭弁に、ちぎるのような少年が救われるのも、ずっと書きたいと思っているコンセプトと一致する。
ではどうするかというと、なにもかも手に入れることのできなかった、のみならずすべて奪われてきた枡野ちぎるの犠牲になるべきだと考えた。彼女はただれた膣でちぎるのペニスや精汁を受け止め、一緒に破滅する瞬間に、初めて「意味」を持てるのだ。
むかごは本当につまらない女だが、ちぎるは彼女を代わりのいない宝物だと思っている。ならむかごはそれに応えて、磔にされても許すべきだ。
生まれて初めて愛しい女と結ばれて、精神的に精通してオスの悦びを知った少年の、その快悦の絶頂の瞬間を、永遠にしてあげるべきなのだ。
ちぎるはもうなにも怖くない。だってむかごちゃんがいるから。パパに奪われて、自分から逃げて、勝手に大人になってまた知らない男を咥え込んでたむかごちゃんが、それでも最後に自分を選んでくれたから。
むかごには泣きながらも喜んで、そんなアナーキーさと添い遂げる責任がある。
だからこれは悲しい話でもバッドエンドでもない。おさまるべきところにパーツが揃った、気持ちイイ話だ。そうすることができた。
なので私も後悔していません。読んでくださった皆様ありがとうございます。感謝しています。
最高の装画をくださったふくろう先生、突然解説ください! と迫った私を優しく受け止めてくださった津村しおり先生も、本当にありがとうございます。ドロドロの愛を捧ぐ。
二〇二五年十二月 山野詠子
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