山茶花
2026-06-07 20:46:56
5438文字
Public [シルデュ]サイト限定(健全)
 

Whisper【258SK063】

内緒の話/5100字程度

*シルデュ付き合ってる、恋人設定です
*モブがめっちゃ喋ります、っていうかモブしか喋りません


【スカラビア寮 2年生の証言】
 
 俺、こないだ凄いもん見ちまったんだよ。
 シルバーのことなんだけど。そうそう、ディアソムニアのシルバー。俺さ、カリムを通じてシルバーとは結構仲が良くてさ。
 だから、この間。学園裏の森でさ、シルバーのこと見かけたからさ。なんかまた小動物とかと戯れてんのかなって思って、声かけようとしたんだよ。
 そしたら、アイツ。スッて人差し指を口元に動かして、それで、口をぱくぱくさせてさ。
『し ず か に』
 って、言うんだよ。だから俺、なんか、怯えたウサギでもいるのかと思って、手で口塞いで静かにして、まわりを見たんだ。そしたらさ、シルバーの膝になんか、誰か人がいるのが見えてさ。
 よくよく見てみたら、ソイツ。ハーツラビュルの問題児コンビの片割れで。そうそう、青い髪が特徴的な方。顔のマークがスペードの方だよ。ソイツがシルバーの膝でぐっすり寝てたんだよ。
 シルバーはそのまま、その一年を起こすでもなく、なんかすっごく愛おしくて大事そう~に、ソイツの髪とか撫でててさ。
 俺がじっとそれを見てたら、「まだ、何か用事が?」って聞いてきたから。いや用事ないわ、近く寄ったから声かけただけ、つったら、「そうか」って、また俺に興味なくしたみたいに視線外してさ。
 それで、その膝で寝てる一年が起きてないかを確かめてんの。
 なんか邪魔しちゃ悪いかなーって思って、俺はそれじゃあ、ってそこから去ったから、その後のことは知らないんだけどさ。
 シルバーの奴、あんな顔もするんだなって思ったんだよな!
 で、そのことをカリムとジャミルに話したら、カリムはさっぱりと、ジャミルは剣呑そうに、でも口を揃えて言うんだよ。
『あのふたりは邪魔しない方がいいぜ(ぞ)』って。
 ……いったい俺、どうなるところだったんだろうなあ……

【ディアソムニア寮 1年生の証言】
 
 シルバー先輩は、僕たちディアソムニア寮の1年生から見ても憧れの先輩なんだ。セベクは突っかかってるけど、僕たちは実際、あんなに強くてしっかりした先輩は他にないと思っている。まあ、あの眠り癖だけはいただけないけど……
 そのシルバー先輩が、だ。馬術部の部活中、ふといなくなったんだよ。
 僕はシルバー先輩に憧れて馬術部に入ったからさ。一体どうしたんだろう、理由もなくサボったりするような人じゃないのにって姿を探したんだ。
 そしたら、シルバー先輩は厩舎の裏にいて。
 それで、誰か……ウェアを見るに、陸上部のやつだと思う。ソイツの頭に、自分の上着を被せてやってたんだ。
 まあソイツは、具合でも悪かったのかもしれないな。だから僕はシルバー先輩の手助けをしようと思って、何か手伝えることはありませんか、って声をかけようとしたんだよ。でも、そしたらさ。
 シルバー先輩、その目の前にいた陸上部の誰かを、上着ごとぎゅっと抱きしめて。それで、『誰も近づくな』と言わんばかりに、こっちの方を鋭い目で睨みつけてきたんだ。
 だから、ちょっと……なんていうか、情けない話だが、怖気づいてしまってさ。僕は、そこを離れて。しばらく厩舎の裏に誰も近づかないようにって、人払いしてた。
 そしたらさ、シルバー先輩はしばらくしてから戻ってきたんだけど。
……先ほどはすまなかったな、人払いしてくれていたのか。ありがとう」
 って、僕のこと褒めてくれて。だから、僕、何があったんですかって聞いたんだよ。そしたら、
「俺の、大事な人が苦しんでいた。だから……放っておけなかったんだ」
 って。マジかよ、ってさすがに思ったね、僕は。いや僕はただの憧れで、恋愛とかそういうのじゃないからそこまでのショックではなかったけどさ。僕、実は彼女欲しいし。でもシルバー先輩の恋人? それでなくても、かなり大事なやつ? みたいなのが陸上部にいるんだって思って、どんな奴なんだろうってチラッとそっちを見たよな。やっぱり。
 そしたら、水道で顔をバシャバシャ思い切り洗ってるヤツがいてさ。あ、あのウェアの感じ、さっきのと似てるし、番号とか、もしかして、って思うヤツを見つけて。
 で、ソイツ、同級生みたいだったからさ。僕も何か言うべきか、って思ったけど。大丈夫か、とか。シルバー先輩のなんなんだ、とか。
 でも、やめといたんだよな。シルバー先輩が、結構ウチの寮の奴から、普段の振る舞いとかについて、いろいろと言われがちなの知ってたからさ。せめて恋人くらい、好きに選ばせてもいいじゃないかって、僕はそう思ったんだよ。
 まあつまり何が言いたいかっていうと、僕も恋人欲しいんだよな。
 ……素直でいい子、紹介してくれないか? 年上だと嬉しい。いや、でも……年下の子を守るのも、けっこうイイかもしれないな。あ、これ副寮長には言ってもいいけど、寮長とかセベクには言うなよ!! 特にセベク!! ……なんでって、こんな風に彼女欲しいとか公言してると、高尚な態度を取れって怒られるからな……。やれやれ。困ったもんだぜ。

【サバナクロー寮 2年生の証言】
 
 これ絶対寮長とかラギーには言うなよ!? こんなことがもし寮長にバレたら、八つ裂きにされてパクリと食われちまう……!!
 ええと、だな。オレは、ただ、放課後にさ。廊下を歩いていただけだったんだよ。そうしたら、シルバーの奴がいたんだ。
 まあ、ただ居ただけじゃなっくてさ。なんか、ハーツラビュルの1年生? そうそう、問題児コンビの青い方。ソイツの肩に頭を乗せて、寝ててさ。
 アイツ、後輩の肩まで枕にして寝るのかよって思いながら見てたんだよ。
 で、その後輩の方もすっげえ、力入れたらポキッと折れそうな細腕に見えてさ。あんなんじゃシルバーなんか持ち運べねえだろと思ったから、シルバーを回収してディアソムニアの奴らのところに投げ込んでやろうと思ったんだよな。
 それで、あの青いのに話しかけようとした瞬間。
 シルバーが、うっすら目を開けて、オレのことをめちゃくちゃ睨みつけてきてさ……
 その青いのが、「シルバー先輩、起きてください」って声かけたら、シルバーのやつ、「すまない、寝ていたようだ」って目こすりながら起きてたけど。
 でも、オレは分かってるぜ。アイツ、絶対起きてたね。
 起きて俺のことを牽制してたに違いないぜ。
 ったく、いい迷惑だ。獲物に触れられるのには我慢ならねえタイプかよ、アイツ。オレは親切でディアソムニア寮にシルバーを返してやろうとしただけなのによ!
 ……だけどな、このことは絶対に他言するな。なんでって……分かるだろ! ディアソムニアの人間の気迫に一瞬でも負けたとか知られたら、寮長に殺されかねねえからだよ、絶対に秘密だからな!?
 
【オクタヴィネル寮 一年生の証言】

 僕たちはけっこう、人の持ち物とかをよく覚えているんです。
 ええ、寮長からの言いつけで。誰がどんな趣味嗜好や、弱み……おっと。悩みを持っているか、覚えておけと言われて、ですね。
 それはもちろん、他寮の方でも、先輩でも例外はありません。
 僕は特に、学内でも目立つ方をよくチェックしていてですね。
 最近では、ディアソムニアのシルバー先輩をよくお見かけさせてもらってます。
 彼の上着や、ネクタイなど。皆同じような制服とはいえ、その着こなしや服装などには癖が出ます。例えば我々の商品が衣服ならば、ネクタイピンのお勧めをするだけでも、その衣服についた癖は重要になる、とは寮長の言ですね。
 ええ、本題に入りましょう。つまり、我々はある程度、服装の癖などから誰の服なのかを判断する能力が、他の寮より長けているとも言えます。
 だからこそ気づいてしまったのでしょうが。
 ある日、シルバー先輩のネクタイが、彼自身のものではないように感じました。だから、僕はネクタイがよれているのを直すフリをして、誰のものなのかを確かめようとしたんです。そうしたら、シルバー先輩は。
「気持ちはありがたいが、結構だ」
 と言って、ネクタイに手を触れた僕の手を払い、その申し出を断りました。
 それでもどうにか一瞬だけ見えたネクタイ裏のネームワッペンには、『Deuce Spade』の文字が……
 いやはや、あの様子を見るに、恐らく取り違えではなく、故意に交換しているものだと思われましたね。それに、普段はしっかりと結ばれているネクタイが、よれていた。これは恐らく、そのネクタイの主が結んだものと思われます。
 僕はこれこそ弱みのひとつだと思い、寮長に報告しましたが。「後悔したくなければ、そこには触れるんじゃありません。……握っていい弱みと、触れてはいけない秘密というものは違います」と、逆に僕の方がお説教されてしまいまして。全く、秘密というものの取り扱いは、本当に難しいです。いったい、あの方は何を抱えていらっしゃるのでしょうね。……それで、あなたはこのお話のお代には何を頂けるので? もちろん、対価(しはらい)はお忘れない、ですよね?

【ハーツラビュル寮 3年生の証言】

「誰か、デュースを連れておいで」ってリドル寮長が言うからさ。
 トレイにも悪いが頼む、って言われて。
 デュースのことを探していたんだよ、俺は。
 学園中探し回って、それで。そうしたら、デュースっぽいのは見つけたんだ。
 中庭の木陰、ちょっと茂みに隠れたとこか? そこにデュースはいた、んだけど。ぱっと見、デュースの姿は見えなくて。
 っていうのも、ディアソムニアの、シルバーだな。アイツが、デュースを抱き込んでてさ。
 アイツらが付き合っているっていうのは寮の中のうっすらした噂話で聞いてはいたから知ってたけど、実際目の当たりにしてみると、なんていうか……実感が出るもんだな。
 それで、デュースを呼ぼうとしたんだけど。ちょっと躊躇われたんだよな。
 シルバーの手が、思い切りデュースの腰をがっちりと抱き込んでるのが見えたから。
『おいおい、アイツら。あんな狭いとこで、隠れるように何してんだ……
 って、まあちょっと赤面しちまったんだけど。
 でも俺も、ウチの女王様にお叱りを受けるワケにはいかなかったからさ。
 どうにか勇気出して声かけようとして、近づいてったんだよ。
 そしたらさ、声が聞こえるワケ。
……シルバー、せんぱい……
 って。めちゃくちゃ甘くてとろんとした声になってんの。
 ウチの問題児が。いつもキャーキャーうるさい問題児の片割れが。
 それに驚いちまって、つい、固まってるとさ。
 シルバーの方も、
「ああ……なんだ、デュース?」って。
 めちゃくちゃ甘くて優しそうな、え、お前そんな顔できるんだ、って顔と声して。
 俺たちはそんな関わりもないから、いつも仏頂面で険しい顔してるシルバーしか知らなかったからな。
 それで、デュースの髪とか腰を愛おしそう~に撫でまわしてるんだよ。
 だから、俺、もう声かけらんなくって。
 寮に戻って寮長に「いたんですけど声かけられませんでした……」って報告して。そしたら、「いたけど声かけられなかったって、なんだい? どういうこと?」って事情を聞いてくれたからさ。
 実は、ってシルバーと一緒にいたことを伝えたら、ああ、なら仕方ないね……って寮長は呆れた目をして。シルバーにはボクから言っておくよ、代わりにこれをデュースの部屋に置いておいてって自習プリントみたいなのを渡されてさ。
 俺はそのまま、デュースの部屋にプリントを持っていって。
 そこまで厳しいお叱りもなく部屋に帰れたことに、ホッとしたよな。
 ……それにしても、なあ。確かに、結果的に邪魔しようとしたことにはなってたのかもしれないけど。あんなに俺を睨むことはないよな、シルバーの奴。
 あのままじゃデュースの奴、近づくものすべてを遠ざけられちまうんじゃないのか? ……なんてな。まさか、そこまではしないよな、いくら何考えてるか分からないディアソムニアの奴でもさ。

【ディアソムニア寮 2年生の証言】
 
 ……ああ。聞いている。そうか。案外、俺たちのことはみんなに知られている、というか。いろんな人に、見つかっているんだな。
 それで……それが、どうかしたのか?
 俺が、アイツのことを大切に扱い、抱きしめていることが知られて、何か困ることでも?
 ……ん? 周囲に向けて牽制をしすぎている? ああ、すまない。俺も、これは自分でも悪癖だと自覚はしているのだが。だが、どうしても……我慢ならないんだ。
 俺の前でだけ、笑って、泣いて、怒って、照れて、善がって。たくさんの表情を見せてほしいと、思ってしまってな。
 だから、アイツに触れるもの、近づくもの皆、ひとまず一度は威嚇してしまう。ふっ、良くないな。お前たちの言う通りだ。
 もちろん、アイツの迷惑にならない程度にはするつもりだ。
 だが……俺もまだ、未熟なようでな。しっかりやりきれないときもあるが。
 まあ、そこは……容赦してもらいたい。
 何故って? 決まっているだろう。
 俺はデュースのことを、愛してしまっているからだ。

*おしまい