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lilie_y0527
2026-06-07 19:01:30
7217文字
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【夢小説】主人公はパイロットくん♂【ご注意】
男主人公です。夢小説のつもりで書いていたけど違うかもしれない。お相手はディンです。
新共和国の支給品であるオレンジ色のフライトスーツが、今はひどく重く感じられた。
アウターリムの辺境の惑星。ろくにマッピングもされていない岩だらけの荒野で、俺たちの偵察任務は最悪の結末を迎えていた。帝国の残党兵
……
それも、統率を失ってただ凶暴化しただけの敗残兵の待ち伏せに遭ったのだ。
「クソッ、通信機が死んでる!」
背後の岩肌に身を隠し、ブラスターのエネルギー残量を確認する。残りわずか。乗ってきたXウイングは、あいつらの重火器で既に黒煙を上げている。新共和国の救援が来る可能性はゼロに等しかった。
足音が近づいてくる。1人、2人
……
いや、もっと多い。
俺は覚悟を決め、ブラスターを握り直した。捕まって帝国の残党に拷問されるくらいなら、ここで華々しく散ってやる。
その時だった。
上空から、金属質の鋭い風切り音が響いた。地響きを立てて何かが俺と敵の間に着地する。
巻き上がる砂塵の向こうに見えたのは、夕陽を浴びて鈍く銀色に輝く、ベスカーのアーマーだった。
「マンダロリアン?」
俺が息を呑むのと同時に、彼は動いた。
容赦のない、そして洗練された無駄のない動き。右腕のガントレットから放たれた小さなミサイルのようなものが、誘導音を響かせながら敵の胸を正確に撃ち抜いていく。さらに激しい銃撃戦の中、彼はマントを翻しながらブラスターを連射し、瞬く間に包囲網を壊滅させていった。
圧倒的な強さ。息をすることすら忘れてその背中を見つめていた俺の前に、彼は静かに歩み寄ってきた。
特徴的なヘルメットが俺を見下ろす。モジュレーターを通した、低く落ち着いた声が響く。
「怪我は?」
「あ、いや、大丈夫です。かすり傷くらいで」
とんでもない場数を踏んできた者だけが持つ独特の威圧感に、俺は思わず姿勢を正した。新共和国のパイロットとして一通りの修羅場はくぐってきたつもりだったが、彼の前では自分がまるで新兵のように思えてしまう。
彼は俺を一瞥し、小さく頷いた。すると近くの岩場から跳んできたものが彼の肩に乗った。
「もう大丈夫だ」
ひょこりと顔を出したのは、大きな耳と丸い目をした、緑色の小さな生き物だった。それは俺を見ると小さく鳴いて短い手を振った。緊迫していた空気が、その一瞬でふっと和らぐ。かわいい。
「手伝おう。立てるか」
彼がグローブに包まれた右手を差し伸べてくる。
俺がその手を取ると、グッと引き上げられた。胸の手前まで引き寄せられた瞬間、ベスカーの冷たい質感と、旅慣れた革の匂いが鼻腔をくすぐる。
「あいつらの仲間がまだ近くにいるはずだ。あんたの船はもう動かない。俺の船まで歩けるか?」
「はい、行けます。助けていただいて、ありがとうございました。新共和国の隊員として、お礼を言わせてください」
俺が真っ直ぐ彼を見つめて言うと、威圧感がほんの少しだけ柔らかくなったような気がした。
「気にするな。俺は依頼を果たしただけだ。行くぞ」
彼はそう言うと、俺を庇うように少し斜め前を歩き始めた。その広い背中を見上げながら、俺はフライトスーツのポケットで、まだ少し速い鼓動を刻む胸を落ち着かせようとしていた。
----
アデルファイ基地のバーは、今日も新共和国のパイロットたちの熱気と、独自のブレンド酒の匂いで満ちていた。
パトロール任務を終え、ライトが飛び交うジュークボックスの近くで一息ついていた俺は、ふと、自動ドアが開いた方に目を向けた。その瞬間、心臓が止まったような気がした。
夕陽を反射して鈍く光る、ベスカーのアーマー。
マントを翻し、周囲のパイロットたちの視線を浴びながらも、全く動じることなくカウンターへ歩いていく男。間違いない、あの時のマンダロリアンだ。
あの荒野で命を救われてから、ずっと忘れられずにいた背中だった。新共和国の非公式の下請けとしてアデルファイ基地にちょくちょく顔を出しているという噂は聞いていたが(ヘルメットの下の顔のことではない)まさか本当にここで会えるなんて。
気づけば、俺は席を立って彼の後ろ姿に歩み寄っていた。自分よりも大きな背中に、少し緊張しながら声をかける。
「あの、すみません」
彼は静かに振り返った。T字型のバイザーが真っ直ぐに俺を捉える。彼は無言だった。何を考えているか分からない鋼の仮面を前に、俺の心臓が少し跳ねる。いや、そもそも彼は賞金稼ぎだと聞いた。数え切れないほどの人間を相手にしてきた男が、アウターリムで一度助けただけの新共和国の若造(それもヘルメットも被っていない、大勢いるパイロットのうちの1人)なんて、覚えているはずがない。
「あ、ええと、以前アウターリムの荒野で、助けてもらった者です。新共和国の」
俺が焦って説明を付け加えようとした、その時だった。
「きみは」
モジュレーター越しの低い声が、俺の言葉を遮った。
彼は少しだけ首を傾げ、俺の顔をじっと見つめる。ほんの数秒の沈黙。だが、彼に値踏みされているようなその時間に、俺の耳の後ろが熱くなった。
「あぁ。あの時の」
ヘルメットの奥から、ふっと微かな、そしてどこか呆れたような温かい息遣いが聞こえた気がした。
「新共和国のパイロット。その後、無事だったようだな。船は新しくなったのか」
「あ、はい!新しいXウイングを支給されました。あの時は本当にありがとうございました。ちゃんとお礼もできなくて
……
」
覚えていてくれた。その事実だけで胸の奥がじんわりと熱くなる。俺よりいくつも歳上で、銀河の修羅場をいくつもくぐり抜けてきた男の記憶に、自分が少しでも残っていたことが堪らなく嬉しかった。
彼が少しだけ身を引くと、彼の足元から聞き覚えのあるかわいい声が響いた。
見ると、マントの裾を小さな三本の指がぎゅっと引っ張っている。確か、グローグーという子どもだ。
「やあ、きみも元気だったか?」
俺がしゃがんで目線を合わせると、グローグーは嬉しそうに耳をパタパタと動かした。
「こいつもきみのことを覚えていたらしい」
彼が上から俺たちを見下ろしながら、少しだけ口調を和らげて言った。
「嬉しいな。あの時は、きみもありがとう」
耳をくすぐるとキャと笑い声があがった。本当にかわいい。いつまでもこうしているわけにはいかない。俺は立ち上がって、彼らをテーブル席に促した。
「あの、今日はご馳走させてください。1杯と言わず、何杯でも。その子のおやつも。あの時のお礼と言っては何ですけど
……
」
「あぁ、俺はいい。だが、この子には頼む。ありがとう。その前に一仕事ある」
彼がカウンターを顎で示したのを目で追うと、そこにはこちらを見ているとてもえらい人がいた。しかも頬杖をついて待っていることを態度でこれでもかと示していた。
「わあああすみません!あの、あっちにいるのでいつでも終わったら呼んでください」
慌てて頭をあっちにこっちに下げる俺を見て、彼は微かに肩を揺らしたように見えた。もしかして笑った?茫然とする俺の肩を軽くたたいて去っていってしまった。
1人残された俺はテーブル席に座りながら基地の外のドックに堂々と鎮座しているレイザー・クレストを見つめて物思いに耽るのだった。
---
次の哨戒任務までの待機時間、俺はXウイングの翼の影に腰掛け、支給品の冷えたジュースを飲みながら、広い発着場を眺めていた。
ガタガタと重い金属音を立てて、1台のレイザークレストがドックに入ってくる。それを見た周囲の隊員たちが「おい、マンドーが帰ってきたぞ」とざわめき立った。
俺の心臓が、ドクンと小さく跳ねる。
レイザークレストから降りてきたのは、マンダロリアンだった。マントを軽く翻し、周囲の喧騒などどこ吹く風といった様子で堂々と歩いてくる。その後ろには、カーボン凍結された指名手配犯の特大プレートが2枚、リパルサー・リフトで浮かせた状態で従えられていた。
今日も大活躍だ。やっぱり、すごいな。
アウターリムの凶悪な指名手配犯たちを、彼はいつも1人で(小さな相棒がいるけど)確実に仕留めてくる。新共和国の組織的な連係プレイとは違う、個としての圧倒的な強さと孤高の美しさ。
俺はただの下っ端パイロットで、彼にとってはその他大勢にしか過ぎない。自分なんて逆立ちしてもあの領域には届かないと分かっているのに、彼の姿を追う目がどうしても止められなかった。
フライトーツの胸の奥が、じわじわと熱くなる。なんて格好いいんだろう。少しでも近づきたい。
……
いや、ただ、あのヘルメットの奥にある瞳に、自分を映してほしい。
そんな、新共和国の隊員としてはあるまじき、けれど止められない不躾な視線を、俺は彼に送り続けていた。我に返り、見つめすぎた、と思った時にはもう遅かった。
歩いていたマンドーが、ふと足を止め、正確に俺のいる方向へとヘルメットを向けたのだ。
「っ!」
心臓が跳ね上がる。マンドーのT字型のバイザーが、真っ直ぐに俺を捉えていた。気まずさと恥ずかしさで頭がどうにかなりそうになり、俺は持っていたジュースの缶を落としそうになる。慌てて視線を逸らそうとした、その瞬間。マンドーは、ヘルメットをほんの僅かだけ上下に動かした。
気づいているぞ、とでも言うような、声なき軽い挨拶のような。
それだけだった。彼はすぐに視線を戻し、指名手配犯を引き渡すために基地内へと去っていった。
「うわあ
……
」
引き潮のように緊張が引いた後、猛烈な勢いで顔が熱くなっていくのが分かった。心臓がうるさいくらいに脈打っている。ただ、目が合って、小さく頷かれただけだ。マンドーにとっては、見覚えのあるパイロットにじろじろ見られてたから、なんとなく挨拶しただけという、深い意味なんてこれっぽっちもないだろう行動。
彼は俺の気持ちなんて何も知らないし、気づくはずもない。
「あんなの、ずるいだろ」
俺は両手で真っ赤になった顔を覆い、翼の影に深くしゃがみ込んだ。届かない恋だと分かっているのに、そのほんの少しのファンサービスみたいな仕草だけで、俺の心は簡単に彼に囚われてしまうのだ。恋じゃないのか?なんだ、俺は、ただのファンか?確かにきっと彼のファンは多いだろう。今の俺みたいにじっと視線を送ってしまう輩も多いに違いない。それにいちいちああやってファンサしてるのか?どうなんだ教えてくれマンドー!
赤くなった顔の次は、迷走し始めた頭を覆うしかない俺なのだった。
***
「パイロット。さっきは、何を見ていたんだ?」
基地から戻ってきたマンドーが、ドックの隅にいた俺の前にすっと現れた。
いつもの低い声に、俺の心臓は再び飛び跳ねる。というか彼に出会ってからずっと心臓がジャンプしていてそのうち口から出てくるのではないか。グロいからやめてくれ。頭の迷走と顔の赤みが収まらないまま、俺は勢い任せに言葉を返した。
「い、いや! その、普通にカッコイイなと思って!つい見ちゃいました!!」
あまりに素直すぎる自分の答えに、言った直後で頭を抱えたくなった。何が「カッコイイなと思って」だ。まるでただのファンじゃないか。やっぱりファンなのか?
マンドーはヘルメットを少し傾げ、沈黙した。引かれているんだろうか。恥ずかしさで消え入りたい俺の視界で、彼の肩に乗っていたグローグーが、じっと俺の手元を見つめていることに気づいた。
グローグーが小さな三本の指をこちらへ突き出す。
すると、俺がさっき慌ててベンチに置いた、未開封のほうの缶ジュースが微かにガタガタと震え、ふわりと宙に浮き始めた。初めて見たが、もしかして、噂のフォースだ!
アデルファイ基地の隊員たちの間では、すでに有名な話だった。『マンドーの連れているあの子には気をつけろ、一瞬目を離した隙にスナックを浮かせて盗られるぞ』と、バーで先輩たちが笑い話にしていたのだ。
宙に浮くジュースを気にしながら、俺はマンドー
……
いや、その保護者の顔を見上げた。
「あ、これ、飲んでも大丈夫なら、あげるけど。あの、小さい子どもにこういうジュースって、平気ですか?」
新共和国の支給品は糖分が高めだ。一応確認をとると、マンドーは浮いている缶ジュースをひょいと掴み取り、プシュッと小気味いい音を立ててプルタブを開けた。
「まぁ、平気だ。いつももっと酷いものを食べている」
そう言って、開けた缶をグローグーに手渡す。ジュースを受け取ったグローグーは、嬉しそうに喉を鳴らした。
その時、マンドーがグローグーの小さな背中にそっと手を添え、いつもの仕事の時とは明らかに違う、低く穏やかな声で語りかけた。
「グローグー、彼にありがとうは?」
……
え?
その声のトーンに、俺の胸がまたまたドクンと激しく脈打った。
戦場での冷徹な戦士の声でも、賞金稼ぎのビジネスライクな声でもない。それは、どこにでもいる、子どもを慈しむ優しい父親の声だった。マンドーにこんな一面があるなんて。
グローグーはジュースを大事そうに抱えたまま、俺に向かって小さな頭を頑張ってペコリと下げた。
「キュ」
「
……
っ、ううん、どういたしまして!」
かわいい。かわいすぎる。
でもそれ以上に、目の前で繰り広げられている親子のやり取りの尊さと、マンドーの父親としての優しさに、胸の奥がきゅううっと締め付けられるように愛おしくなってしまう。
マンドーは「行くぞ」と短く言うと、ジュースを飲むグローグーを落とさないよう器用に抱き直し、レイザークレストの方へと歩き出した。
残された俺は、フライトーツの胸のあたりをぎゅっと掴んで、その後ろ姿を呆然と見送る。
……
なんなんだよ、もう。
父親の顔全開の優しいマンドーも、健気にお礼をするグローグーも、ずるすぎる。
この親子、揃いも揃って俺をときめかせてどうするつもりなんだ。これ以上好きになったら、本当に引き返せなくなってしまうのに。
俺は赤みが引かない頬をアデルファイの風に晒しながら、嬉しさを隠せない笑みをこぼしていた。
---
アデルファイ基地のドックに、ひときわ甲高い、洗練されたマフラー音が響き渡った。
N-1スターファイター。クロームシルバーに輝く美しい機体が、滑り込むように着陸する。
コックピットには銀色のベスカーのヘルメットが見えた。マンドーだ。俺がフライトスーツのポケットに手を突っ込んだまま見つめていると、コックピットの後ろにあるドロイドポートの中から、緑色の大きな耳がピコピコと動くのが見えた。こちらはグローグーだ。
グローグーは透明なガラス越しに俺の姿を見つけると、小さな手をパタパタと振っている。かわいい。
機体から降りてきたマンドーは、相変わらずのベスカーに身を包み、堂々とした足取りでこちらへ歩いてきた。
その少し後ろから、急に現れたゼブさんが「よう、マンドー。今回の任務の件だが」と豪快に笑いながら声を掛けている。いいなぁ、ゼブさん。今日はマンドーと合同任務か。
新共和国のベテラン隊員であるゼブさんたちが、マンドーと対等に肩を並べて仕事の話をしている姿は、下っ端の俺から見れば本当に羨ましい。俺ももっと腕を磨けば、いつかあんな風にマンドーの隣で戦える日が来るのだろうか。
そんな淡い憧れを抱きながら見つめていると、マンドーはゼブさんに「少し待ってくれ」と告げ、まっすぐに俺の前で足を止めた。
「やあ、パイロット」
「お疲れ様です、マンドー!今日はゼブさんと任務ですか?」
「あぁ。それより、これを」
マンドーはそう言うと、ベルトのポーチからゴソゴソと何かを取り出し、俺の手に握らせた。何だろうと手を開いてみると、市場で売っていそうな、色鮮やかな包み紙に包まれた小さな飴玉と、ドロイドのイラストが描かれた、子ども向けのホロステッカーだった。
「これは?」
「この前のジュースの礼だ。グローグーが、お前に渡すと聞かなくてな。市場で自分で選んでいた」
マンドーの肩の上で、グローグーが自慢げに胸を張る。
「マンドーが選んだんじゃないんですか?」
俺が少しからかうように聞くと、マンドーはごまかすようにヘルメットを少しそらし、声を低くした。
「俺は、どれがいいか聞かれたから、お前ならその色が似合うと言っただけだ。
……
行くぞ、ゼブ」
「おいおい、マンドー、随分と若いパイロットに優しいじゃないか」
後ろで見ていたゼブさんがニヤニヤしながら冷やかしている。マンドーはそれに答えることなく、心なしかいつもより少し早足で基地へと歩き去っていった。
「あ、ありがとうございます!マンドー、グローグー!」
後ろ姿に慌てて声を掛けると、グローグーが振り向いて手を振ってくれた。まるでパパの分も手を振っているといわんばかりの勢いだった。
手のひらに残された、ひとつの飴とステッカー。
マンドーは「あの子が選んだ」と言ったけれど、「お前にはその色が似合うと言った」なんて、そんなの、期待しないわけがない。似合うってなんだ。飴玉に似合うとかあるか?
周りから見たら、ただの子どもの気まぐれでもらった、数十クレジットもしない安物のお菓子だ。普通なら、その場ですぐに口に放り込んで、ステッカーは適当に機体にでも貼ってしまうようなものだ。
だけど。
「食べられるわけないだろ、こんなの」
俺は飴玉を両手で大切に包み、フライトスーツの心臓に一番近い内ポケットへとそっと仕舞い込んだ。体温で溶けてしまわないか心配になりながらも、好きな人から貰った何気ないものを、お守りにしたくて、宝物にしたくて、肌身離さず持っていたくて。
胸の奥が熱さで満たされていくのを感じながら、俺はマンドーが入っていった基地のドアをいつまでも愛おしく見つめていた。
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