ごろさめ(さめしし+ごろさめしし)の小話です。「#RTの早い5人に落書き投げつける見た人も強制でやる」タグで、Blueskyにて投げていたもの④です。ノノさん、ありがとうございました! (初出:2026/05/28)
「ごろさめ
……お前、また村雨とケンカしたのか?」
「ごごっ」
ダイニングテーブルの上で、ごろさめはぷるりと体を震わせた。
小さな足で踏ん張って、ぴっと俵型の胴体を持ち上げて立つ。糸で縫い取られた瞳でオレを見つめ、きらりと眼鏡を光らせ(これも糸なのだが、慣れると本当にそう見えてくるのだ)ると、ごろごろ、ごーろごろ、と丸い手を振りながら力説し始めた。
自分は悪くない、悪いのは村雨だ、本体の人間だからといってあの仕打ちは理不尽が過ぎる、私のほうがずっとかわいい
——要約すればそういうことで、まあいつものことではあるのだが、頭に直接伝わってくる意思は流暢で説得力があり、うっかり頷いてしまいそうになる。綿の身とはいえ、さすがは村雨の綿だ。
「
……ごろろ、ごろっろ。ごーろ、ごろごろ!」
ふんと胴体を反らして、ごろさめが演説を終える。オレはテーブルに近づき、椅子を引いて座ると、右手を伸ばした。
「ごろさめ」
ぴょん、と手のひらにごろさめが跳び乗る。傷痕の上で甘えるように左右に揺れてから、すいと顔を持ち上げて、じっとオレを見つめた。
わかるだろう?、と言わんばかりの眼。
こういうところは、ホント本体によく似ている。
「うん。お前の言いたいこともわかるよ
……でもな、ごろさめ」
オレもごろさめを見つめて、静かに言った。
「オレはお前たちのこと、みんな好きなんだよ。だから、お前だけの味方とかはできねぇ。そんなことしたら、それでまたケンカになっちまうだろ」
「
……ごっ」
「うん。お前も本当はわかってるんだよな。賢いもんな。でも、自分だけ折れるなんてしたくねぇんだろ」
「ごろ!」
「ま、それも当然だよな。アイツも同じコト言ってるし」
本体の村雨に話が及んだので、ごろさめがまたフェルトの毛を立てそうになる。そのやわらかな胴を手で包み、そっと顔の高さまで持ち上げた。
きゅっと口元を結んだ、意志の強い表情のぬいぐるみ。
小さな体で負けず嫌いの彼に、微笑みかける。大丈夫だぞ、と念じながら。
お前たちはみんな、かわいいんだから。
「でも、このままじゃ埒が明かねぇだろ。村雨のとこ行って、連れて戻って来い。そしたらみんなでおやつが食える。どうだ?」
「ごろ
……!」
ぱっと眼を輝かせて、ごろさめが浮き立った意思を放つ。あっという間に思考が食欲でいっぱいになったのがわかった。
畳みかけるように、頷いてみせる。
「そうだぞ。ベリーソース入りのチョコケーキ焼いたからな。食いたいだろ? ごろししと一緒に行っていいから、頑張ってこい」
「ごろーー!」
ぱっとごろさめが跳ねて、オレの手からテーブルに、そのまま床に飛び降りる。ソファーでおとなしく待っていたごろししが慌てて跳ねてやってきて、一緒に仲良く駆け出していった。
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