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かずき
2026-06-07 02:50:52
6269文字
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付き合ってた記憶を消したロが30年後にまたドを好きになっちゃった話
30年後に成就するドラロナもいいなと思って書いてたら思いの外拗らせちゃった過去作
※
ロが20代の時にちょっと付き合ってたけど別れてる描写
ご都合道具が出てくる
過去回想とド視点の部分があって読みにくい構成かも(元の記号だとコマンド化してしまったのでド視点のとこθ<θで囲ってます)
「
…
記憶消してみる?」
「爺さんの道具か?」
「まぁ、そうなんだけど、実は先日改良版が届いてね。あれなら綺麗さっぱり忘れられると思うよ」
そう言って取り出した一本の蝋燭。「今回のはすごいぞ、記憶を消せる蝋燭だ」ドラルクが効果を説明している間も心はズキズキと痛む。なんでも良いから早く貸せ、もうつらいの限界だからと話も終わらぬうちにドラルクの手から蝋燭をひったくって火を点ける。その火をじっと見つめながら俺は蝋燭に大事な記憶を封じた。
--------
近頃の俺はどうかしてると思う。きっと歳のせいだとか長いことあの馬鹿と一緒に居て気が狂ったとか、考えられる要因はそこそこある。
「ロナルド君、帰りに牛乳買ってきてね。あとこの間腰痛めたばかりなんだから無茶しないように」
「うるせぇな、年寄り扱いすんなや」
「いや実際引退を考えても良い年頃だろ
…
いつまで五才児のつもりかね?」
「うるせうるせ、じゃあなジョン!行ってきます!」
「ヌーヌー!」
「こら〜!私にも挨拶しなさい!」
ドラルクのこと、なんか最近好きだなって思う。なんでよりによってあいつなのかと問われてもそんなの俺が聞きたいくらいだ。
あの野郎が居候を始めて、何度となく追い出す機会はあったのになんやかんやと過ごしてる間にもう30年が経とうとしている事実に我ながらお人好しが過ぎないか?と思う。奴もくだらないことに腹を立てては何度も家出紛いの行動に出ることが数え切れないほどあった。それでも最後には「ここは私の城だから」なんて都合のいいこと抜かして帰ってきやがるものでおかげで人生の大半を共にする羽目になった。
正直ドラルクのいる暮らしは退屈しないし飯も美味いし家のことなんかもすっかり任せきりで生活力が絶望的な俺には大変都合がいい部分はでかい。一応の感謝はしているつもりではあるがそれ以上の気持ちなんてない、そう思っていたのに。
「ロナルドさんって、恋したことあります?」
…
なんて嫌な話題だろう。ギルドで待機中最近よくサポートに入る新人の退治人が口にした。
「こんなおっさんと恋バナしたって楽しくねぇだろ」
「いいえ、ロナルドさんだからこそお聞きしたいんですよ!俺、元からロナ戦ファンだから
…
ロナルドさんってハンサムなのに全然そういう噂ないから実際どうなのかなって
…
」
「そうだな
…
恋とかそう言うのに疎い自覚はあるが実際仕事が手一杯で期待してるような浮いた話はないな」
「そうですか
…
」と残念そうな顔をしたそいつを見て内心では同居人のおっさんが好きかもしれねぇなんて言える訳ねーだろ、と考え苦笑した。
「暇だな
……
」
今日は一向に出動要請が掛からない。俺は誰かに同意を求める訳でもなくそう呟いた。
結局その後も依頼が来ないまま解散して帰路についた。帰りに頼まれてた牛乳はすっかり忘れていて帰宅早々ドラルクの奴に嫌味を言われ、とりあえず殴った。やっぱこんなヤツ嫌いだと思う。
久しぶりの休業日、と言っても流石にこの頃年齢には逆らえず以前よりはその日数は増えているがたまには自分でも部屋の片付けなんかしてみようかと気紛れを起こして物置と化したクローゼットを開いた。
定期的にドラルクが埃払いなんかはしてくれてるようで別に散らかってはいないが、さすがに物を捨てたりはしていないから思い切って断捨離に踏み切って中の品々を全て引っ張り出した。するともう何年も姿を見ていないような品に紛れて本当に見覚えがない箱を見つけた。
「なんだこれ」
何か特別な模様がある訳でもない真白い軽い箱を傾けると中で何かが転がるような音がした。
箱を開けてみると中に入っていたのは使いかけの蝋燭だった。なんでこんなものとってあるんだろうか、よくわからないがこうして箱にまで入れてとってあるくらいだから何か特別なものかもしれない
…
そうだ、ドラルクが何か知っているかもしれない。後で起きてきたら訊ねてみよう。
箱を閉じると壊さないようそれをテーブルに置いて不用品のまとめに取り掛かった。
時刻が18時を過ぎ、そろそろ陽が沈むと窓を眺めていると棺からガサゴソと物音がした。
「今日は早起きだな?まだカーテン閉めてねぇから開けんなよ」
中にいる棺の主にそう言って遮光性のあるカーテンを閉じた。
「どうもすまないね、今日は君休業日だからゆっくり食事の支度をしようと思ってね」
わざわざ俺の為に?なんてちょっと心が跳ねるような心地がしてすぐにいや、ないわ。と自己否定に入る。
「ヌッヌヌ〜!」
「おはよう、ジョン!ドーナツあるよ!」
「ヌ〜!」
「夕飯前だから半分こしなさいね、全く
…
君も相変わらずだな
…
」
いつからか伸ばすようになった後ろ髪を括りながらドラルクが小言を漏らす、それを無視して早速ジョンとどれにする?なんてドーナツを眺めている。
「ん?この箱何?」
ドラルクがテーブルに置かれたあの箱に気づいた。俺も分からん、と伝えると直ぐに箱を開けて中身を確認した。中の蝋燭を見たドラルクはこれ
…
と何か知っている風なリアクションをしたのでそれが何なのか訊ねた。
「
…
これって多分アレだよね
…
ロナルド君見覚えがないんでしょ?ってことはやっぱり
…
そうか
…
失くしたかと思ってたけど
…
これをどこで?」
「クローゼットの奥にあった、んでそれ何?」
「いや
……
君には教えられない」
「は?」
「教えられないと言うか知らない方がいい」
「なんだよそれ、気になる言い方しやがって」
ドラルクはうーとかあーとか唸りながらどうしたものかと悩んでる風な様子だった。言わないとお前の身体引きずって表出るぞ?とまだ昼の名残のあるカーテンの向こう側を指差せば分かった分かった、とひとつ咳払いをしてドラルクが語り出した。
「端的に言えばこれは御真祖様の発明品で記憶を消せる蝋燭だ、これで君は嫌な記憶を綺麗さっぱり消したんだよ」
「いつ?」
「君にとってはもう随分昔、20代の頃かな」
「その記憶って?」
「言ったら意味がないだろ、それにこんなことしてまで消したかった記憶だぞ?傷つくのは君だ」
「そんな若い時の記憶なんてこの歳になれば案外大したこたねぇよ」
「
…
それはどうだろうねぇ」
蝋燭を手に取り何故か愛おし気な表情で眺めるドラルクになんでお前が俺の記憶にそんな顔すんだよと苛立つ。そんな顔させるような記憶ってなんだよ、昔の俺何したんだ。
「これ、私が預かっておくね」
「悪用する気か?」
「まさか。この蝋燭を破壊するとどうやら記憶の封印が解けてしまうらしいからしっかり保管しておきたいんだよ」
「ふーん
…
」
明日の昼間にでもこっそり壊しとこうかな。
「
…
絶対触るなよ?」
「さ
…
わんねぇよ」
「あ〜嘘ついてる顔だ〜〜〜」
「嘘じゃねぇよ!!」
「どうだか」
蝋燭を箱に戻したドラルクはそれを棺の中にしまってロックまでかけて棺を閉じた。ロックの解除法を俺は知らない、それにコイツが活動できない時間はコイツ自体があの中に居るからこっそり中を物色することもできない。蝋燭の破壊が困難になってしまいこんなことなら見せる前に壊しとくんだったな
…
と後悔した。
夕飯の支度に取り掛かったドラルクが下手くそな鼻唄を響かせる部屋でどんな記憶が眠っているのだろうかと考えを巡らせてはさっぱりわからない、と溜息を溢した。
少し時間が経って蝋燭の事など忘れて、いや、頭の片隅には微かにあるが若い頃程些細な事に囚われ続けることがなくなったが故に特にドラルクの隙をついて
…
なんてこともせず普段通り忙しない生活を過ごしていたある日の夕飯時のことだった。
「
…
私が言うのもアレだけど、ロナルド君って結婚とかしないで良かったの?」
「本当にお前が言うのもアレだな!この厄介者が」
コイツにも一応罪悪感とかあったのだろうか。突然振られた話題に少し動揺した。
「
…
この仕事してるとあんま結婚とか考える余裕ねぇから別に。ポンチ相手ばっかで忘れがちだが一応命の危険は付きものだろ?」
「そうだねぇ
…
所帯を持ったはいいが凶悪な高等吸血鬼の行方を追って消息不明に、なんてことが起きてもおかしくない仕事だものね」
「そんな事件起きたらロナ戦のネタにも困らなかっただろうな
……
」
「まぁ、退治業云々もあるけどやはり一番の原因ってロナルド君がそう言う人だからなんだろうな」
「どう言う意味だよ」
「仕事熱心だからってことにしておきたまえ」
よくわからないことを言われてモヤモヤしたがまあ良いか、と食事を続けた。その言葉を言った後からドラルクは特に何も言わずジョンと俺が飯を食う姿を満足気に見ているだけだった。
-θ<θ-
「ロナルド君の記憶、ちゃんと封印されてるみたいだね」
「ヌンヌン!」
ロナルド君が入浴しに行った隙にジョンと内緒話を繰り広げる。
「あの時は本当に可哀想だったけど、コレのおかげで元のロナ造が帰ってきてよかった」
蝋燭の入った箱をそっと撫でながら当時のことを思い返す。
かつて私とロナルド君は恋人だった。とは言えお付き合いを始めてすぐロナルド君から別れを告げられたのでほんの数日だけの関係だった。ある理由で別れを告げたロナルド君だったがそれで精神を病んでしまいダメ元で御爺様に記憶を消す道具を作ってくれと頼んだのがこの蝋燭だ。紛失して数日は内心穏やかではなかったが幸いあの時のまま残っていたことに偉く安堵している。
「
…
結局、ロナルド君が心配するようなことは起きてないんだけどな」
あの時ロナルド君が別れる理由として涙ながらに語った懸念点を当時の私は払拭できなかった。あの時と変わらずロナルド君を好きで居続けているのにそれをロナルド君へ打ち明けていないのはその罰だと言い聞かせてこの30年近い時を過ごしているのだった。
-θ<θ-
依頼人から今日のお礼にと菓子折りを貰った。これはジョンも喜ぶぞ、と考えながら箱を見て蝋燭のことが頭に過った。
俺が消したかった記憶ってなんだろう。半田にいじめられたことか?いやそんなんいちいち消してたらキリがない。ならばポンチの能力でめっちゃ恥ずかしいことになったとか?
…
それもキリがないことな気がするし何よりあの厄介事からは華麗に身を躱し人を嘲笑って快楽を得るタイプのドラルクが自ら大事に保管したがる代物だろ、アイツ絡みのことかな
…
益々分からない。
やはりあの蝋燭を破壊して記憶を取り戻すべきだろうか。なんとなく狡い気がして今までしなかったが、ドラルクが寝ている間はジョンが出入りできるようロックはかけていないはずだ。ヤツが寝ている時間に野郎をぶっ殺せば蝋燭を探せるだろう。
「ロナルド君まだ寝ないの?」
「おう、原稿あんだわ」
「おじさんなんだから無理しないんだよ。じゃあおやすみ」
ドラルクが棺の蓋を閉じたのを確認してそっと耳を欹てる、今日は好都合な事にジョンはベッドの方で寝ている。一番避けたかったジョンを起こすことは避けられそうだ、しかしそれでも同室での事なので行動は慎重になる。
30分くらい経っただろうか、棺からは完全に物音がしなくなった。まあ起きていても相手はあのドラルクなのでたいした障害ではないだろう、極力音を立てぬよう忍び足で棺に近づき蓋に手をかける。摩擦音も極力抑えつつ棺を開けると何故かドラルクは既に灰になっていた。
「ドラ公
…
?」
ジョンを起こさないよう小さな声で呼びかけるが灰は静止したままでどうやらまたスマホ直撃死のまま寝ているようだ。これは好都合と灰を掻き分けて箱を探すと案外直ぐにそれは見つかった。
「よし」
箱を取り出し蓋を戻そうとした時だった。
「何がよしなんだい?」
「ッ!!」
聞き覚えのある声がして灰が蠢くのが見えた。
「テメッ
…
起きてやがったのか?」
「いいや寝てた
…
というか死んでたよ?でも誰かさんが乱暴に灰を撫で回すから起きちゃった」
クソ、油断した。でも目的のものは既にこちらの手にある、今すぐこれを握り潰せば
…
「待て、それを壊したら君がどうなるか私にも予測できない」
「
…
だったら何だよ関係ねーだろ」
「あるよ、大アリだ」
「これは俺の記憶なんだろ?どうするかは俺の勝手だ!」
そう言うと俺は力の限り箱ごと蝋燭を握り潰した。
---
「ドラ公
…
話ある」
「どうしたの、やけに深刻そうな顔して」
「
…
別れてくれ」
「えっ」
ドラルクのことを嫌いになったわけでは決してない。それでも俺にはどうすることもできない事があるから恋人でいる訳にいかない。
「やっぱ俺じゃダメだろ」
「そんな事ない!私はロナルド君が好き、君も同じ気持ちだって言ってくれたじゃないか!」
「そうだけど俺は女じゃない
…
」
悔しさで涙が滲んで声が震えた。少し沈黙が続いた後にドラルクが口を開いた。
「
…
もしかしてこの間のお父様が言ったこと?」
『そろそろ孫の顔が見たいよ』ドラルクの親父さんが何気なく言った言葉がずっと気掛かりだった。
「てめーはやっぱ普通に結婚とかしたほうがいいって」
「ロナルド君ほど一緒に居て退屈しない最高な人は居ないよ」
「
…
でもさ、見つかる可能性ないわけじゃないだろ?俺との関係は同居人のままにしとこうぜ?」
「
…
本気?」
「本気」
ドラルクの可能性をダメにしたくない気持ちだけは本気だった。
「わかった、じゃあ恋人関係はここでお終いにしよう。君も童貞のままでは可哀想だ」
あっさり終了した恋人関係を惜しむ間もなく余計な一言でムカついたので一発殴って砂を散らした。
---
「
…
は?」
「ど
…
うかね?記憶は
……
?」
ああ、思い出した。俺って前からコイツの事好きだったんだっけ。
「
………
戻った、クッソ最悪」
「それはそうだろう、あの時の君すっかり気落ちしてご飯も食べなくなってたし」
「でも、今思うと勿体ねぇ事したなっつーか
…
」
「そうとも!結果として好い人なんてこの30年間一切現れなかった!お互いにな!」
…
何も言い返せない。なんならまた新たにコイツへ恋心を募らせ始めるところだったのだから尚更酷い。
「
…
新たに恋人を探すどころか君への気持ちが増すばかりだった」
恥ずかしさが込み上げてきて顔が熱くなるのを感じだしたと同時に聞こえた言葉に一瞬理解が追いつかなかった。
「へ?」
「君は吸血鬼の執着心を甘く見過ぎなんだ」
「
…
それはどう言う」
「あの時と変わらず私は君を愛しているんだよ」
「嘘だろ
…
」
「嘘なもんか!いくら長い刻を生きる私でも好きでもない人間の元に30年も留まらないさ!」
嘘であって欲しいと思った。だってそれってすげー残酷じゃないか?自分への好意を綺麗さっぱり亡くした元恋人となにもなかったように接して、気持ちを隠したまま暮らし続けていたって事だろ、頭おかしいよコイツ
…
「まぁ、記憶が戻ったからと言って別に今まで通り過ごしてもらって構わんよ」
「それは無理だと思う」
「
…
散々止めたのに蝋燭を破壊したのは君だぞ、でもまぁそうだろうね。もう一度御爺様の道具でなんとか
…
」
「記憶は消さなくて良い、そうじゃないんだ」
そんな過去があるなら話がはやいじゃないかと墓まで持っていくつもりだった気持ちを白状した。
「なんだい君、また私のこと好きになっちゃったの?流石にその可能性は考えてなかったよ、ほんと面白い子
…
」
「
…
好きだろ、おもしれーヤツ」
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