tachi_aoi_0615
2026-06-07 00:37:50
1016文字
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ホラー

原藤ワンドロ第24回参加作品

「平助、そっちどうだ?」
 買い出しを終えた原田さんが声をかけてくれる。
「ちょうど終わったところです。ほら!」
 僕は手に持っていた黒と赤の布を原田さんに見せつけた。
「へえ、上手いもんだな」
 学祭まであと一ヶ月。僕らは出し物としてお化け屋敷を選び、その準備に追われている。
 今日の僕の仕事は学祭で原田さんが扮する吸血鬼の衣装の作成だ。
 原田さんは体格が良いので既製品の衣装を使うことができず、彼が着れるサイズの服をアレンジすることになったのだ。
「おお、マント凄えな」
 原田さんが衣装をまじまじと見つめる。
「頑張りましたから」
 日本人離れした原田さんには似合う衣装だと思う。
 お化け屋敷というイメージからは少し違う気がするのだが、当日はメイクもするというし、照明も落とせばそれなりに怖く見えるだろう。
「平助、ほら」
 原田さんは唐突にマントを手に取ると、僕の頭に被せた。
「花嫁」
 彼は眩しいものでも見つめるように目を細めた。
「花嫁って……花嫁は白いものでしょう」
 僕の言葉に原田さんは口角を上げる。
「最近は黒い花嫁もいるらしいぞ」
「そうなんですか?」
「おう、貴方以外に染まりませんって意味があるんだと」
 貴方以外に……
「平助、綺麗だぞ」
 原田さんが微笑む。
「どうしたんですか? 普段こんなこと言わないじゃないですか」
 悪いものでも食べたのだろうか。
「別に何もねえよ。ただ、平助がベール被ってたら綺麗だろうなって」
「そう、ですか」
 恥ずかしさでじんわりと顔が熱を持った。
「平助、俺の花嫁になってくれるか」
「僕は女の子じゃないので、花嫁にはなりませんよ」
 原田さんは僕の答えを聞いて少し落ち込んだように見える。
……だけど、結婚したくないとは言ってません」
 ゆっくりと紡ぎ出した僕の言葉に、彼は耳を赤らめた。
 原田さんはバサリ、と僕の頭に掛けていたマントを自分にも被せる。
 二人揃って布を被っている姿は、きっと外から見たら滑稽だろう。
……平助」
 暗闇の中、原田さんがそっと僕の左手を取る。
「好きだ。卒業したら、結婚してくれるか」
 そんな言葉ともに、彼が僕の薬指に口付けをする。
 本当、恥ずかしい人だな。
「答えなんて、わかってるくせに」 
 原田さんの睫毛と僕の睫毛がそっと触れ合う。
 僕はすぐそばにある彼の顔を眺めて、それからゆっくりと瞳を閉じた。