Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
風花莉亜
2026-06-07 00:17:29
3314文字
Public
Clear cache
神のみぞ知る。
第42回とどち版ワンドロワンライ参加作品。千早くん視点で、千早くんが少し素直になるお話。個人的には可愛く書けたお話かなって思ってます。いつも通り何でも大丈夫な方向け
『会いたい』
一通のメッセージが届いたと思ったら、そんな一文が目に飛び込んできた。
誰からなんて、決まっている。
こんな直球勝負なセリフを俺に送り付けてくる人間なんて、この世にたったの一人しかないない。
脳裏にバカみたいに明るく笑う金髪が過ぎって、胸がきゅっとなった。
「よくもまぁ、恥ずかし気もなくこんなの送ってこれますねぇ
……
」
自室に一人きりで誰に見られてる訳でもないのに、無駄にポーカーフェイスを作ってポツリと呟く。
負けず嫌いと素直になれない部分が顔を出し、頬を緩めたら負けな気がした。
競う相手もいないのに何をやっているのか。
自分で自分に呆れつつぼふり、と音を立ててベッドへと寝転び、返事をするべくスマホに指を滑らせた。
……
のだが、何と返せばよいのやら。
送り主を見習って、『俺も会いたいです』とか死んでも送れる訳がない。
こんな時、素直に感情を表せる人間が羨ましいと思う。
そう、例えば要くんだとか。
彼だったのなら、バカ正直に『俺も俺も〜』とか送り付けるのだろう、それはもうバカ正直に。
「俺もバカになってみる
……
?」
一層の事。
いやでも、それはなんと言うか俺らしくないし、何よりその『バカ』になる事自体ハードルが高い。
プライドが邪魔をして、一歩踏み出す勇気もない。
ゴロン、と寝返りをうって、既読を付けてしまったメッセージと睨めっこする。
このたったの四文字が送られてきてから、優に十分程が経過していた。
何か返さなければ、と指を動かすものの、正解が見付からずに書き込んでは消してを繰り返している。
いや、正解なんてきっとひとつしかないんだけど。
答えは見えているのにわからないフリをしているのは相手に失礼ではないのか、そう考えた所で追加のメッセージが送られてきて、危うく顔面にスマホを落としそうになった。
だから何でこの人はこうも真っ直ぐなんだ。
色んな意味で心臓がバクバクと鳴っている。
「藤堂くんのばか」
胸に抱えこんだスマホに表示された一文に、頬が熱くなるのを感じた。
『今から会いにいく』
俺の了承も得ずに一方的に送ってくるなっての。
返事に時間をかけすぎた俺も悪かったのだろうけど、これは絶対に確信犯。
何を返した所で、こう送られてきただろう。
最初から決めていた事だと、歯を見せて笑いながら言う姿を浮かべて、目を閉じる。
すると再びスマホがメッセージを受信した。
『たまには素直になった千早くんも見てみたいンだけど?』
だから素直になれたら苦労などしていない。
返信だって秒でしてるっての。
そんな感情を全部込めて、たった一言『バカ』とだけ送った。
それはすぐに既読になって、『そりゃおめェだわ』なんて失礼な文字が返ってくる。
実際そうだけど。
それからほどなくして、藤堂くんがやって来た。
やけに早いな、と訝しんだものの、どうせ最初から近くにいたのだろうと当たりをつける。
そんな事して、俺が来るなと言ったらどうするつもりだったのか。
いや、素直に帰ったのだろう、だって藤堂くんだし。
でもまぁ、今日はうちの両親がいない事を藤堂くんは知っていたので、来るなと言われる確率は低いと踏んでの犯行だったのかもしれない。
バカだけどバカではないので。
「明日も学校なのに」
暗に、わざわざ会いに来なくても朝日が登れば学校で会えるのに、と言う意味を込めて言えば、途端に眉間に寄るシワ。
それから、ちょっと頬を膨らませる拗ねたポーズが可愛らしい。
自分より上背のある男子高校生のする仕草ではないよなぁ、と思いつつ、膨らんだ頬をつつきたくなった。
「あー? 会いてェなと思ったら直接顔見たくなったンだから仕方ないないだろ」
「ビデオ通話じゃ駄目だったんですか?」
「駄目だな。触れねーし」
「すけべ」
「なんもしてねーだろが」
「ふふっ」
何も、ではないですけどね?
玄関先だってのに、有無を言わさず抱き締めてきたのはどこの誰だっての。
甘んじて受け入れてる俺も共犯だから咎める事はしないけど。
腰を抱く力強い腕に抗う事なく、自分より圧倒的に厚い胸板に頬を寄せる。
そうすると嫌でもわかる、確かな筋肉の弾力が恨めしい。
どれだけ育てる気だ、とスンとした顔になったが、無い物ねだりをしたってどうにもならないので早々に諦める事にした。
そんな事より、折角藤堂くんが家まで来てくれたのだから、ご希望通りに甘えてみようか、なんて。
素直な自分が顔を出した。
まず手始めとばかりに藤堂くんの背中へと手を回し、シャツをきゅっと握って離さないアピールをしてみる。
すると、藤堂くんの肩が跳ねた。
「ち、千早さん!?」
そんな驚かなくても良いじゃないですか。
普段だって背中に手を回すくらいやって
……
やってる、よな?
記憶がない。
一抹の不安に駆られたが、きっと無意識にやっているはずだと結論付ける事にした。
一人納得した所で、狼狽える藤堂くんが面白い事に気付いた俺は、そんな姿をもっと見てみたいと思った。
えーっと、俺がやらなそうな甘える仕草ってなんだろう。
ベタベタに甘えるなんて事をしてこなかった俺にとって、『甘える』という行為は正直に言って未知の領域だったりする。
知識もなく参考になる物も手元にない為、何をしたら良いのかはさっぱりだ。
……
とりあえず、擦り寄ってみる?
参考資料が完全に猫である。
それでも物は試し、と擦り寄ってみようとした所で、何かを察知したのかガシリ、と肩を掴まれて静止する羽目になった。
何で邪魔するんだ、と恨めしい気持ちで藤堂くんを見ると、トマトのように赤く染った顔があった。
え、なに、何でそんな赤いんです?
「甘えてくれるのは嬉しいけど、致死量ってものがある訳ですよ、千早さん」
「ちょっと言ってる意味が
……
」
「あんまり可愛い事しないでくれ」
「俺が甘えるの、嫌なんですか?」
「嫌じゃねーよ。だけどな、このままだと手ェ出す」
「暴力反対」
「そっちじゃねーよ!」
バカだのアホだの藤堂くんに言われて、ムッとする。
そんなに言うならもうしません、と言い放つつもりが、「俺は甘えたい気分なんです!」なんて口走ってしまい、この空間ごと一時停止した。
「すみません、今のナシで
……
っん!」
ナシにしてもらえそうない。
獲物を前にした猛獣みたいな鋭い目をした藤堂くんに、勢い良く口付けられる。
ガチリ、と歯が当たった気がするってか絶対当たった痛い。
強く腰を抱かれて、覆い被さるように与えられるキスに生理的な涙が目尻に溜まっていき、ぎゅっと目を瞑った瞬間にそれが流れていくのを感じた。
「
……
っ、う
……
」
「
……
はっ、俺はちゃんと言ったぞ」
「に、しても
……
急すぎ
……
っ」
「そこに関しちゃすまんと言いたい所だが、全体的に悪いのはおめェだろ」
理不尽。
堪え性のない藤堂くんだって少しは悪いでしょ。
密着していた身体を離して頭をクシャクシャと掻く藤堂くんは、これ見よがしに溜め息を吐いた。
「大事にしたいって思ってンのに、それぶっ壊してくるのがその大事にしたい奴なんだよなァ」
「なんですかそれ」
「そのまんまの意味だけど?」
「別にそんな大事にしなくったって「するだろ、普通」
そんな食い気味にこられても。
大事にしてくれないより大事にしてくれた方が嬉しいけれど、藤堂くんのは度が過ぎる気がする。
そんな、宝物でも扱うみたいに丁寧にしてくれなくたって、俺はそんなヤワじゃないつもりなんですけど。
離れた事で出来た隙間が面白くなくて、隙間を埋める為に俺から抱き着く。
するとデジャブかな、と思うように狼狽える藤堂くんがいて、ちょっと面白かった。
ねぇ、藤堂くん。
俺も会いたかったですよ。
だから、会いに来てくれてありがとうございます。
口には出さず、心の中で言う。
いつか今よりも素直になれる時が来たら、その時はちゃんと言葉にしますね。
それがいつになるかは、神のみぞ知るってやつですけど。
END
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内