ぽふむん
2026-06-06 22:34:35
1118文字
Public ワンドロ
 

疑惑


#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「走り梅雨」
氷柱if

氷柱に「弟子入り」した兄妹の妹の方がいます。
気象病、頭痛もちの氷柱です。
過剰摂取してしまうので、薬をしのぶちゃんが管理しています。

梅ちゃんの独特な童磨のよび方は、あるフォロワーさんのどまぬいの名がヒントでした。

それと、妊娠期間は十月十日と言いますが……



湿気を含んだ空気が、重く体にまとわりつく。
開け放した窓の外は、正午だと言うのに暗く鈍色に染まる。
室内に吹き込む風がひんやりと冷え込んできた。
「はぁい、これで直にお薬が効いてくるはずです。冷えてきましたね。窓を閉めましょうね」
しのぶは、穏やかにそう言いながら往診セットの入った鞄を閉じ立ち上がった。

「しのぶちゃんの意地悪。万が一の時のために予備薬ちょうだい」
童磨は、口を尖らせ拗ねたように唸った。

「だーめーでーす。あなたじゃなければそれでいいのですが」
しのぶはその願いを素っ気なく突き放した。
童磨は、しのぶの往診鞄を奪おうとした。
大柄な体だが、身のこなしは軽い男。普段なら奪い取れたかもしれない。
だが、今は体調が万全ではない。
しのぶの方が素早かった。

「この間、あなた何をしでかしました?」

「頭痛かったから薬をひと瓶飲んだだけじゃない」
「それであなた死にかけたんですよ!?薬の過剰摂取はかえって毒です」

「だってぇ……効かないし、そのあとも信者の子の話を聞かな……
「休みなさい!!何のために神山さんがいると思っているんですか!」

しのぶの罵声に、童磨は首を竦めた。

「ごめんちゃい」
「分かればよろしい」

しおしおと項垂れた童磨に、しのぶは満足気にふんぞりがえった。
その時だった。

ドタドタと走ってくる足音。
それと、頭痛の時には頭に響く酷く甲高い声。
思わず童磨は耳を塞いだ。

「しのっちー!どまっぴのどまぷんぷん治った?もうどまるんるん?」

この声の主の事を熟知していなければ、意味不明なことを叫びながら、すぱーんとけたたましく襖を開けて入ってきた少女。
髪は絹糸のように白く、青い瞳の少女。

梅だ。

本当は十三歳だと言うが、少し実年齢より精神的に幼く見える少女。
頭痛で苦しんでいた童磨の為に、しのぶを呼びつけた少女だ。
童磨が、頭痛で不機嫌そうに見えたから。
その機嫌を直せるのはしのぶだけ。
もう機嫌は直ったかと確認しに来たのだ。

「梅ぇ……少し静かにしてくれないかなぁ?そんなにすぐ薬効くわけないよねぇ」

童磨は目をガン開き、梅を睨めつけた。

梅も負けてはいない。
「なによぉ……しのっちを呼びに行ったのは私よぉ?感謝なさい」
同じく、眼を見開き童磨を睨み返した。

──────この表情……そっくり。
遊郭生まれの梅ちゃんが、お兄さんと父親を同じくする訳ないのはそりゃあそうですが……遊女が二回も堕胎に失敗した上、産むことを許される訳がない……まさか……まさか……ですね──────

しのぶは、あまりにそっくりなその表情を見ないことにして目を背けた。