その日は珍しく、ざべころも一緒に基地へ来ていた。
ざべころは隊員たちに囲まれている。小さな丸い身体を椅子の上にちょこんと乗せて、ご機嫌そうだ。
「ざべころくんは普段何して遊ぶの?」
「おえかきです!」
「へえ」
「いいねぇ」
「あとしゃりころさんといろいろあそびます!」
ふわふわ、にっこりとした笑顔に癒され、つられて隊員たちにもほのぼのとした空気が流れる。平和な会話だった。
「ごはんは何が好き?」
「いろいろすき!でもさいきんはぷりんがすき!」
「可愛いなあ」
「シャリアさんがかってくれます!」
「優しいね、中佐」
「やさしいです!」
ざべころは得意げに続ける。
「しゃりあさん、ぼくにあまいんですよ!」
「そうなんだ?」
「はい!おおきいぼくがよくシャリアさんはころにあまいっていうから」
ここまではまだ良かった。
「でも、おおきいぼくにもあまいです!」
近くで書類を読んでいたエグザベは思わず吹き出しそうになった。何やら、危険な方向へ進み始めそうな気配を察知して、聞き耳を立てる。目の前のコモリからは彼女がよく使う「ゲロまず」という言葉が聞こえてきそうだ。
「へえ〜?」
隊員たちの目が輝く。
「どう甘いの?」
「シャリアさん、おおきいぼくのことだいすきなんですよ!」
胸を張り、誇らしげに言うざべころ。
「だからおおきいぼくがかえってくると、うれしそうです!」
「おおー」
「ほんとか?」
「ほんとうです!それに、おおきいぼくがごはんたべないと、ちゃんとたべましたか?っていいます!」
「それは普通じゃないか?」
「ちがいます!」
ざべころは力強く首を振った。
「ぼくにはそんなにいわないです!」
「比較対象がざべころくんなのか
……」
「かわいい
……」
「あとですね!おおきいぼくがおそいと、シャリアさんそわそわします!」
「こ、ころ!」
エグザベが慌てて駆け寄る。ざべころがきょとんとした顔で振り向いた。
「あ、おおきいぼく」
「何を話してるんだよ」
「ぼくのこと」
「途中から違っただろ!?」
ざべころは首を傾げる。
「え?そうかな?」
「そうだ」
しかし、ざべころは納得していないようだ。うーん、とない首を捻る仕草をする。
「だってぼくのおはなしをしてたら、おおきいぼくのおはなしにもなるよ」
「なんでだよ」
「いっしょにいるから」
あまりにも自然な回答だった。隊員たちがくすくすと笑う。
「仲良しなんですねぇ」
「微笑ましい」
「はあ
……ざべころくん欲しいわ」
――その時。
「何を騒いでいるんですか」
会議を終えたシャリアがやってきた。ざべころがぱあっと瞳を輝かせ、その場でぴょんと跳ねた。
「シャリアさん!」
「はい。どうしました、ざべころくん」
にこにこと笑みを浮かべてシャリアが寄ってくる。
「みんなにおしえてたんです!」
「何をです?」
「ぼくのおはなしです!」
エグザベは少し安心した。ようやく本題に戻るらしい。
「それで、シャリアさんがおおきいぼくのことだいすきっておはなしをしてました!」
戻っていなかった。全然戻っていなかった。隊員たちが一斉に吹き出す。エグザベは両手で顔を覆った。シャリアは特に慌てもせず、穏やかな雰囲気のままだ。
「なるほど」
「ほんとうですよね?」
そわそわと左右に体を揺らしてざべころが聞く。シャリアは「ええ」と頷いた。室内が一瞬静まり返り、そして数秒後。
「おお
……」
「熱いな」「ひゅー」と感嘆の声が上がる。ざべころは満足そうに笑う。
「中佐!否定してください!」
エグザベは叫んだ。先程のざべころと同じようにきょとんとした顔で首を傾げるシャリア。
「事実と異なるのでしたら否定しますが」
「〜〜〜ッ‼︎中佐‼︎」
クスクスと笑い声が聞こえる。エグザベは茹で蛸のように真っ赤になっていた。
一方、ざべころは大満足という表情を浮かべて、短い腕をぴーんと伸ばして、周りにアピールした。
「ほら!ほんとうだったでしょう!」
隊士達がにやにやとしながら頷いて、拍手までする者もいる。もういい、本当にやめてくれ。
「それに!おおきいぼくとシャリアさん、ぎゅってするし、あさはでかけるまえにちゅ
――」
ひょいと、シャリアがざべころを抱き上げる。
「その辺りにしておきましょうか」
「なんでですか?」
「エグザベ少尉が限界です」
「でもぼく、ほんとうのことしかいってませんよ?」
[部数アンケート]
(
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