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燈 ともしび
2026-06-06 00:29:46
1122文字
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ぎゆさね【モーニングルーティン】
キ学軸。面倒なのも愛です。
ふわっと額を撫でられる感触で目が覚めた。
「悪い、起こした」なんて本当に悪いと思っているのかイマイチ分からない声が聞こえて、もそりと寝返る。
冨岡は今からジョギングにでも行くのだろう。いつもの見慣れたジャージにTシャツ姿で首からタオルが下げられていた。あのタオル、そろそろくたびれてきたから変えればいいのになァと思いつつ、手を挨拶代わりにヒラヒラと振って頭から布団に潜り込む。
どうせ今日は休みだ。少しくらい怠惰な朝でも許されるはず。元はと言えば休みの前日だからと手加減無しで好き勝手したアイツのせいでもあるのだ。お陰で俺は腰痛、疲労困憊、睡眠不足のトリプルコンボで絶不調の朝だというのに、好き勝手した張本人は妙に肌艶が良くてジョギングに行く余力があるのがムカつく。
そのまま不貞寝のように二度寝を決め込もうとしたが、足音が寝室から出て行かないのを不思議に思って顔だけ出すと思っていたよりも近くに冨岡の顔があって飛び起きてしまった。
「うぉ! びっくりした。何やってんだよ」
「
…
まだ、して貰ってない」
「は?」
「いつものやつ、して貰ってない」
「
…
はァ?」
言葉足らずな恋人はやっぱり言葉足らずで要領を得ない。朝っぱらからなんだコイツ、と思いつつも何となく言いたい事が分かってしまったのは付き合いの長さ故だろうか。
わざとだと分かりやすい大きめのため息をついて両腕を広げてやる。急に起き上がったせいで腰痛が酷くなったじゃねェかよクソが。頭の中で今思いつく限りの罵倒を並べてしまったのは許されるはず。
「こいよ」
きっと、冨岡の後ろに引きちぎれそうなほど揺れている尻尾が見えたのは幻ではないかもしれない。
よし!と許された犬のように飛び込んできた恋人を受け止めて、顔中にキスの雨を降らせた。
「おはよーさん」
面倒くさい。ああ、本当に面倒くさい。
勝手にモーニングルーティンにハグとキスを追加してんなよなァと思って更に少しムカつく。ルーティンに入れるのはジョギングだけにしとけよ。
待ち構えていた唇にもちゅっと音を立ててキスしてやるとこれ以上ないほど幸せそうに冨岡が笑う。
ああ、本当に面倒くさい。
やることなす事、全てが面倒くさくて、休みの前日は我慢とか手加減なんてしてくれなくて、言葉足らずで。
──でも、そんな恋人のことをものすごく愛おしいなんて思ってしまうなんて。
俺らしくない、なんて思いつつも疲れた身体で起き上がって甘いキスとハグをしてしまうなんて。
ああ、恋なんてもんは、本当に面倒くさい。
そう思いながら、なかなか終わらないキスに思わず笑ってしまったのだった。
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