雨鶴
2026-06-06 00:28:10
1177文字
Public 小話
 

6ろの日

二人に感謝。

皐月も終わり水無月。春のやわらかい気温は過ぎ去って夏の一足手前。じっとりとした湿度を含んだ風が遠くから雨粒を連れて、大地を潤していく。

天泣」
図書委員会の仕事をしていた長次は、晴れ渡る空から降り注いだ雨を見て、ポツリと呟いた。

それは一年生の頃。
『虹の根元って、たからものがあるんだって』
そう、長次が小平太に夜も更けた忍たま長屋の布団の中で、話したのが始まりだった。
図書委員長の六年生から聞いた長次は、興奮冷めやらぬ様子で、外ツ国に伝わる虹の話をした。
まだまだ好奇心旺盛の一年生。冒険したいざかり。
それを聞いた小平太は、深夜にも関わらず。
『直ぐに行こう!』
などと、言い出したほどだった。

──虹は気象の気まぐれ。条件が遇わなければ、見ることは叶わない。
いざ見えても鍛練中、授業中、委員会中々二人の条件も揃わなかったり。
それでも二人は、虹を見れば冒険するように探しに出掛けた。

一年生の時は裏山へ。綺麗な鳥の羽根を拾って。
二年生は金楽寺。色とりどりの珍しい葉っぱや、花を持って帰った。
三年生は裏々山。地平線の彼方まで照らす、大きな夕陽を一緒に見た。
四年生の時は海。遠い異国から流れて付いた玻璃の欠片シーグラスを手に。
五年生になったらすすきが原。小さな鳥の巣を見つけて、何時間も眺めていた。


……
長次が手にしていた冊子を持って立ち上がったと同時に、けたたましい音を立てて図書室の戸口で小平太がやって来て叫ぶ。
「ちょーじ!!虹だ!」
《絶対静寂》の図書室前で大声を出した小平太の出現に、図書室に居た生徒や長次の仕事を手伝っていた不破雷蔵の顔が青ざめる。
なにせ、図書委員会委員長の長次が居るのだ。下手すれば室内で乱闘になりかねない。

しかし。
小平太、静かに」
戦々恐々とする後輩たちをよそに、長次は戸口の前へと向かった。
「なはは!すまん、つい」
それで?方角は?」
「南西の方だ。今から行こう!」
長次の腕を引いて、小平太は急かすように言う。だが、長次は首を横に振った。
今からだと夜になる。明朝、出掛けよう」
「ちぇ、仕方ない」
長次の言葉に小平太は少し残念、といった表情を浮かべたが。
「明日が楽しみだ!」
そう言って来た時同様、けたたましい音を立てて去っていった。




「よーし!いけいけ、どんどーん!」
もそ」
翌朝、二人は早くに虹が出ていた方角を目指した。
今度は何が見つかるだろう。何も見つからないかもしれない。
けれど小平太も長次も、同じ景色、同じ時間、同じ空気を感じて、それを楽しいと大切だと思っている、お互いの事が一番の宝物なのだ。


………………………………………………
【祝】『6ろ』の日と云うことで。
本当に有難う。七松小平太と中在家長次に幸あれ。