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都
2026-06-04 21:37:27
2554文字
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小説
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その肌の感触を
拓歪。過去の嫌な夢を見た👁️を抱きしめて眠る🌊の話。
改造前夜のショタ歪の落書き絵を描いたので、ついでに小ネタも……ということで、ふわっとしたSSです。
不意に目が覚めた、真夜中。
室内の灯りは消され、辺りは真っ暗闇だ。だが面影の目は、闇夜の中でも既に物の形や距離を正確に捉えていた。
夜目が利くのはおそらく改造によるものではない、いくら面影家が人体に精通しているのだとしても、瞳のような繊細な部位は範疇の外だろう。
訓練の賜物
……
だった筈だが、あまり覚えていない。暗いところですぐに焦点を合わせられるのは、幼い時から訓練されていたからだと思うのだが。
(小さい頃のこと、あまり覚えてないんだよね)
汗でびっしょりと濡れた夜着を着替えたい。幸いベッドの壁側に彼が寝ていてくれたので、静かにベッドから出られた。
なるべく音を立てないようにしてロッカーを開き、予備の浴衣に着替える。
そっとベッドに潜り込む。僅かに足同士が触れてしまったが、彼は規則正しい寝息を立てて眠っていた。
ほっと息を吐く。
夜中に起きてしまったのは、悪夢を見たせいだ。
――
己が腕を改造された日の夢。
この体はあちこちを改造されていて、生まれた時の形、つまり成長したらこうなるだろうという形を無視して形成されたのだと面影は思っていた。本当の自分なんて、とうに失っているのだと。
だが不思議なことに、フランケンシュタインみたいなツギハギだらけの肌ではない。腹を割いて内臓を弄ったのなら、脚を切って腱に細工をしたならば、大きな傷があって然るべきだというのに。だが記憶では確かに母に、「あなたの体は殆ど手を加えられているの」と伝えられた筈だった。
傷のことはよくわからないが、子供の頃の記憶があまりないのは度重なる改造のせいなのかもしれなかった。面影が唯一覚えている改造は、戦闘時に使用している腕の改造手術をした時のことだけだった。
事前に手術の内容は聞かされていたし、人並み以上の暗殺術を持ちながら面影曰く「化け物すぎる」兄弟たちに劣ると見做されていた三男の、ポテンシャルを上げる為のものだと強く言われていた。結局は心の問題だったから、技能が上がったところで意味はなかったのだけれど。
結果的にリーチが伸び奇襲もしやすくなり、仕事は円滑になった。けれどそれが良いことだとは思えず、改造手術はつらい思い出に
――
家業への恨みが深まる要因となった。
手術台に寝かされて説明を受けている間の、諦念。これは正しい事なのだと教える両親。父の姿を見るのは久しぶりだったことを覚えている。
麻酔から覚めた時の激痛、動いてはいけないからと体は固定され、眠っている間に挿入された点滴針とカテーテルが、暫くは誰も来ないのだという現実を突きつける。
地下に備えられた手術室は、ひんやりとしていた。暗闇。孤独。痛み。気が狂ってしまいそうだった。
なのに今、肘のあたりに触れ、角度を変えて覗き込んでも手術の痕は殆どない。僅かに白く盛り上がった部分を撫でる。ゆっくりとなぞってようやく気づく程度だ。おかしい。あの時は、十歳は越えていた筈。おそらくは十二歳頃
――
たった五年前だ
――
。
若さによる代謝の良さなどを考えたとしても、こんなに早く傷が治るわけがない。
本当はもっと幼い頃から腕が伸びるように作られていたのではなかったか? だとしたらこの記憶はなんだ?
記憶の方が間違いだというのか? あんなに忘れられないほど痛くて寂しくて苦しかったのに。
(考えたところで、答えなんか出ない)
ここにその疑問をぶつけるべき家族はいないのだし、知ったからといってこの腕が普通に戻るわけでもない。
溜息をついて、彼の腕を抱き締めた。
温かい。この温かさを、生きている彼の感触を感じることが出来るのならば、それでいい。私はきっと欠陥品ではない筈。
そうしてどうにか寝直そうと瞼を閉じると、彼が身じろいだ。
「ん
……
。おもかげ?」
「うん」
「起きてたのか?」
「ああ
……
。寝汗をかいちゃって、多分気持ち悪くて起きちゃったんだよね。着替えて戻ったところだよ」
起こしちゃってごめんね、といえば、「いや」と言って面影に捕まっていない方の手を伸ばしてきて頭を撫でてきた。
「ふふっ。私、子供みたいだね」
「怖い夢見て起きちゃったんだろ。だったら甘やかしてやらないとな」
「
……
どうしてわかったの?」
「なんか、そんな顔してた」
怖い夢だなんて一言も言っていないのに。そして「なんかそんな顔」などと曖昧な、理屈のないことを真っ直ぐに答えてくる。でも当たっているのだから、きっと勘がいいのだろう。
「怖い夢、ね。五年ぐらい前に体験した事だったんだ」
「そっか」
「怖かった」
「うん」
「もう過ぎた事なのにね」
「それでもお前が今も怖いと思うなら、ただの過去じゃないだろ」
「どんな夢か聞きたい?」
「
……
聞きたくはないけど、お前が言いたいなら聞く」
「
……
うん。じゃあやめておく。ただ、痛くて寂しかっただけの話だよ」
頭を撫でる手に、力がこもるのを感じていた。
「このまま眠れそうか?」
「どうだろう、わからないな」
彼は腕の拘束を解いて、自分から覆い被さるようにして面影の身体を抱きしめた。
「寂しいなら、オレがこうしてるよ」
「
……
うん。ありがとう。ふふ、澄野君の身体、あったかいな
……
」
「ん。まぁ寝起きだし」
彼の言葉に、笑みが零れ落ちる。温かいのは何も、実際の体温ばかりではない。
「もう痛くないし、私には君がいる。大丈夫、眠れる」
「暗示かけてないか? それ」
「自分の機嫌を自分でとれるのも、私の長所だよ」
それで眠れるならいいけど、と彼は面影を抱き直す。頭を抱え込むようにして髪に触れる。
「腕枕、私は嬉しいけど、腕しびれちゃうよ?」
「平気。頑張る。それにオレ、すぐ眠れると思うし」
「そこは澄野君の長所だね」
そして再び瞼を閉じてじっとしていると、宣言どおりに彼の寝息が聞こえてきた。
「ふふっ、早すぎ」
こういうのって私が眠るのを確認してから寝るんじゃないの、と既に何も聞こえていないだろう相手に向かって揶揄いの声を掛けた。そして。
「ありがとう、澄野君」
痛みも寂しさも忘れさせてくれる温かな恋人へ、感謝を述べて眠りについた。
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