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沙里
2026-06-04 20:47:41
1338文字
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たわわ
*🐺後天性女体化
「
……
それ、何?」
ベッローネの若旦那に対して、友人の気安さはあれど、それなりに敬意はもって接しようと心がけている俺だが、さすがに素が出た。
ジャケットはソファに放り出されているが、いつもの見慣れたスーツ姿のレオントゥッツォ・ベッローネ。ただ、一か所、いつになくふくよかな胸部を除けば。
「起きたらこうだった」
俺は知らん、と他責発言をしているが、それはお前の身体だからな。
普段のレオントゥッツォの身体にぴったりと合わせたオーダーメイドのスーツなのだが、胸部がふくよかになった所為なのか、胸元が少々強調されている。そんなところまで某裁判官の真似をしなくていい。目のやり場に困る。なんでだよ。弟分の乳に対して目のやり場に困りたくないだろ。なんなんだこれは。
「理由はわからないが、他に異常もなさそうだからな。気にすることじゃないだろう」
「しろよ、さすがに」
「原因がわからないものに対策がとれるか?」
レオントゥッツォの言い分はもっともだ。もっともだが、もう少し慌ててくれないか。なんだか混乱している俺がおかしいみたいだろ。
「そのままだったらどうするんだよ」
医者か、それともアーツの術師か。そんなことを少しばかり考える俺に対して、レオントゥッツォは「別に、構いはしないが?」と平常運転だ。
「仮に肉体が女になったところで、俺のやることは変わらない。スーツは新調し直さなければいけないだろうがな」
少しキツい、と胸元のボタンを開けられたらもはや天井を仰ぐしかない。俺はいい。俺はまだいいさ。基本の立ち位置は背後か隣だから。正面から対応しなくてはならない部下のことを思うといたたまれない。昨日までストイックすぎる態度のデカい次期ボスだった男が、ドアを開けたらぴったりサイズのスーツの女になってたら困惑するし、場合によってはヤバイ目で見るだろ
……
!
と俺は頭を抱えたいのだが、本人は至って気楽そうにソファに腰掛けて、書類を眺めている。胸のサイズがそこそこある所為か、腕の上に乗せられていて、健全な青少年が道を誤りそうな姿にしか見えない。そんな目で見たくない俺は素数を数えている。
「ディーマ」
ローテーブルに書類を放り出したレオントゥッツォは、フ、と表情を崩して胸に手を乗せた。
「見たいなら、見せてやろうか」
獣の爪を模したグローブの指先がスーツを撫でる。
正直、これが見知った幼なじみじゃなければ一晩くらい誘いに乗ってもいい。友人の若旦那じゃなければの話だ。
「安っぽい真似はやめとけ」
「なんだ、つまらん」
若旦那じゃなかったら二、三発殴ってやるところなのだが、俺はいいオトナだからと脳内で留める。
「その姿でウロウロされると面倒だ。とりあえず今日は部屋にいてくれ」
「任せる」
こういう時にわがままを言わない思考の持ち主でよかった。
スーツの前を開いてぱたぱた仰いでいるのはスルーする。俺は何も見てない。
「素直に誘惑されておいたほうが楽だと思わないか、ディーマ」
「俺を社会的に抹殺しようとするんじゃねぇよ」
「欲のないやつ」
人の気も知らないで。
些かの頭痛を感じつつ、何事もなく一日が終わってくれることを祈るしかなかった。
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