バラ肉
2026-06-04 12:11:00
5237文字
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また、お前と(ニンブロ)

執事×主人の現パロと見せかけて・・・

ブロはJより明るくて細い猫ッ毛をイメージしております。
執事ニンジャは背中辺りまでの長髪をひっつめて後ろで一つ結び。

ご都合設定過多。
同棲シリーズ(https://www.pixiv.net/novel/series/14851984 )の二人を念頭に読んでいただけると、更に甘さを感じられると思います。

ふわり。

目の前を柔らかな金髪がたなびく。その様子に、ニンジャは片方の眉尻を器用に持ち上げた。

「──坊ちゃん。そろそろ髪を切った方がよろしいのでは?」

そう感情を抑えて忠告をすれば、通り過ぎたばかりの青年がクルリと振り返る。

……やっぱり気になるか?」

一呼吸おいて、髪の隙間から覗く眼が罰が悪そうに歪む。どうやら本人にも自覚はあるのだろう。

「私の立場で気にならない人間がいれば、職務怠慢では? 主人のそんなみっともない格好を黙って見過ごすなんて……

目元を覆う前髪と、肩に付きそうなほど伸びたサイド。これがわざとでないなら、あまりにもだらしない。顎を上げて見つめる表情はさも鬱陶しそうだ。

とはいえ、一方的に上から目線で言われるのは面白くないのか。

「みっともないって……言い過ぎじゃね? 現に、ヘッドギアを付けてた時は何も言ってなかったじゃん」
「ほう。そうでしたか?」
「何が『ほう』だよ。ったく!」

言い返したは良いが、遠くを見てシラを切る執事にはなしのつぶて。毎度毎度この男の態度は、どちらが上なのかわからなくなるほど慇懃無礼だ。
一欠片でも自分を敬う気持ちを持っているのか、心底謎である。
事実、いくらこちらが胡乱な目で睨んでも、涼しい顔は一ミリも変化がない。

「お前なぁ……

溜息を吐きながら、名ばかりの主人である彼──ブロッケンJr.は、気分を変えるべく目の前に垂れ下がった前髪を後ろへ流した。ただ、掬いきれなかった何本かが目の上に零れ、まつ毛をくすぐる。
そしてその不快感に、改めて己の髪が随分と伸びたことを実感する。
最近ヤケに頭部が蒸し蒸しするのは、十中八九はこのせいだろう。いくら猫っ毛とはいえ限度がある。
そうなると、解決策は冷徹な執事が提示する通り散髪以外に道はない。
本人もそれは重々わかっている。分かってはいるものの、実行できるかと言えば、それはまた別の話だ。

「うーー、オレだって切れるもんなら切りたいけど、いつも頼んでた美容師のオッサンが、いま腰を痛めて休業中なんだよなぁ。そうなると、まずウチの仕事を受けてくれる奴から探さないといけねえし」

ブロッケンの家は、国が抱える暗部の仕事を肩代わりすることを代々生業としている。
一度は足を洗った時期もあったようだが、やはり光の後ろには影がないと成り立たない。復帰を再三急かしてくる政府要人たちを蹴り続けることは、実質的に無理だったのだ。
そして、黒子とはいえ、一度舞台に引き上げられたら最後。秘密と暗躍とエゴに塗れた世界は、簡単に彼らの生活を侵食した。
つまり、“敵だらけ”環境に置かれることとなった。
中でも、次期当主を約束された彼は幼少期より至る場所で命を狙われて生きてきた。実際、未遂でなければ何度あの世行きになったことだろう。
とりわけ国際的な暗殺者のターゲットになった時は、もう少し遅ければ大変だった!と今でも説教を受けるほどだ。
おかげで、身の回りの事に関して、無害を誓った馴染みの店や専門者、つまり“お抱え”に任せるのが慣わしとなっていた。

しかし今回は、その自身を守る筈の“縛り”が彼を苛むハメになっているわけで。

「でも、スキンヘッドはいやだしなぁ」

以前、同じようなケースで髪が切れなかった時。
見かねた父により、バリカンで丸刈りにされたのは正直、無かったことにしたい過去だ。
ただでさえ幼い顔が余計に子供っぽくなったなぁ!そう大笑い親族達は、少年の小さなプライドに対しあまりに無頓着だった。
おかげで今や彼にとって坊主頭はトラウマと一緒。思い出すだけで唇が変な形で歪んだ。
それ以来、髪を切ってもらうならちゃんとした本職に!と心に決めた結果、今の状況に至る。

「うーん、美容師のオッサンの腰が治るまで、ヘアバンドでも付けっかなー?」

なんとか打開策はないかと頭を捻る間も、細い金髪はハラハラと指の隙間から落ちて、ブロッケンJr.の目元をまた隠していく。
普段から帽子の鍔で隠れることは多いが、被っていない時も見えないのは、折角のペリドットの瞳が台無しだ。それはニンジャも感じたらしく。

「なら、私が切って差し上げましょうか?」

「え!? 出来るの!!」

唐突な申し出に、俯き気味だった顔が勢いよく上がる。

「今も自分の髪は自分で切ってますし……それに手先の器用さには自信がありますから」

言いながら、突き出した二本の指がチョキチョキと切る真似をする。何事も卒なくこなす男は確かにいい仕事をしそうだ。
実際、本人の前髪ごと後ろにまとめて括った髪も、毛先は綺麗に揃っている。
自分でやったり、他の親族に任すよりはいくらか安心感はある。
なら、背に腹はかえられない状況の今、折角の申し出を断る理由はなく。

「そっか、じゃあ──あ」

頼もうかな、そう言いかけたところで、ブロッケンJr.は何事か気付いたように言葉を止めた。

「うん?」

訝しげに頭を傾げる相手を見つめる目が、キラッと煌めく。それは、本人曰く『良いことを思いついた』時の癖で。

「確認だ、けど、お前はさ、オレの髪が鬱陶しいんだよな?」
「? ええ、まあ」
「オレの意思とは関係なく、短くしたいんだよな?」
……まあ、見てる分にも暑苦しいですからね」
「つまり、お願いするのはオレじゃない、と」
「はあ?」

問答は、余りにも勝手な理屈だった。ニンジャが間抜けな声を出したのも仕方ない。
けれど、ブロッケンJr.にとってそれはお遊びではなく、“必要な確認”だったのだろう。

フッ。
女が見惚れるような端正な顔に、一瞬のうちに悪戯な笑みが浮かぶ。そして一歩前に踏み出ると、彼はニンジャの胸を拳で小突いた。

「なら、髪を切っていいから、条件を付けさせろよ」
「じょう、けん……?」
「ああ、そうだ」

肯定に頷く表情は、妙にあざとい。
普段は粗雑さに隠れているが、この男は本来同性すら魅了する色香がある。流石は裏稼業を専門とする一族の当主だ。百戦錬磨を自認するニンジャですら、無意識に喉を鳴らしてしまう。
この薄桃色の唇は一体どんなおねだりをするのか、目が離せない。
勿論、それはきっと魅せている当人も分かっているのだろう。

「なあ……

とびっきりの笑顔を浮かべると、彼は緊張に閉ざされた相手の唇をするりと撫でた。

「いい加減さ、二人の時には……その言葉遣いを止めろよ」

「ことば……?」

「そうだよ。そんでオレのことを……呼んでくれよ。
『ブロッケンJr.』ってさ」

「──ッ!」

告げられた願いに、ニンジャは軽く目を見張った。
言われてみれば、執事として傍で仕えることを決めて以来、彼とは一線を引いた距離で接してきた。
性格がら横柄な面が目立つものの、一度結んだ主従関係は彼にとって大きい戒めであり……気付けば、周りに倣った呼び名である「坊ちゃん」が定着していた。
けれど、それは本人にとって、明確な隔たりに感じられたのかもしれない。

「こうして出会えた奇跡を喜ぶだけってのも、味気ねえ。だからさ……少し欲張りになったって、良いだろ?」

共に過ごせる時間は確かに貴重で幸福だ。殺伐とした生活の中で、唯一の安らぎに近い。
でも満足するには物足りない。
ブロッケンJr.から出された条件は、考えれば考えるほど、不器用な彼らしい遠回しな想いで溢れていた。
こうした機会でしか甘えられないいじらしさが、心を揺さぶる。

愛しいと、思わずにはいられない。

ニンジャは溜息を付いて、唇を撫でる手を掴んだ。

「本当に、お主には振り回されるな」

「あ……

そしてお願いに応えるべく、言葉を崩しながら、手の中の指へ今度は自分から唇を寄せ、軽く噛む。
ビクッ。逃げようと力が入っても、離してはやらない。何故ならそれはこの心を暴いた意趣返しだから。

「まったく、敵わんな。……なあ、ブロッケン、ジュニア」

上目遣いで見つめる目は、最初の不機嫌さからは一転。ドロリと甘く蕩けるいちごジャムのような色をしていた。
それは、一介の執事から一人の男に戻ったことの証。

「お、おう。当たり前だ。アンタにだけは……”ニンジャ”には負けらんねえよ!」

だからこそ、ブロッケンJr.は気取っていた笑みをくしゃりと崩した。久方ぶりに聞いたその名前に、こっそり耳を赤くしながら。
先程までの演技がかった態度は、知らぬ内に素の彼へと移り変わっていた。

(やはり、こちらの方が良いな)

一瞬で切り変わる態度の差に、ニンジャの口角が微苦笑を浮かべた。
男好きする誘惑よりも、単純明快な反応の方が良い。しみじみ、そう感じる。
再会してから数か月という短い付き合いながら、彼がこれまでどれだけ過酷な環境で育ってきたか、嫌というほど見てきた。
気高き魂を、志を、必死に隠して閉ざして、この薄汚れた世界でどれだけ歯を食いしばって生き抜いてきたのか。想像するだけで心臓が痛い。
実際、出会いのキッカケになったあの日の記憶――路地裏に転がっていた血だらけの姿は、きっと、ずっと、この男の心に棲みつくだろう。

守れなかった。
その無力感に、当時就いていたインターポール(国際警察)という名誉ある職を辞した。
守りたい。
真っ赤に染まった中で唯一輝いていた若草色の瞳を、もう二度と翳らせないと護衛兼執事として生きることを望んだ。

”あの頃”のように、共に笑い合えること。それだけを願って。

遊ぶように前髪にフウっと息を吹きかけ、ニンジャは器用に片方の眉を跳ねさせた。

――では、さっぱりとスポーツ刈り程度の長さにするか?」
「あー、そうだな。いや、でも、そんなに短いと……うーん、もうちょっと長くても良いかな。目にかからない程度」
「それだとすぐにまた………

伸びるぞ、と言いかけて、ニンジャは緑の目が泳いでいることに気付いた。よく見れば心なし頬も赤い。
その様子と、切る長さへの訂正。二つを比べれば、相手の真意は簡単に読めた。

……いや、そうか。そう言うことか」

意味深そうに顎を撫でる顔は酷く愉快そうだ。

「な! ちょ、何考えてるんだよ!」
「ケケッ。まあ、なんだ。これからも何度だって切ってやるから遠慮するな」
「はあっ! ちがっ、そうじゃなくて、今度の任務は夜会への付き添いだから、礼服に合うようにって……
「まあいい。とりあえず、昼食後までに道具を準備しておこう」
「人の話を最後まで……って。本当にアンタは勝手だぜ。今は一応、”悪魔騎士”じゃなくて、”オレの執事”ってこと忘れんなよ!」

ニヤニヤ笑うニンジャにブロッケンJr.は髪の毛をグシャグシャと掻く。
誤魔化そうにも、相手は自分よりも一枚も二枚も上だ。



生まれ変わる前と、同じまま。



「どんなになっても、愛い奴め」
……そんなこと言うの、アンタぐらいだよ」
「まあ、手のかかるところは……もう少しマシになっても良かったがな」
「なッ! 言うじゃねえか!」


戯れるように体当たりを仕掛ける主人に、無礼な執事は軽やかに避けた。
そして、バランスの崩れた腕を掴み、顔を寄せる。

「俺の、ブロッケンJr.」

囁く声にブルッと震える様に目を細め、彼は強引に唇を重ねた。

「ンッ……ぅんん」

漸く出会えた魂の片割れを、たっぷりと味わうために。
新しい人生においても、二人の距離はずっと変わらないと誓うように。


「また、お前との愛を育もうか」





*****

現パロに見せかけた転生ネタ

ブロッケンJr.
ブロッケン一族の子孫。(ブロッケンJr.自身の子孫ではない)
本人〜ジェイドの時代は正義超人として活躍していたが、ドクロの徽章の後継が正規ルートではなくなったことをキッカケに分家の者が当主となり、そもそも超人というカテゴリからも外れる。
その後、一族復興と、政府からの圧力(政府の暗部を担う)折れ、現在の状況となる。
幼い頃より様々な汚い仕事を請け負っているが、前世の記憶と持ち前の負けん気でどうにかやっている。
脆い部分があり、そのせいで瀕死の重症を負ったときにニンジャと再会する。

ザ・ニンジャ
転生後は、日本の一般家庭に生まれる。
ただし、幼い頃より前世の記憶があり、ブロッケンに出会うために自己流に修行してきた。
前世であるアンタッチャブル時代の経験を活かし、若くして国際警察まで上り詰め、任務としてドイツに訪れた際、ニンジャの追っていたターゲットである男に暗殺されかけたブロッケンと再会、介抱する。
そのことでブロッケン一族の者たちに感謝され、それを利用(脅して)して護衛兼執事としてブロッケンの側で生きることを選ぶ。