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雪貴
2026-06-04 04:47:35
2676文字
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CV2
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懲りない二人
頻繁に食材調達に出かける食いしんぼハンター達の話。
やくもさん宅リヴィくん少しだけお借りしました!
どうしてこうなってしまったのか。
「重
……
苦し
……
いいかげんどけよ
……
って、痛え!」
「んー? なんか言ったか?」
「くっそ
……
!」
上から覆い被さってくるずっしりとした身体が、逃げ出すことを許さない。
比較的自由に動く足すら、クレイグを退かすことは叶わず、ただじたばたと跳ねるのみ。
うなじどころか肩も二の腕も、なんなら頬までがぶりと齧られ、あちこちがヒリヒリ痛む。
これ絶対に跡残るやつだ。そう思っても、犯人が一向に止めてくれないので、ただそう思うだけで終わってしまった。
ななおは今日、友人のリヴィと共に、水没都市まで食料調達に出かけていた。
マグメルに来てからというもの、頻繁に美味しい食事が摂れ、更にハンターとしてあちこち動き回ってばかりなものだから、食事量がぐんと増えた自覚はあった。それはリヴィも同じで、昼食を終えてすぐ「今日の夕飯は何にしようかなあ」と、次の食事の話をしだす程だった。
そして、量が増えたということは、つまり、食材の減りが早くなるということで。
食料庫の食材が明らかに減っている現状を見て、さすがにななお達は「なんとかせねば」と奮起した。
探索の度に食材を集めてはいるものの、そのためだけにバディ達を連れ出すのも忍びなく、だからといって一人で行くにはまあまあ効率が悪い。なので、時間の都合をつけ、リヴィとななおは二人で食材収集をすることに決めたのだった。
一人が食材を集める間、もう一人は哨戒。集めたものが落ちないようバイクに固定し、安全運転で移動。ついでに寄ってきたバケモノを倒し、ヘイズも稼ぐというルーチン。
食材もたんまり、懐もぽかぽか。吸血鬼ハンターってこんなのだっけ? と、冗談を交わしながら、時には弁当を持ってピクニックをしたり、うっかり暗くなるまで探索をして廃ホテルで夜を明かしたりと、食材調達ついでに、二人は頻繁に出かけていた。
とはいえ、あくまで仲のいい同業者としての交友の範疇であり、なんならお互いに付き合っている相手がいるわけで、疑われるような関係には全くもって至っていない。
それはクレイグも、そしてリヴィのお相手のノアも重々承知だと思っていたのだが。
何度目かの調達デートを終えてマグメルへ戻ると、珍しくクレイグとノアがエレベーターの下で待っていた。
ななお達に気付くと、「おかえり」「今日も随分と集めてきたな」「俺も持つ」と、いやに機嫌良く手伝ってくれた。
手伝ってくれることはままあるが、わざわざ出迎えなんて珍しい。そう思いつつ、言われるままに四人並んで食料庫へ赴き、種類ごとに仕分けてしばらく。
「
……
よし、片付いたな」
「ありがとうノア。助かったよ」
「もうこれで全部だな?」
「ん。クレイグありがと」
予定より早く片付いたことに安堵したリヴィとななおは、ノアとクレイグが意味ありげに目線を交わしたことに気付いていなかった。
倉庫の戸締りを確認し、さあ、汗を流しに温泉へ、と二人が風呂場へ向かおうとした途端。
「よっと」
「こっち来な」
────リヴィは軽々とノアに担がれ、ななおもまた、クレイグに首根っこを掴まれて連行されることになった。
リヴィは突然のことに顔を赤くしたり青くしたりで、自分よりずっと上背も腕力もあるノアに対しろくな抵抗も出来ず、ななおもななおで、体格差はさほど無いにせよ、あの鉄塊を片手で振り回せるような膂力のあるクレイグに、純粋な力では敵うわけもなく。
なんで、放せ、という声だけが、マグメルの夜の廊下にこだましていた。
それからはもう怒涛だった。探索帰りだから湯を浴びたい、着替えたい、ご飯食べたい。そう言うななおの発言はことごとく流され、あれよあれよとひん剥かれ、ななおはあっという間に客室のベッドに沈められた。
何すんだよと抵抗を重ねるも、不敵な笑みを浮かべたままのクレイグは、ただ首筋や喉元に噛み付いてくるばかりで、何も言わない。
そこでようやく、ななおは(そしておそらくリヴィも)勘違いしていたことに気付いた。────出迎えてくれたノアとクレイグは、決して機嫌が良かったわけではなかったことに。
そういえば、「また俺は置いてけぼりか?」とか、「本当に仲良いなお前達
……
」と呆れた顔で言われたことがあったなと、今更になって思い出した。
なんだ、分かりやすく妬いてたんじゃん。
腑に落ちた瞬間、途端に抵抗する気が失せた。
間近にある端正な顔を覗き込み、わざと煽るように笑いかける。
「クレイグも可愛いとこあんじゃん。俺に構ってもらえなくて拗ねた?」
「
……
お前、ようやくおとなしくなったと思ったら
……
」
図星だったのか、今にも皮膚を突き破らんとしていた牙を離し、クレイグはななおの真っ青な瞳を見つめ返す。
「リヴィはただの友達だって言ったじゃんか。癒し系お母さん属性だし、優しいし料理上手だし
……
」
「分かってるって。別にお前らの仲を疑ってるわけじゃない」
「じゃあ
……
ぐっ」
「それはともかく、」
ベッドの上で他の男の名前を出すな────。
獰猛に尖る牙をちらつかせながらそう言われては、もう言葉を飲み込むしかなく。
とはいえ、珍しく素直にヤキモチを焼く年上の恋人の様子に機嫌を良くし、ななおは甘んじて肌を甚振る牙を受け入れることにした。
◇
翌日、少し遅い時間に目が覚めたななおは、用意されていた濡れタオルで身体を拭いてから、噛み跡が隠れるような服に着替えて部屋を出た。
空腹の腹をさすりながら食堂へ向かうと、リヴィもななおと同じような足取りでやって来た。
「あ、お、おはよう
……
」
「おはよう
……
リヴィはあの後
……
いや、なんでもない
……
」
「う、うん
……
そっちも
……
大変だったみたい、だね?」
少し掠れた声と、癒し系お母さん属性からいやらし系人妻属性にチェンジしたような気怠げな雰囲気のリヴィに全てを察し、ななおは思わず「お疲れ様
……
」と声を掛けた。
「とにかく、食堂に行こうか。昨日の夜食べれなかった分ガッツリしたの食べたいよね」
「そうだな。何作る? 俺も手伝うけど」
「何にしようかなー」
出会えば結局、食事の話である。お互い釘を刺されたものの、それはそれ、これはこれ。さすがに今日は休もうと決めたものの、二人で山盛りのチャーハンを作りながらする会話は、次に向かう食材調達場所についてだった。
懲りない二人はまた、バディ達を置いて出かけるのだった。
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