一護は夏の間だけ浦原商店でアルバイトをしている。数年前に繁忙期だから手伝ってほしいと商店の店主に声を掛けられたのがきっかけで、以来夏の恒例となっていた。今年で学生生活を終える一護は、さすがに今年が最後になるかもな、と思いながら浦原商店の縁側でぼんやりと涼んでいた。日中の酷暑で夜とはいえ蒸し暑かったが、それでも日暮れ頃に通り雨が降ったせいか吹く風は幾ばくか涼しく感じられた。
いつもなら夕方にアルバイトを終えたらまっすぐに家に帰るのだが、今日は夕食を食べていけと従業員のテッサイに引き留められたため、夕飯をご馳走になった。なんでも余るほど冬瓜をもらったので、その消費を手伝ってほしかったらしい。
冬瓜の冷製スープはさっぱりとしていて、夏バテ気味だった一護の腹にもすんなりと収まった。育ち盛りのジン太は物足りずに文句を言っていたが、偏食の店主はめずらしく気に入ったようで、ウルルとともにおかわりまでしていた。
一護は涼みながら、どこかでりーりーと鳴く虫の声に耳を澄ませた。従業員たちは明日も朝早くから店を開けるために早々に就寝しており、あたりはしんと静まり返っている。
夕飯をたらふくご馳走になった一護は、そのまま商店に泊まることになった。本当は少し食休みをしたら帰ろうと考えていたのだが、クーラーの効いた涼しい部屋と心地よい疲労感に一護がついついうたたねしているうちに、この家の住人たちがさっさと一護の寝床を準備してくれたのだ。短い眠りから覚めた一護はあわてて遠慮したものの、あれやこれやと言い包められて気がつけば風呂をもらい、あとはもう寝るだけという状態になっていた。
夕飯後にわずかに眠ったからか、一護の頭はすっきりと冴えていた。風呂に入ってさらりとした肌に夜風が当たると不思議な懐かしさを感じる。濃い緑の匂い。その心地よさに、一護は柱にもたれて目を閉じた。
「寝るならお布団に行ったほうがいいっスよ」
板張りの廊下を踏む音が近づいてきていることはわかっていたので、一護は驚かずに目を開けて声の主を見上げた。「まだ眠くねえ」と一護が答えると、片手にグラスを持った店主の浦原が「そう?」と笑って、そのまま一護の隣に座った。いつもの作務衣に羽織姿ではなく、寝巻きの浴衣を着ている。すぐそばから風呂上がりの女性の香りがすることに慣れず、一護はわずかに座りなおして浦原との距離を適切に整えた。
「お水飲みます? 脱水になりますよ」
「さっきもらった。……なんか悪ィ、急に」
急な宿泊に一護がいまさらながら詫びると、浦原はからりと笑った。
「引き留めたのはこっちなんスから、気にしないでくださいよ」
「……明日もヨロシクお願いします」
重ねて謝罪したいところをぐっとこらえて、一護は少しだけ頭を下げた。明日も朝から浦原商店でバイトの予定だ。一護の言葉に「ハイ、よろしくお願いします」と浦原もおどけて頭を下げた。
「今夜はちょっと涼しいっスねえ」
浦原の言葉に応えるように夜風が吹く。一護は「そうだな」と頷いた。寝ている家人たちに配慮して、ふたりとも自然と小さな声になる。一護はなんだか現実味がないな、と思いながら夜空を見上げて、隣に座る浦原を見た。こんなにゆっくりとした夜をここで過ごすのがはじめてだからだろうか。十日間の修行のために泊まった時は、ほとんど気絶するように夜を過ごしていた。それとも、隣に座るひとがいつもと違う装いだからだろうか。いつも帽子や扇子に隠される浦原の表情が、今夜は月明かりにはっきりと見えた。
「アタシの顔になんか付いてます?」
一護の視線に気づいた浦原が、意地悪な顔で笑った。ねずみをどう甚振ってやろうかと画策する猫のような表情に、なんかめずらしくて、と一護が顔を引きつらせながら白状すると浦原はおかしそうに笑った。
「正直なひとっスね」
帽子に隠されない表情に、一護は素直にきれいなひとだなあと思い、そう思った自分に驚いた。浦原の造形が整っていることは前々から知っていたが、はじめて浦原という人物をちゃんと見たような気がしたのだ。一護は思わずまじまじと浦原を見た。
白地に紺色の柄が入った浴衣を身に纏った浦原は、夜の闇の中でそこだけぼんやりと発光しているようだった。白さばかりが印象に残っていた浦原の肌はさすがに白色の布地ほどではなく、比べればもっとやさしくてやわらかい色をしていた。金色よりももっと薄い色味の頭髪の隙間から、灰色がかった緑の目がおもしろがるようにこちらを見ている。曲線で構成された浦原の女性らしい身体は月明かりになめらかに輝き、ポルノなどで誇張された女体よりも、どちらかといえば西洋絵画で描かれる乳白色の女性たちを一護に想起させた。
「……さすがにそんなに見られると恥ずかしいんスけど。黒崎サンのエッチ!」
きゃあっ、とわざとらしく声を上げながら胸の前で腕を交差させて自分の肩を抱いた浦原——顔いっぱいにおもしろいと書いてあったが一護は気がつかなかった——に、一護はぎょっとして「ち、ちがう!」ととっさに否定してから、いやべつに違くはないな、と自分の迂闊な振る舞いに気がついた。女性をじろじろ見るなど、褒められたことではない。ただ、下心があったわけではないことだけはわかってほしくて、一護はあわてて言葉をつないだ。
「ただきれいだなと思って……!」
勢いに任せて言いながらこれもなんか間違ったな、と一護は思った。このうえなく正直ではあったが、弁明にはなっていない気がした。そもそもこの手の弄りが苦手で、しかも今回は他人の身体をじろじろ見た自分に完全に非があることを自覚している一護はそれきり言葉を失い、両手で顔を覆って俯くと蚊の鳴くような声で「すんませんでした」と謝った。もしかわいい妹たちをじろじろ見るクソ野郎がいたら、一護は速攻でそいつに喧嘩を売るだろう。この場においては自分がそのクソ野郎であることは間違いなかった。
あわてたと思ったらすっかり反省してしまった一護を見て、さすがにかわいそうになったのか「冗談です冗談です」と浦原が一護の背をさすった。
「大丈夫です、わかってます。黒崎サン、普段アタシの胸元見ないように顔に目線固定してますもんね」
「わかってんなら前閉めてくんねえ!?」
「それはちょっと……」
ほとんど作務衣しか着ない浦原は、体が締め付けられるのが嫌なのか、いつも信じられないほど胸元が大きくはだけている。胸の谷間が見えるなどというかわいいレベルではない。真っ白な首筋から鎖骨はほとんどあらわになり、見た者が乳房のやわらかな丸みを反射的に想像してしまうほどに肌が見えている。一護は公然わいせつだろ、と思いながらいつも必死にそこを意識から外していた。女性の死神は、あまり身体のラインや肌を見せることに抵抗がない者が多い。彼女たちと話すとき、一護はつとめて紳士的に振る舞うことを心掛けていた。くそ、と毒吐きながら、一護はようやく顔を上げる。
一護が焦りや羞恥でわずかに赤くなった顔をこすってごまかしていると、浦原が「ところで、きれいだと思ったんスか?」と一護の失言を蒸し返した。まだ揶揄う気か、と一護は浦原を睨みつけた。しかし、目に入った浦原が見たことのない顔をしていて、一護は投げつけようとしていた言葉を飲み込んだ。
「きれいな絵を見たらきれいだって思うだろ……」
浦原から視線を逸らして、一護は口ごもりながら小さな声で肯定した。耳が熱かった。女性の容姿を褒めた経験など一護にはない。他人の容姿についてあれこれ言うべきではないと思ってそうしてこなかったし、単純にそれが気恥ずかしいということもあった。
浦原は「へえ」は返事をした。その無感動な響きに、どういう感情だよ、と思いながら一護はちらりと浦原を見た。浦原はやっぱり一護が見たことのない顔をしていた。複雑に光を反射する浦原の目からもその心を知ることはできなかったが、その顔を見て一護は先ほどよりもさらに小さな声で「きれいだと思う……」と正直に打ち明けた。どうしてそうしたのかは、一護自身にもよくわからなかった。
浦原はふいっと外に目を投げると、無言になった。一護は彼女の白皙の横顔を見ながら、真っ赤な顔で逃げたいと強く思った。今すぐ毛布に包まって寝たい。まるで眠れる気はしなかったが、とにかくこの場から離れたかった。
「……触ってみますか?」
しばらくの沈黙のあとに浦原が提案した。一護はとっさに何を言われたのかわからなかった。まっすぐに一護を見ている浦原と目が合って、そこでようやく一護は浦原の提案の意味を理解した。瞬間、座った姿勢のまま反射的に後ろに一歩飛び退いた。どっどっどっどっどっ、と心臓が早鐘を打ち出す。急激に頭に血が上り、変な汗が体中から噴き出した。目まぐるしく思考が駆け回っているようにも、頭が真っ白になってなにも考えられないようにも感じられた。一護はしばらく浦原がまた「冗談です」と言ってくれるのを待っていたが、一向にその気配はない。浦原はただ動揺している一護を静かに見ている。
「ね」
「ね?」
「ね、寝る……」
からからの口からどうにか吐き出した返答に、浦原は目をまん丸にしたあとに破顔した。やはり本気ではなかったのだ。浦原の満足のいく答えだったらしいことに一護は安堵して大きく息を吐いた。
「そうっスねぇ、もう寝ましょっか」
浦原は口元に微笑みを浮かべたまま、よいしょ、と立ち上がると、縁側の雨戸を閉め始めた。一護もあわてて立ち上がり、その作業を手伝う。作業をしながら事務的なやりとりをするうちに、一護の心臓も少しずつ落ち着きを取り戻した。最後の一枚を定位置に固定して窓を施錠すると、一護はようやく眠れるとほっとした。
少し廊下を進むとすぐに、テッサイと子どもたちが一護のために準備してくれた客間に着く。一護は足を止めて、すぐ後ろを歩く浦原を振り返った。
「じゃあ、また明日な。浦原さん」
そう言って一護が就寝の挨拶をしようとすると、浦原が「部屋が違いますよン」と笑った。
「けど、テッサイさんは前と同じだって」
「違いますよォ。今夜はこっち」
浦原は障子に掛かっていた一護の手を取ると、その手を引いてさらに廊下の奥に進んでいった。一護は不思議に思いながらもおとなしくその後ろに着いていく。家主が部屋を間違っているというのならばそうなのだろう。それよりも、流れるように握られた手のほうが一護にとっては問題だった。十五歳の頃にはそれほど変わらない大きさだったような気がした手は、いつの間にか一護のほうがずいぶんと大きくなっていた。手のひらは、記憶の通りに固い。先ほど落ち着いたはずの心臓がまた暴れ出しそうだった。じわりと手のひらに汗がにじむ。
「到着っス!」
その部屋は廊下のいちばん奥にあり、今まで一護が入ったことのない部屋だった。予備の客間だろうか、と首をかしげていると、浦原が障子を開けて中に足を踏み入れた。灯りが点いていない室内は薄暗くて見えにくかったが、それでもそこが客間などではないことはすぐにわかった。文机には開きっぱなしのメモとボールペンが散らかっているし、そこら中に本や書類の小さなタワーができていた。部屋の中心には、布団が一組だけ敷いてあった。わずかに皺の寄ったシーツが、その上でいつも誰かが休んでいることを教えてくれる。何よりも匂いが部屋の主を教えていた。隣り合った時の甘い匂いと、ほろ苦い紫煙の香り。記憶と嗅覚が結びつき、ぎくりと身体が強張る。一護は浦原の手に逆らって敷居の寸前のところで足を止めた。
「黒崎サン」
足を止めた一護を浦原は振り返った。暗がりにいるせいだろうか、浦原の瞳孔がいつもより大きくなっているような気がした。暗い室内でも、やはり浦原だけがぼうっと明るく光って見える。まるで現実味がなかったが、爆音で鳴る自分の心臓だけが非常事態を一護に告げていた。
浦原の繊手が一護の手をほんのやさしい力で引く。それだけで十分だった。一護はつんのめるようにして境界を跨いだ。裸足の足の裏に、使い古されたい草の感触がある。一護は戸惑った顔で浦原を見下ろした。
「……ここ、うらはらさんの」
「そ、アタシの部屋っス。イラッシャイマセ」
浦原は口の端をつりあげて笑った。その顔はねずみを甚振る猫のようでありながら、飼い主に撫でられて喉を鳴らしている猫にも似ていた。一護は瞬きを繰り返しながら浦原を見つめた。
「……なんか、話でもあるのか?」
話などあるわけがない。そんなことは一護もわかっていた。しかし、どうしていいかまったくわからず、ただ浦原からの反応を得るためだけにその問いを口にした。
「えぇ?」
一護の間抜けな問いに、浦原は目を細めると一護の手を離した。汗でじっとりと湿った自分の手から白い手が離れてほっとしたのも束の間、今度は浦原の両手が一護の背に回る。浦原のやわらかい身体の感触を一護は息が止まりそうな思いで受け止めた。浦原に抱き着かれた一護の脳内は混乱を極めた。突き飛ばすような乱暴な真似はしたくないが、かといって浦原の背中に手を回すのも間違いだろう。一護はふたたび体を固くする。そんな一護などお構いなしに、一護の胸に耳を当てて浦原は無邪気に笑った。
「すごい音ですよ。大丈夫っスか?」
大丈夫だと思うのか、と言い返すかわりに一護は小さく唸った。そんな反応も浦原を喜ばせたようで、わずかに笑い声が大きくなる。いつものように揶揄われているんだろうという思いと、このひとはふざけて俺にこんな真似はしないという確信が一護の中でせめぎ合う。
「……なにがしてえんだよ……」
混乱の中でどうにか絞り出した問いかけに、浦原は一護の胸に頬を当てたままにまりと笑った。目が暗闇に慣れて、浦原の顔がよく見えた。間近で自分を見上げてくるその目の形をかわいいと思う自分が一護は信じられなかった。
次の瞬間だった。突然視界が回転し、体が宙に浮いた。一護はとっさに受け身を取ったもののしたたかに背を打った。いってえ、と顔を顰めながら目を開けると、自分が布団の上に転がっているらしいことがわかった。
どうやら浦原に投げられたようだ。一護はやけに冷静な頭の隅でそう認識する。仰向けに倒れた自分の身体に浦原が近づいてくると、数年前、修行と称してさんざん一護をぶちのめした細い指が目に入った。
もしかして殴られるんだろうか。一瞬迎え撃つことを考えたが、今夜の自分の失態を思い返して一護はおとなしくすることを選んだ。浦原を不快にさせたのなら、甘んじて殴られるべきだろう。
しかし、一護の予想を裏切って、浦原の白い指先はそっと一護の頬をなぞった。そして、浦原は一護の身体に乗りあがると、のしりとその胴に跨った。腿を開いたせいで浦原の浴衣の裾が大きく乱れる。なにもかもが一護の予想の外側にあった。
「触ってもらいたくなりました」
浦原が微笑を浮かべたまま一護を見下ろしてそう言った。くらくらする頭で、一護はそれが先ほどの問いかけの答えだとどうにか思い至る。一護の反応を待たずに浦原は自分の赤い伊達締めに指をかけ、その結び目を解いた。しゅるしゅると絹が擦れ合う音がして、みるみる伊達締めがほどけていく。一護は言葉もなくその様子に釘付けになった。
伊達締めが解かれると衿の合わせ目がわずかに緩み、そこで一護はそれまで浴衣の衿がきっちりと閉じていたことにはじめて気づいた。それが少しずつ緩んでいく様は、あけっぴろげにされるよりもよほど強烈に一護の官能を刺激する。
着衣を緩めながら、浦原はじっと一護を見下ろしている。浦原は伊達締めを取り去って脇に放り投げると、一護が寝巻代わりに着ているTシャツの裾からそっと手を忍ばせた。一護の肌はすっかり汗ばんでいた。女の細い指が腹を這う感覚に、それはさすがにまずい、と一護が制止しようとしたところで、浦原がぴたりと動きを止めた。一護がおそるおそる浦原を見上げると、浦原はあの見たことがない表情を浮かべている。
「……ちがうな」
「……違う?」
浦原が独り言のようにつぶやいた言葉は、はっきりと一護に届いた。相手が違うということだろうか。それとも思っていたものと違うということだろうか。いずれにせよ、浦原が相手にしたいのは一護ではなかったということだ。じゃあこれで終わりか、とほっとしたような残念なような気分で一護は体から力を抜いた。違うと言われて、少しだけ傷ついた自分には気づかないふりをした。
「黒崎サン、ちょっと起きてもらっていいっスか?」
自分で転がしておいて、と文句を言いたいところだったが、おしまいにするならいつまでもこの体勢でいるのも気まずいため、一護は素直に自分の腹から降りた浦原に従った。
「はいどうも」
「うわっ!」
体を起こした一護の首に腕をからめて、浦原は今度は自分を下敷きにさせる形で一護を引き倒した。すっかり油断していた一護だったが、浦原を潰してしまわないようにあわてて布団に右手をつき、自分の体重を支える。そうすると、必然的に仰向けの浦原に覆いかぶさるような体勢になってしまい、一護はたちまち顔を赤くした。
「うん、こっちのほうがいいですねえ」
浦原は良い景色でも眺めるように一護の顔を満足げに見上げて、親指で呆気に取られている一護の眉毛を撫でた。そのむず痒い感触に一護は軽く唇を噛む。
「……終わりじゃねえのかよ」
「どうしてっスか?」
「違うって、さっき」
「ああ、はは」
一護の勘違いに浦原は少しだけ笑って、眉毛を撫でていた手を一護の頬に滑らせた。
「始まってないのに終わってもらっちゃ困ります。まあ、黒崎サンがどうしても嫌だっていうならしょうがないっスけど」
浦原の言葉に、一護はぐっと言葉を詰まらせた。浦原に触れることは嫌ではない。ただ、戸惑いがあった。再び動かなくなった一護の逡巡を浦原はわかっているようで、頬に触れていた手で今度は一護の左手に触れた。そのまま自分の胸元まで一護の手を導く。
体勢を変えた拍子に浴衣の衿は大きくはだけて、なめらかな肌があらわになっていた。いつもは必死に目を逸らすそこを一護は思わず凝視するが、その手は肌に触れる直前で止まった。一護の臆病と誠実をよく知っている浦原は嫌じゃないなら、と微笑んだ。
「触ってください」
一護は暗示にかかったようにわずかに震える手を浦原の胸の中心に置いた。自分の日焼けした手が、女のやわらかい乳白色の皮膚に沈む。皮膚のすぐ奥には骨の感触があった。一護はほとんど眩暈のような興奮を覚えながら、うつくしい女の顔を見た。女はやっぱり一護の知らない表情を浮かべていて、その心は一護にはわからない。触れた皮膚の内側から、少しだけ駆け足の心臓が一護の手のひらを叩いていた。
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