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望月 鏡翠
2026-06-03 01:05:30
887文字
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日課
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#2103 おやつは消えた
#毎日最低800文字のSSを書く
というような経緯を経て、卓に並んだのがこのケーキたちです。
そういって、彼女は皿の上のケーキを示す。
美味しそうですねという感想しか抱かないわけだが、経緯というのは今話してくれた雲の上の末っ子とか次男とかそういう話だろうか。もしそういう事情があるのなら、ケーキを出されても食べにくくなってしまう。
チョコレートのエクレアと酸味の聞いたレモンタルトの組み合わせ自体はかなり嬉しいのだが、最初に末っ子を犠牲にするのか彼を心配して追いかけて来た次男を犠牲にするのか、というような話になってしまう。
「食べにくいです」
素直にそう口にすると、彼女は頬杖をついて面白そうな顔をした。
「でもほら、話したでしょう。食べても雲と同じ。お腹に入って吸収されてしまうわけじゃないんだよ」
「だからって、眠っている場所を食べられても平気なわけじゃないと思うんですよ」
寝ているときに布団をひっぺがされたら、悲しいでしょう。
なんだこいつはと思う。
私は雲の上にいる人たちに、睨まれたくはない。
「ということで、こちらは遠慮しますよ」
折角のおもてなしですが、コーヒーだけいただいますと言ってカップに口をつける。
「でもこうは思わないの?」
彼女は引き下がらない。それは知っている。あの手この手で、相手が折れるまで言葉遊びを繰り返すのだ。
「この手の童話って、だいたい兄弟が全部出てくるものじゃない」
「そうですね」
まだ末っ子と次男しか地上に落ちていない。大抵、兄弟全員が地上に降りてそれぞれのお菓子になったりして、だからこの世は今こんな形になっているんですで終わるものだ。
とすると、今飲んでいるコーヒーが長男だったり、まだ登場していない他の兄弟だったりしてしまうのかもしれない。確かにそう思えば、今更お菓子を食べることを躊躇っても意味などないのかもしれない。
では遠慮なく頂こうかなと思ったところで、目の前のエクレアが消えた。
だって遠慮するんでしょう。
そんな風に言われてしまえば、その通りだ。
一度遠慮したせいで、美味しいものを逃すことになった。
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