三毛田
2026-06-02 21:56:17
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76 【76/街角の花屋】

76日目
いつか君に花を

76 【76/街角の花屋】
「おばちゃーん」
「おやおや。おかえり、穹くん」
「ただいま!」
 通学路の途中。街角の花屋。
 いつも、帰宅の報告をすると後はもう捨てるだけだという花を一輪くれる。
「いいの?」
「ええ。ただただ捨てられるのであれば、最後に誰かに彩りを与えてくれる方がいいもの」
「じゃあ、今度はカフカと一緒に買いに来るね!」
「ふふ。ありがとう」
「こっちこそありがとう! じゃあね!」
 バイバイ! と手を振って、握り潰さないように気をつけつつ花を持って帰宅。
「ただいまー」
「おかえり。あら、その花」
「おばあちゃんに貰った! 今度、買いにに行くねって言ったから!」
 あげる! と、カフカに差し出す。
「ありがとう、穹。ちょうど刃ちゃんが買った一輪挿しがあるから飾りましょう」
 優しく微笑みながら、受け取ってくれて。
 照れくさくなって、鼻の下を指でこする。
「おやつにしましょう。パウンドケーキを焼いてあるわ。もちろん、刃ちゃんが焼いたものよ」
 俺が信じられないものを見る目を向けたら、そう付け加えて。
 納得していると、デコピンされた。
 荷物を置いて手を洗ってからリビングに行くと、一輪挿しに俺が貰った花が飾られており。
「おかえり。ほら。こっちは焼き立て。こっちは冷めたものだ」
「刃、ありがとう! いただきます」
 焼きたてはふわふわで、さめたものはしっとりしている。
 丹恒にも食べさせたいなぁって思いながら、完食。
「ご馳走様でした。宿題やってくる」
 皿とフォークを片付けて、部屋に戻り。通話アプリで丹恒と連絡を取りながら宿題を終わらせ。
 夕飯が出来たと呼ばれたので、リビングへ。
「今日も美味しかったです」
「そうか」
 表情は変わらないけれど、嬉しそうだ。食器を片付けて、お風呂に入って。寝る前に、また丹恒とちょっとだけ通話。
「丹恒!」
「穹」
 休みの日。お小遣いの入った財布を首から下げて。丹恒との待ち合わせ場所へ。
「花を買いたいんだよな?」
「ああ。お前のおすすめの店まで案内を頼む」
「うん!」
 手を繋いで、いつもの道を歩く。
「ふふ」
「どうした?」
「丹恒とこの道を歩くのって、新鮮で。嬉しいなって」
……そうだな。俺も通らない道だから、新鮮だ。それに」
「それに?」
「お前と一緒だから、楽しい」
 ふわっと微笑む丹恒が、可愛い。可愛くてキスしたいなぁって気持ちが。
 でも、駄目だ。
 外だし、丹恒はただの親友。
 彼を好きだって気持ちは、閉じ込めておかないと駄目だ。
 これを伝えるには、まだ早いから。