微糖
1735文字
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英雄

お相手:X・Z【mmx夢小説】
https://privatter.me/page/6a1e47b45eeb7 【原型】加筆修正あり
※諸々注
・名前変換(デフォ名:夢主)
・逆ハー

夢主夢主 ︎︎鉛色の煙の底に沈み、ぐにゃりと歪んだいくつもの住宅街。

「これが現実....?」

 ︎︎遠くにある夕日がぐんと伸びた厚みのある影を落とす。

「......どうして」

 ︎︎崖っぷちに足を踏み出すような恐ろしさが襲いかかる。蛇に睨まれた蛙のように動けず、膝がかくかくと笑う。冷や汗がじっとりと肌にしみる。背中をつららで撫でられたように悪寒が走った。動悸がどくどくと激しくなり、呼吸が浅くなっていく。

「い、嫌....来ないで!」

 ︎︎重厚な金属の接地音がガツンと響く。

一歩、二歩────

 ︎︎アスファルトにぎざぎざの亀裂が走った。血走ってマグマが噴火したような単眼。瞳が理性的で冷たく、センサーで分析するようにじっと睨みつけている。

 ︎︎射抜くような視線がばちっと絡み合った。

 ︎︎巨大な鋼鉄の拳が轟音を響かせ、前のめりに傾く。周りの雑音が消え、スロー再生される映像を見るような感覚に陥る。

....人生ってあっという間だったな

 ︎︎込み上げてくる感情をぐっと堪えて目を瞑る。胸にぽかんと穴が空いたような感覚が駆け巡った。

懐かしい....

 ︎︎今までの人生が短編映画のように流れていく。ここで生涯を終えるなんて────

「させるか!」

 ︎︎すぱっと空気を切り裂く高音が鳴り響いた。

 ︎︎斬り離された剛腕が重力に従ってずんっと叩きつけられた。線香花火のような火花とオイルを撒き散らしながら転がっていく。切断部分が露わになり、鮮やかな配線があちこちに乱れている。

「ゼロ....」
「下がっていろ。ここでケリをつけてやる」

 ︎︎後ろで束ねている髪が風にそよぎ、金色の渦を巻いてさらさらと揺れる。片足をわずかに引き、重心をすっと落とす。右手に握られている《ゼットセイバー》から弧を描き、淡い水色を纏う。

「まだ足掻くのか....」

 ︎︎土の底から立ち上がったようなくぐもった声で唸った。

「隙だらけだ!」

 ︎︎イレギュラーから放つ光弾をさっと躱し、疾風のごとくひゅんとアスファルトを低く蹴る。脚部の人工関節をばしっと斬り落とし、鋭い刃が天を向く。

「この程度か」

 ︎︎両脚がこまのように転がり、ばちばちと静電気を帯びていた。ぷしゅーと白煙が勢いよく噴射し、どすんと突き落とす。

「エックス! ︎︎今だ!」

 ︎︎どーんと空気が震えるような発射音が響き渡った。

「これで終わりだ!」

 ︎︎青白い旋風のような《チャージショット》がイレギュラーを飲みこみ、どかーんと爆発した。煙がもくもくと立ち上り、破片が散乱する。

「任務完了」

 ︎︎ふっーと疲れを吐き出すように息をつく。湯気のような排熱が冷え、しゅんと駆動音を発動する。青色のバスターを潜らせ、内側から滑らかに五本の指がすっと飛び出す。

夢主!」

 ︎︎たったっと駆け寄ってくる。彼の顔に憂色が浮かぶ。眉間に皺を寄せ、口元をきつく結んでいた。膝を屈め、私の顔を覗き込む。

「怪我はないか?」

 ︎︎頬に手を添えられ、親指の腹で輪郭を優しく撫でる。塗り薬を傷口に擦り込むように。柔らかいシリコン素材が触れ、くすぐったさに目を伏せる。

「大丈夫だよ」
「良かった......もし、どこか痛むところがあったら教えてくれないか」

 ︎︎力がぎゅっとこもった品位のある低い声。長く息をつき、胸を撫で下ろす。目尻が下がり、ふわりと微笑む。

「無事でなによりだ」

 ︎︎小さく息を吐き、慣れた手つきで納刀する。腕を閂のようにがしっと組み、ふっと軽い微笑を左の頬だけに浮かべた。

「さ、帰るぞ」

 ︎︎くるりと踵を返す。前を見据え、ずんずんと足音を立てる。金糸を編んだような髪がきらきらと靡く。

「そうだね。夢主、帰ろうか」

 ︎︎静かに手を差し伸べる。不安な戦慄に似た息苦しさを押し退けてそっと掴む。彼のごつごつとした手が包み込むように握った。冷えきった指先に湯たんぽのような温もりが伝わり、本当の家に帰りついたように解放感に浸る。

「うん!」

 ︎︎ふたりの背中が大きくて頼もしいヒーローに見えた。