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望月 鏡翠
2026-06-02 00:51:20
923文字
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日課
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#2101 メレンゲレモンタルトの妖怪
#毎日最低800文字のSSを書く
五月に生まれた末っ子は、柔らかい雲の中に住んでいました。
冬の寒さも春一番も、夏の嵐も知らないものですから、少し抜けたところがあるのんびり屋さんです。
だからでしょう。空から落っこちてしまったのです。地上の落ちた末っ子は、バラバラに砕けて砂粒よりも小さくなってしまいました。
ああ、でも心配しないでください。大丈夫です。それくらいでは死にません。曲がりなりにも空の上に住む生き物なのですから。
末っ子はのんびり屋さんです。だから地上に落ちてもすぐに戻る方法を探したりはしなかったのです。特に地上で困ってもいませんでしたし、お腹を空かせているわけでも、痛いところがあるわけでもありません。
地上に落ちて、他の兄弟から引き離されてしまいましたが、その代わりに自分が千人もいるのです。話しかける相手はいくらでもいます。
だから地上に落ちた末っ子は、千々にちぎれた体で考えました。このままでは眠るところがありません。今まで柔らかい雲の中にしかいなかったのですから。
末っ子は寝心地がいい場所を探して、そしてついに見つけました。
それがメレンゲレモンタルトの、メレンゲの上だったのです。
ふわふわで柔らかくて、五月の雲にそっくりで、風が吹いたり揺らしたりするたびに、少しだけふわふわとします。
だから末っ子はそこを新しい住処に決めました。
だから全てのメレンゲレモンタルトの上には、小さな末っ子が住んでいます。食べられてしまうんじゃないかって心配する人もいるかもしれませんが、安心してください。彼らは雲と同じようなものです。
雲って食べられないでしょう。口に入れても少しもお腹いっぱいにならないと思います。それと同じように、末っ子も口に入れた瞬間に消えてどこかに行ってしまうんです。
消えたあとは、もちろん新しいメレンゲの上に乗っているんです。
そうやってすやすやといつまでも眠っているんです。ケーキは雨風にさらされることはありませんから、冬の冷たさも夏の嵐も、知らないままです。
末っ子はいつまで経っても空に帰りません。寝心地がいいからです。
この世からメレンゲレモンタルトが消えたら、空に帰るのかもしれませんね。
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